「CEC前夜 01」 -Customer Engagement Conferenceの舞台裏公開-

かくして、プロジェクトはスタートした

「大型カンファレンス、Reproでもやりたいんだけど、皆、目の前のことにパツパツで、やれるやつがいないんだよね」(平田)

「だっだら、おれやりますよ」(吉澤)

始まりは、咄嗟に口から出たその言葉でした。梅雨が続き、湿った生温かい空気が色濃く残る7月の初旬だったと思います。

役員として正式にジョイン(それまではフリーの立場から週に1回の業務委託として関わる)したのが4月。それからわずか3ヶ月。新しい組織を作るのに必死な日々を過ごしていた頃です。

必死なくせに、それ以上のタスクを自分に課そうとする、僕のいつもの癖です。今思えば、なんて無責任な発言だったんだろうと思います。

さて、言ってしまった手前、引き戻るわけにはいかない。やるしかない。正直不安しかありませんでした。

数百人規模のパーティやカンファレンスの企画を回した経験はありました。たしかにそのアドバンテージは持っていたので、少しは自信がありました。

けど一方で、僕は大きなハンディキャップも持っていることに気づきました。それは、この2点です。

・社員をどうやって巻き込んでいけるのか
・全員が納得できる目的を設定できるのか

僕はまだ3ヶ月そこそこしか在籍していない新参者です。社員とのコミュニケーションも発展途上の状態のなか、どうやってRepro全体を巻き込んでいけば良いのか。社員を引っ張るリーダーは他にもたくさんいます。そのなかで、果たして僕が先導できるのだろうか。そういう想いでした。

また、カンファレンスはある種お祭り的なイベントです。SaaS業界ではブランディング目的で大型カンファレンスを主催することが流行していて、Reproでもそろそろやった方がいいよね、という機運は社内外でありました。しかし、いったい何のために開催すべきなのか。目的より勢いが先行した結果、僕はまだReproのことを100%理解していないままに、突っ走ってしまったのです。

そんな僕が、今のReproにとって最善のゴールを設定できるのだろうか。古くからReproを支えるメンバーのほうが適任じゃないのか。そういう悩みが常につきまといました。

しかし、後戻りはできません。むしろ自分でそういう状況に追いやったのですから、進むしかありません。

僕はまず、プロジェクトがキックオフするまでの間、何人かの社員に相談を持ち掛けました。

「Reproは今カンファレンスをやるべきか」

「何の目的でカンファレンスをやるべきか」

「社員はみんな納得してくれるだろうか」

みんながどのように今のReproを捉え、考えているのかを把握しようと努めました。すると、意外にも全員の答えは共通していました。言い方や表現はそれぞれ違うものの、それぞれが、Reproは今よりさらに上のステージに進むべきであり、さらなる成長を遂げるにはリブランディングする必要がある、と主張したのです。

ちょうどこの時期、経営・マネージメント層は鎌倉の施設で合宿を行い、Reproの今後のビジョンについて語り合っていました。そこで僕ら経営陣は、Customer Engagement PlatformとしてReproを生まれ変わらせよう、そのために最適なプロダクトとは何かを定義しようと議論を重ねていました。

ハッとさせられました。経営陣・スタッフに関わらず、全員が同じ事を考えていたのです。

Reproはこの時すでに、会社自体が大きなひとつの塊となって前に進み、明確な意志を持つ生命体と化していました。すでにReproは「One-Team」であり、「One-Vision」であり、初の大型カンファレンスを行う目的は、とっくに出来上がっていたのです。

こうなると、僕が悩んでいたハンディキャップは、いつの間にかなくなっていました。そして、こう思うようになりました。

僕がみんなを引っ張るんじゃない。みんなが僕を引っ張っているんだ
目的はこれから作るものじゃない。すでにそこに存在するんだ

そう思うと、いつの間にか、これまでの重圧はすっかりなくなっていました。僕らが目指すCustomer Engagementの世界を、ここに集約し、伝えていこう。あとはやりきるだけだ。

こうしてプロジェクトは、始まりました。

プロジェクトは第一歩を踏み出した

本格化したのは、梅雨が空け、夏の暑さがより一層厳しくなった8月の初旬でした。

最初の作業はイメージの具現化です。他社のカンファレンスに参加したときに感じたメモを皆で共有し合い、Reproが目指す最高のカンファレンスの形とは何か。その解像度を上げていきました。

同時にイベント会社のコンペも進めていきました。選定基準は「自分たちの世界観に最も寄り添ってくれる会社」であることです。5社程度提案を頂き、すべての提案に真摯に耳を傾けました。最終的には一つの会社に絞っていきます。

