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【ライティングの極意】人気シナリオライターになりたいなら悪文を使いこなせ!

シナリオを書く際、絶対に意識しなければいけないのが読みやすさです。

内容が頭に入ってこない悪文ではユーザーがそこで手を止めてしまい、最悪の場合は積みゲーと化します。だから、読みやすい文章が大切なのです。

さて、ここまではごく一般的なシナリオ理論ですが、実はこの説明には重大な欠陥があります。それは何かというと、次のとおりです。

・読みやすいテキストを書けるシナリオライターは星の数ほどいる

つまり、読みやすいテキストを書けたところで他のライターと差別化ができないということです。個性がないとも言えるでしょう。

そのため、読みやすい文章を書く能力にプラスアルファをしなければシナリオライター界の底辺をさまよって終わりです。

そこで、あなたに伝授したいのが悪文を使いこなす能力

冒頭の説明と矛盾するようですが、実は、悪文を上手に使うことができれば唯一無二のシナリオライターに様変わりします。

今回、この記事では、どうすれば悪文を使いこなせるのかを実在する作家さんを取り上げながら解説していきますので、シナリオライターの頂点を目指すのであれば絶対に読みましょう。

『読みやすいテキストの作り方』を読んでいない人は、まずこちらから目を通してください。

♢この記事を書いた人:さーくん
シナリオライターとして3年活動。20作以上のゲーム開発に携わる。
現在はクリエイター向けマーケティング支援を実施。
マーケティング支援の詳細→WEBサイト:Creator Marketing
詳しいプロフィールはこちらから→自己紹介

1.悪文を使う作家の代表格

悪文が大事だと言われても、おそらくすぐには信じられないでしょう。

そこで、悪文の必要性について説得力をもたせるために、悪文をあえて使っている有名な作家を3人ご紹介します。

1-1.西尾維新

言わずと知れたライトノベル作家です。一度でもこの方の作品を読んだことがあれば分かると思いますが、良文よりも悪文のほうが圧倒的に多いです。それにも関わらず、『化物語』シリーズで大ヒットを記録していますね。

では、具体的にどのようなところが悪文だと言われているのでしょうか。それはずばり、風景・背景描写が非常に少ないため「登場人物たちがどこにいるのか」が分かりづらく、まるで真っ白な空間で物語が進行しているようなイメージを持ちます。

ただ、これは1つのテクニックであり、キャラクター同士の掛け合いキャラクターの心理描写地の文で仕掛ける言葉遊びをなどを強く印象付けることになります。分かりやすく言えば、キャラクターを最大限、魅力的に描くことに専念しているということです。これこそが、他の作家との大きな違いと言えるでしょう。

1-2.鎌池和馬

有名なライトノベル作家です。『とある魔術の禁書目録』という作品が大ヒットしました。この方も悪文を使うことで知られています。

具体的にどこが悪文なのかというと、あまりにもシンプルな表現を使うため想像力を働かせる余地がないという点です。小説であれば通常、繊細で美しい比喩表現に読者は感動を覚えたりするものですが、この方の文章にはそのような箇所がまったくありません。極端な例ですが、「ドカン。どこかで何かが爆発した」といったような表現を用います。これでは小学生でも書けるのではないかと思ってしまいますね。

しかし、当然ながら、このシンプルすぎるが故の悪文にも素晴らしい仕掛けがあります。シンプルな表現とは、言い換えれば極限までムダを省いた表現とも言えます。そうすると、文章を読んでいて引っかかるところがなくなるため、スラスラとテンポよく物語を読み進められます

小説というのは本来、一気に読むものではなく何日間かかけて楽しむものです。しかし、この方の作品はムダを省いた究極の読みやすい文章で構成されているため1日で読破できてしまいます。つまり、小説を読んでいるにも関わらず、まるでマンガのようにスラスラと読めてしまうということです。これこそが、他の作家との絶対的な差であり個性なのです。

1-3.奈須きのこ

有名なシナリオライターです。代表作は『Fate』シリーズですね。この方も有名な悪文作家でして、とにかく難解で理解しづらい表現を多用します。

当然、そんな文章を書くことにも理由があります。それは、難しくて理解に時間のかかる表現を使うことにより、物語の重要なポイントでユーザーに思考する時間を与えるということがまず1点。そして、2点目は、難解な表現は戦闘描写をよりいっそう盛り上げるということです。

まず、1点目の「ユーザーに思考する時間を与える」について説明します。たとえば、後の伏線になるような重要な場面をさらっと読み飛ばしてしまえば物語の面白みが半減しますね。そのような事態を防ぐため、あえて難しい表現を用いて大事なシーンをユーザーに強く印象付けるということです。伏線回収の他に、作品テーマを訴えかけるような場面であえて難解な表現をすることもあるでしょう。

2点目の「戦闘描写をいっそう盛り上げる」ですが、たとえば、「燃え盛る炎にその身を焼かれる」ではなく「地獄の業火に躯体を焼かれる」のほうが戦闘描写が盛り上がるのはイメージできますよね。

難解な表現を用いるライターは多いですが、このように効果的に使用できことができる方は極めて少ないため、強力な個性と言えます。

2.悪文の使い方

悪文作家について説明をしましたので、どのように悪文を使うのかはイメージできたと思います。念のため、ここまで紹介した悪文の効果的な使用方法を箇条書きしておきましょう。

・キャラクターの魅力を高めるため使用
→風景描写をなるべく省き、キャラクターの描写に力を入れる

・読書スピードを高速化し物語に没入させるために使用
→難しい表現ではなく、シンプルな描写を心がけける

・物語の大事なポイントを印象付けるために使用
→難解描写をあえて用いる

・戦闘シーンを盛り上げるために使用
→難解描写をあえて用いる

実は、これ以外にもう1つ効果的な悪文の使い方があります。それは、次のとおりです。

・基本的に文章が長いが、重要な場面でいきなり短文を使う。

これは、ホラーミステリーのジャンルで使われることの多い効果的な悪文の使い方です。たとえば、次のような文章です。

〇例文
雨に濡れた夜道をゆっくりと歩きながら、いつものように物思いに耽ていたが、とうとつに視界に入った黒い何かに思考を中断し、私はその場に立ち止まる。野良猫か、あるいは新聞紙でも風に飛ばされたのかと思い、ジッと目を凝らした瞬間におもわず腰を抜かしてしまった。人面犬だ。

句読点が2つ、3つと打たれているような長い文章は好まれないのが普通です。単純に読みにくいですよね。

しかし、長々とした文章が多いなかで急に短文を入れられたらどうでしょうか。この例文の場合、「人面犬だ」の部分が強く印象付けられるはずです。

このように、あえて長ったらしい文章を書き、重要な場面でいきなり短文に切り替えるのも効果的な使い方です。

3.まとめ

最後に、ここまでの内容をまとめていきます。

・キャラクターの魅力を高めるために風景描写をカット
・物語に没入できるよう究極に分かりやすいシンプルな文章を書く
・物語の大事なポイントを印象付けるために難解表現を用いる
・戦闘シーンなどで盛り上げるために難しい表現を使う
・重要な場面を印象付けるために長文から急に短文に切り替える

以上が、悪文の使い方となります。

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それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。


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