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映画感想文「葬送のカーネーション」祖父と孫娘の静かなロードムービー

トルコの冬景色を舞台にした、寓話。

妻を亡くした年老いた男。2人が生まれ育ち、結婚式をあげた思い出の故郷(シリア)に埋葬を決意している。

故郷は紛争の最中だ。だから逃げてきた。

その土地に再び向かう。

まるで逃げ出してきた過去を忘れてしまったかのように。既に正確な判断ができる状態にないのかもしれない。

それが唯一の生きる目的のように、トルコの大地を進む。車も人手もない。棺をヒッチハイクで運ぼうという無謀な旅だ。

そんな男に付き添うのは、孫娘の少女ハリメ。両親はなく祖父母に育てられた。祖母を亡くして彼女もまた失意の中にある。

それでも随所で溢れる生命力、生きる気概の瑞々しさ。それに反した祖父の枯れ果てた頑なさが対照的に浮き彫りになる。

その対比が胸に沁みる。

祖父と孫娘の静かなロードムービー。生きるということ、いつか誰しも老いて朽ち果てるということを突きつけられる。

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