こうして、ひとつひとつのタスクを慎重に潰していきます。

会場もいくつか探した結果、アクセスの良さを考慮し、ヒカリエホールに仮決定しました(今はもう確定してます!)。

予約金を入金する頃には、実現に向けて動いていることが実感できて、強烈なリアリティを感じました。絶対に成功させようという強い意志を、この時さらに強くしました。

僕はこの時、10年後のReproを想像していました。

世界中でReproが使われ、唯一無二のコミュニケーションプラットフォームとして、たくさんの顧客と、その先にいる消費者の笑顔を照らしている。その頃にはきっと、世界中のマーケターの前で、同じ熱量をもってもっと大きなイベントを開催しているに違いない。

予約金を入金したこの小さな一歩が、すべての始まりかもしれない。

そう思いました。

こう思うのは大げさでしょうか。馬鹿げた妄想でしょうか。

何と言われようが、僕は、何かにチャレンジするときは、その先の未来を想像するというスタンスを何よりも大切にしています。なぜなら、その方が面白いからです。

一つのことに挑戦する、その先には知らない世界が待っているから。その知らない世界を自分のものにするために、今すぐ出来る事からはじめよう。

その姿勢を続けることが、自分の人生に豊かさ与えると思っています。僕は予約金を振り込んだとき、10年後の未来を想像し、とてもやる気に満ち溢れる気分になりました。

もう後戻りはできない。とにかく前に進もう

暑さが徐々に和らぎ、風に幾分かの冷たさを感じる季節になりました。この頃には、具体的なロードマップが敷かれ、スケジュールとタスクはより細分化していきました。

最初に優先したのは、Keynoteスピーカーの選定と交渉です。Keynoteはカンファレンスの顔です。サイトをティザー公開する予定でいたので、まずは最低限、Keynoteのコンテンツとスピーカーを最優先に決める必要がありました。

当初からKeynoteはUSの著名なブランド企業と決めていました。自らアメリカまで足を運び、あらゆる関係者と交渉を重ねました。決定までは数ヶ月を要しました。大変な作業でしたが、何とかサイト公開までに間に合いました。これはひとえに、相談に乗っていただいた様々な関係者の皆さまの協力の賜物です。

ちなみに、プロジェクトのコアメンバーは僕含めて4人で回しています。Keynoteの交渉は自分がすべて最初から最後まで担当しました。他のメンバーは、それぞれ「演出担当」「プロモーション担当」「管理担当」に分かれ、それぞれのタスクを同時進行で進めています。

僕は一応プロジェクトのオーナー兼、カンファレンスの総合演出という立ち位置ですが、ほとんどのタスクはメンバーに判断を任せています。僕が直接関わるのは、カンファレンスのコンテンツ部分と、スポンサーの獲得活動くらいです。それ以外はメンバーが自ら動いてくれています。

こうなった背景には伏線があります。

プロジェクト初期の頃、僕は他の業務がパツパツで、うまくプロジェクトを回すことが出来ていませんでした。動きたくてもなかなか動けずにもがいていた頃、彼らは僕にこう言いました。

「吉澤さん、僕たちで巻き取りますよ」

僕はこの言葉にとても勇気付けられました。

僕がみんなを引っ張るんじゃない。みんなが僕を引っ張っているんだ
目的はこれから作るものじゃない。すでにそこに存在するんだ

まさにこの言葉通りで、僕の胸に突き刺さりました。みんなに頼っていいんだ。みんな同じ方向を向いているんだ。だったら、無理に僕が引っ張る必要なんてない。むしろ僕は引っ張られているんだ。

僕はただ、「やり遂げる強い意志」だけを持ってみんなと接すればいい。

リーダーとして必要なものは、それだけでした。

チームのメンバーは、強い責任感と当事者意識をもって取り組んでいます。この熱量は、やがて他のReproメンバーにも徐々に波及し、いつの間にか、Repro全体で、このイベントを成功させようという期待に満ちていたのです。

本番に向けて

筆を走らせている現在(2019年12月16日)、カンファレンスの準備はまだまだ仕込み途中です。課題も山積みで、大丈夫かと心配になることがたくさんあります。

一方、無事にスポンサーと講演者が揃い始め、サイトが公開されると、想定を上回るペースで集客が伸び始めました。

大きな期待と不安が入り混じる、とても不思議な気分です。まだまだ気を抜くことはできません。いやむしろ、気を抜くことが出来るのは、イベントが無事終了した時、その一瞬かもしれません。なぜなら、その先にある未来に挑戦するための第一歩を踏み込んだだけだからです。

何が正解かはわかりません。僕らは素人です。初めての大型カンファレンスです。運営にも慣れてもいません。

しかし、僕らは誰よりもやり遂げる強い意志を持ち、一つの強烈なビジョンを共有し合い、団結した一つのチームで進んでいます。そして、皆さんに伝えたいメッセージがある。だからやり切る必要があるのです。

自分たちのやり方を信じて、最後まで走り切ろうと思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

https://cec-tokyo.com/

CEC 総合演出  Repro  吉澤


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