ケンケンパの向こう側
寂れた小さな事務所らしきところに灰色の事務机が二つ向かい合わせで並んでいる
部屋中に写真が貼ってある
はい…?ちょっと忙しいから手短に頼むよ
あの、視聴者の方から投稿があってここは何をしてるのかって
ここは、けんけんぱの丸について研究してるんだよ
特に、ぱ!のとこね、ぱ!
子供たちはどうしてなのか足を開く時に同時に手も開く、こーう、バンザイをするようにね
このけんけんぱの丸が地面に描かれていると、夜になり子供達が去った頃、帰宅途中のサラリーマン がそっと真似をする
その時のサラリーマンもそっと手を開く
万歳まではできないんだよ、コンビニ弁当が傾かないようにしなけりゃいけないからね
しかし、この
ぱ
の瞬間
ひとは何故だか少し晴れやかな気持ちになる
ここに人類の希望があるんじゃないかと僕らは思ってるんだ、来てごらん
あ、はぁ…
この丸にも綺麗な丸を描くもの、歪んだもの、色の有無
それを分類し調べてみると地域性が有ることがわかってきたリズムが違うんだ…
おい、聞いてるのか!?ここからが大事なんだぞ!粋狂でやってるんじゃないんだ!人の命と地球の未来に関わる事だっ!
え?ぇえ…そんな大袈裟な,ははは
そこに、空いてる机があるな
はぁ…
先月までそこに木下君と言う助手がいた、特に目立つ感じのない、それでいてそつなくあたりに気をつかい、ぬるくなった飲み残しのピッチャーのビールを飲むような女性…調査員としては一級だった
へぇー、あ、いますねそういう女性、僕タイプですよ
その木下君が、ぱ、の向こうに渡ったんだ
…?
私も一緒に調査にあたっていた。岡山だ、瀬戸内海を臨む公園のベンチで私はみたんだ
まさか、その人が消えたとか
…けん、けん、ぱ、の後に、その地域にはもう一つぱがついた、けんけんぱっぱ、最後のぱを踏んだ時までは、彼女はそこにいた
えー?まさか本当にー?
本当かどうか君が調べるんだ
何言ってんすか
どうせそのTV?かなんか知らんがネタ切れてこんなところまで君は来たんだろう?今日から君の席はそこだ
けんけんぱの向こう…そこに何があるのか…僕はその渦の中に飲まれる事になった、その時はあんな恐ろしい事になるとは、思ってもいなかった
おい君、名前は
えっ、木下…です
次回予告
彼女が消えたのは大禍時、昼と夜との合間、子供と大人の間の時間に消えたんだ…おい、どうした…
え、いや…いま、誰かがいたような…かあさん…?いやまさか!
月曜日にはショートシナリオを更新しています
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