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人の関心に関心を持つ



私は自分が生きているこの社会のことを正直まだ全然よく分かっていません。
目の前に見えているものは色々あるけど、背景で何がどうなってこうなっているのか、1ミリぐらいしか分かっていない。ので勉強中です。

今回は日本の中でも特に沖縄の貧困について。本を読んだのですが面白かったのでシェア。

沖縄には、謎が多い。圧倒的な好景気が続く中、なぜ、突出した貧困社会なのか。「沖縄の人は優しい」と皆が口をそろえる中、なぜ、自殺率やいじめ、教員の鬱の問題は他の地域を圧倒しているのか。誰もなしえなかったアプローチで、沖縄社会の真実に迫る。「沖縄問題」を突き詰めることは日本の問題を突き詰めることであり、それは、私たち自身の問題を突き詰めることだ――。「コロナ後の世界」のありかたをも問う、鮮烈の問題作。

以前『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』を読んで沖縄のティーンが抱える課題とその背景に対しては認識はありましたが、

都道府県別の県民所得では11年連続で全国最下位、賃金は全国の最低水準で、貧困率は全国平均の実に2倍。(本書より)

また、自殺率、重犯罪、DV、幼児虐待、いじめ、依存症、不登校教員の鬱の問題が全国を圧倒して凄まじいことは知りませんでした。

本書はこれらの社会課題を文化的側面、経済的側面、(+その背景にある政治的側面)から沖縄社会の内部を覗く形で探り、原因を突き止め、その上でどうしたらその貧困社会を終えられるのかについて述べられている。


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沖縄から貧困がなくならない理由

■ 文化的な理由:現状維持を最優先し、他人にNOと言えない人間関係がある。また同調圧力が強く、どういう状況であっても出る杭の存在を許さないから。

そのことから起こっている事例)
クラクションを「鳴らせない」…交通ルールを破った人に対してであってもクラクションを鳴らすと「加害者」として見なされ、不当な扱いを受ける
頑張る人(ディキヤーフージー)いじめ…仕事ができたり、勉強ができる人ほどその功績を無視されるなど無意識ないじめに遭う

■ 経済的な理由:貧困であることに経済的な合理性があるから
→貧困であることで「労働者」「消費者」「経営者」の利害が一致してしまっている
労働者…役職をもらって目立ったり、同僚に指導をする立場になることで人間関係が壊れること忌避し、低賃金の方が良いとする

消費者…商品の良し悪しは関係なく知り合いや地元企業からしか買わないなど、とにかく人間関係を壊さないように消費活動を行う。

経営者…労働者が低賃金でOKとすることから賃金をあげる動きを取らない、消費者が品質を気にしないことから品質の向上をする必要がない
→沖縄の若者から創造性を奪い、より貧困状態に陥るスパイラルを生み出している

こういった社会構造のさらに下に隠れているのが「自尊心の低さ」の問題だという。

多くのウチナーンチュは…労働者であっても、消費者であっても、経営者であっても…目立たず、波風を立てず、NOと言わず、周囲の期待通りに生きることを、無意識的に、しかし積極的に選択しているようなところがある。現状を変えたくない、波風を立てたくない、目立ちたくない、失敗したくない、人に嫌われたくない…現状維持の沖縄の社会構造を作り出しているのは「自分らしさよりも場の空気を優先する」というウチナーンチュ気質である。そのために、自分らしさを諦め、生きづらさに甘んじることになっても、だ。

原因と結果の関係は曖昧で、どちらが鶏でどちらが卵か私にはあまりはっきり区分できていないけれど、経済格差と自尊心の低さが大いに関係していることは明確に分かった。

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誰かの自尊心(自分はありのままで愛される価値があると思える気持ち)を回復するために私たちにできることはただ1つ

目の前の人の関心に関心を向けること

これが全てだと語られている。

その人自身に関心を向けるだけでは足りない。その人が何に関心があるのか、何が好きで何に興味を持っているのか、その人に見えている世界を共有することが必要ということだった。

また、筆者樋口さんがホテルの経営者をしていた時代の経験談として、経営者が自社で働く人一人一人に向き合い、その人たちの関心に関心を持つことを最優先にしたことで、社員の生産性や向上心が伸び、10年赤字だったホテルが2年間で1億以上の売り上げを持つ企業になったとも書かれている。

