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映画感想文「祝日」大切に見返したい宝物のような作品。オール富山ロケの風景も心に残る

誰かの悲しみにそっと寄り添う。

そんな大切なことを忘れていた。

富山県の海沿いの街に住む、中学生の希穂。優しかった父はその優しさ故に亡くなり、母はある日、いなくなった。

一人ぼっちで淡々と暮らす希穂。毎日はただ過ぎて行き、ある日ふと屋上から飛び降りようと試みる。

その時、彼女の腕を掴んだ手。それは彼女の天使だと名乗る見知らぬ女性(岩井堂聖子)だった。

富山県出身の25歳の伊林侑香監督が、富山在住の新人女優、中川聖菜を主演にすえ、富山県で撮影した作品。

予想外に素晴らしく、全編に溢れる静かな優しさに何度か涙した。

まず、静かに希望を導く脚本(伊吹一)が大変素晴らしい。そこはかとなくユーモアが混ざっており、それが余計に悲しみを際立せる。

そして何より、主演の中川聖菜がとても良い。よくぞ見つけた、という感じの適役。中学生らしい潔癖さと頑なさの中に、時折幼さが滲む。そんな心許ない姿にスクリーンの向こうに思わず手を差し伸べたくなる。

また相手役の天使、岩井堂聖子もすごく良い。素っ気ない対応の中に相手に敬意を払う優しさが見え隠れする。結構難しい役なのに不思議なリアリティを持って演じていた。

こんな風に誰もが批判も評価もせず、ただその人の感情を受け止めて寄り添えたら、世界はもっと良くなるのに。

そんなことも出来てない自分に、はたと気付き恥ずかしく思う。本当はそんな風に生きたい。

エンドロールで流れる主題歌(寺尾紗穂)も作品に合っており、とても良い。

この作品をひとりでも多くの人に見てほしいと思う。大切にしたい、何度も見返したい作品である。

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