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映画感想文「マリア怒りの娘」怒りは世界を変える。声を上げた監督の勇気が素晴らしい

初めてのニカラグア映画。

これまでに映画が作られたのは数件だということにびっくり。そんな中での製作はさぞかし困難であったことだろう。

映画という娯楽は豊かさの上に成り立つのだとしみじみと、噛み締める。

巨大なゴミ集積場の近くに母と2人で暮らす11歳のマリア。貧困に喘ぐかつかつの暮らしの中、ある事件で母は窮地に陥る。

やむなく母はマリアを知り合いのリサイクル施設に預け、ひとり働きに出る。

このマリアがまた、常に仏頂面でほとんど笑わない。いつも怒りを秘めた目で大人を見あげる。誰にでも盾付き、誰にも迎合しない。

小さな身体全体に怒りが溢れてる。常に針を立ててるハリネズミのようにトゲトゲしい。

貧しい暮らしに、父の不在に、誰も構ってくれないことに、母に置いてけぼりにされたことに。無力な子供の自分に。自らの境遇の全てに怒りを湛えてる。

映画の前半では私自身がマリアに苛立っていた。

母の言うことに従わない。大人のいうことを聞かない。なんて身勝手な子供なんだろう、可愛げのない子供なんだろうと。

だけど徐々に理解できてくるこの国の情勢を見るにつけ、マリアの怒りが理解できる気がしてきた。

確かに、これは怒るしかない。

独裁政治。内戦。難民。多数の孤児たち。貧困。政情不安定な様にため息が漏れる。

声を上げることから始まるものはある。映画という手段でそれをやり遂げた女性監督ローラ・バウマイスターの勇気と胆力が素晴らしいと感じた。

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