つまり、ひとりひとりの自尊心回復を目指すことが、経済面の課題を解決するヒントになるということだと考えられる。

後半に書かれていたが、この沖縄の問題は本土でも大いに起こっていることにつながる。世界の中での日本の立ち位置は日本社会の中での沖縄の立ち位置と似ている。だから沖縄の問題は日本の問題とも言える。


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話は変わるけれど私はかなり自尊心が高い方だと思う。

昨日、道で両手にパンパンの買い物袋を持ち、立ち止まっているおばちゃんがいた。重そうやなと思ったので「おばちゃん荷物運びましょうか」と声をかけた。結局その時一緒にいた友達とおばちゃんの家まで荷物を運んだ。

この出来事の昨日の今日で本書の下記の文章を読んでなるほどと思った。

教育の枠組みが「余計なことはしない方がいい」という動機を生み出している。若者が、学ぶ目的と動機を失っていることも日本全体の問題だ。
「無感覚」なのは学生たちだけではない。イギリスの慈善団体「Charities Aid Foundation」(CAF)が毎年発表している「World Giving Index」(世界思いやり指数ランキング)において、2018年の日本の総合ランキングは144ヵ国中128位、「助けを必要としている、他人を助けたか?」の項目は、実に142位だ。

(略)

私は、これは日本人の冷たさというよりも自尊心の低さを表していると思う。自分を愛せない人は、人の役に立つことすら恐れるからだ。自分に自信がないから、「もし、ありがた迷惑だったらどうしよう」という考えが頭をよぎって、行動に結びつかない。

ちなみに私は上の行動を取ったときに「ありがた迷惑だったらどうしよう」とは全く考えなかった。この時だけではなく、電車でお年寄りに席を譲る時も、リュックが開いてる人に声をかける時も、あまり躊躇しない。

それはおそらく断られるケースをあまり想定していないからだと思う。
老人に席を譲って「年寄り扱いするな!」と怒られることがあると聞く。確かにそういうこともあるかもしれないなと思うけど、実際に行動を起こすときはそれを考えるより先に体が動く。

もしありがた迷惑で断られたりしてもきっと大丈夫だと思う。行動を起こした自分ではなく、何かタイミングが悪かったんだなと思うから自尊心は削られない。

自分の過去を思い起こすと、かなり自分の関心に関心を向けてもらっていたと感じる。
家族や先生や友達は自分の好きなものを否定しなかったし、自分の話を聞いてくれた。自分が関心を持っている方向に進めるようサポートしてくれていた。
(人間の記憶は都合よく塗り替えられるものだから当時自分がどう感じていたかはあまり覚えていないし、否定されたこともあったかもしれないけどその記憶が強くないということは、認めてもらえていたことの方が多かったのだろう)

自尊心というものに意識を向けることは度々あったけれど、実際に人が十分な自尊心を持てること、ありのままの自分を愛せるようになることがもたらず大きな影響力を今回強く感じた。

まずは自分自身が関わる人ひとりひとりに対して「何が好きなんだろう、何に関心を持っているんだろう」とその人の関心に心を寄せることを実行していきたい。

これはきっと仕事にもつながってくる。

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D×Pで私たちスタッフやボランティアさんが人と関わる時にずっと大事にしてきた姿勢が2つあります。

・否定せず関わる
・ひとりひとりと向き合い学ぶ

この2つの姿勢は、その時関わっている人の関心に自分たちが関心を持つことにつながります。

仕事でずっとこの姿勢を大事にしているので、習慣になっていて、私はプライベートの多くの時間でも人と関わる時は無意識的にこの関わり方をしていると思う。(否定してたりすることあったらごめんなさい。。)

もし、この2つの姿勢を持って人と関わる人が社会的にも増えると、関わった人は自尊心を高めることができる。
自尊心が高まった人は、その自尊心をもとにやってみたいことにチャレンジする気持ちを持てたり、やりたいことを口にできたりすると思う。そういった様々な形でひとりひとりが幸せを感じられる機会が増えるといいなと思った。

先程の2つの姿勢は数年前から存在していて、価値はあると感じていたけれど、本書を読んでさらにその効果にお墨付きをもらえたような、自分が向いている方向は間違ってないと言われた気がした。

最近これから先のキャリアについてもふわっといろいろ考えたりしているけど、「自尊心」はキーワードになりそう。

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