映画感想文「ブルーイマジン」性暴力がテーマ。真摯だけど隙間のある描き方に好感が持てる
「役をやるから」「君には才能があるから」そんな言葉で巧みに心をくすぐり、連れ込み、暴力に及ぶ。
実際の事件もあった、映画監督の性暴力。
権力を持つ人が弱い立場の者を虐げる。しかも、ほとんどの場合は悪気ない。なんなら合意の上だと思い込む。
これは性別関係なく、権力者にありがちな過ちだ。見えてないのだ。だから悪気がそれほどないことが本当に恐ろしい。
そして、これは対岸の火事ではない。
なんの権力もないが、他人事ではない。自分だってどこかで誰かを無意識に搾取しているのかもしれない。誰もがいつ加害者になるかしれない。
本作は演じ手である松林麗の長編初監督作品。女優の卵のノエル(山口まゆ)が主人公。性暴力の被害に遭い、1人で悩む様を、彼女が救いを求めるシェアハウス「ブルーイマジン」を舞台に描く。
好感が持てたのは、実際の暴力を描いてないこと。いつも思うがこの手の作品の暴力シーンをみると、腹の奥が冷たくなるようないやーな気持ちになる。そこまで見せなくてもいいのになと毎回思う。だからこの姿勢はとても支持できると感じた。
そして、二項対立で描いてないこと。むしろ、若干のユーモアさえも含んでいる(特に記者会見シーンは真摯であるがユーモアも感じられ、笑えた)。
そんなに簡単ではない。この問題は難しいのだ。だからこその隙間が感じられる演出に救われた。
また、希望が感じられるラストシーンも良い。結局は見て心地よい映画がやはり好きだ。
重いテーマの割に見やすくて、おすすめである。
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