#7 霊視ができるバーのマスター
人の悩みの8割から9割は人間関係が原因だ、と言われているが、本当にその通りだと思う。人間関係が良好であれば、多少しんどいことがあっても頑張ろうと思えるし、その逆もまた然りだ。
今回は、私が思う「人間関係構築における真理」についてお話ししていこうと思う。よろしければどうぞお付き合いください。
霊視ができるマスターがいるバーに行った話
今から5年ほど前の話。
友達と一緒に、大阪・ミナミのとあるバーを訪れた。
そのバーは、曜日によってマスターが変わるのだが、月曜日と水曜日の2日間は、霊視ができる男性がカウンターに立っているということ。
このマスターの霊視が、まあ当たるらしい。
私にバーを勧めてきた知り合いは、一言も話してないのに過去の病気のことを当てられたと言っていたし、その知り合いの友人なんかは、近いうちに交通事故に遭うかもしれないから気をつけたほうが良い、と言われ、数日後、予言通りきっちり交通事故に遭い(車とぶつかったらしい)足を骨折して病院に入院することになったらしい。
仕事のこと、結婚のこと、お金のこと、子どものことなど、聞けば何でも答えてくれるということ。特に私が興味を惹かれたのは、その人がいつ頃死ぬのかが分かる、おまけに死因も分かる、というものだった。
いざ、バーへ行かん
こんなことを聞いてしまったら好奇心が疼かないわけがない。
が、1人で行くのは少々勇気がいったので、友人を引き連れて、後日バーに足を運んだ。
バーの開店時間は21時。
ワクワクしすぎて、開店10分ほど前に到着してしまった私と友人は、バーの入っている雑居ビルの前で「どうする?!何聞く!?」など話し、21時の開店と同時にお店のドアを開けた。
店内は思っていたよりも広く、6人ほどが腰掛けられるカウンターと、その後ろにテーブル席がいくつかあった。
開店と同時にお店に入ったので、お客さんは私達の他に誰もいない。
カウンターで私達を出迎えたマスターは、30代前半から後半くらいの爽やかそうな男性だった。
カウンターに座ると、ドリンクメニューを持ってきてくれた。
ドリンク2杯と30分の霊視のセットで5500円。もちろん、霊視を受けずにドリンクのみを楽しむことも可能だという。(今から5年ほど前の話なので、料金形態が変わっているかもしれません)霊視なんてもっとお金を取られると思っていた私は、意外にも良心的な価格に拍子抜けした。
マスターは、私達がオーダーしたお酒を作っていく。お店に入る前の私と友人は、「あれ聞こう、これも聞こう」とあんなに大盛り上がりしていたのに、これから霊視が始まるんだ、と思うとなんとも言えない緊張感のようなものに包まれて、お酒が運ばれてくるまでの間、蚊の鳴くような小さな声で「お酒の種類いっぱいあるね…」「まあ、バーだからね」なんて不毛な会話を繰り返していた。
出来上がったお酒が目の前に置かれる。
そして、マスターは私達に声をかけた。
「さて、どちらから霊視しますか?」
50代の髪の薄いおじさん守護霊
友人は、私がバーに誘ったのだから、私から先にやってもらうべきだと言い、まず私、次に友人の順番で霊視を受けることになった。
マスターは私の顔をじっと見て、きゅっと目を細めていく。
時折、私の肩の辺りに視線が動いて、次に頭の上、また肩の辺りに戻るといった具合に、私の後ろの”何か”を見ているようだった。十数秒した後で、マスターは口を開いた。
「まず、あなたの守護霊ですが、50代くらいの髪の薄い、ちょっとねちっこい性格のおじさんが付いています」
ねちっこい性格の、髪の薄い、50代の、おじさん守護霊。
あまりに突拍子もない言葉に、私と友人は大笑いした。
マスター曰く、この守護霊は私のご先祖様ではないか、ということ。
なるほど、私がネガティブで小さいことを気にしてしまったり、引きずってしまう性格なのは、このねちっこい性格の守護霊のせいなのかもしれないなと、ちょっと納得もしたりした。
次に、仕事のこと、お金の巡りなどについて教えてくれたのだけど、この辺りの話をあまり覚えていないのは、そこまでインパクトのある話じゃなかったからだろう。それとも、次の話題のインパクトが強すぎて、その強烈さに霞んでしまったのかもしれない。
相性の良いクズ男
次の話題は恋愛についてだった。
マスターは、私の恋愛傾向や視える未来についてこんなことを言った。
「あなたが相性が良い男性というのは、いわゆるクズです」
私は一瞬、言われた言葉の意味を理解することができなかった。
相性が良いクズ…?
大笑いしている友人を横目に、私は頭をフル回転させてこう尋ねた。
「クズっていうのは、具体的に、どういう人のことなんでしょうか…?」
「まあ簡単にいうと、女性関係が緩い人ですね。お金は持ってる感じの人なので、ヒモではないです。ただ、あなたと恋人関係になったとしても、女遊びはやめない、そういう男性と相性が良いです。」
なんてことを、しかも顔色も変えずに淡々と言うんだ!
これは、馬鹿にされているのか?と少々怒りのようなものも湧いてきた。
「じゃあ!そんなクズじゃない男の人と相性がよくなるにはどうすればいいですか?!」
すると、難しそうな顔をして唸ったマスターは、おすすめはできませんが、と前置きをしてこう言った。
「全身整形するしかないです。いわゆるクズな人というのは、あなたの顔の造りや体型、全体的な雰囲気に好意を持って、あなたに寄ってくるんです。これを変えるとなったら、あなたが別人になるしか方法はありません。」
なす術なしとはまさにこの事だろう。
怒りを通り越して、半ば放心状態のようになった私は、その後友人が霊視を受けている間も心ここに在らずと言った具合で、店を後にした。
人間関係は自分を映す鏡
それから5年。
確かに、いろんなことがあった。男性だけに限った話ではない。出会う人の半分以上が、自分のビジネスのために私を利用しようとしてきたり、呪物か?と思うほどの呪いの言葉が綴られた長文LINEが送られてきたり。(これらについては、別の投稿で詳しくお話しします)
そんなふうに、複雑な人間関係という荒波を、時には飲み込まれそうになりながらも進んできて、5年経った今では、ようやく人間関係に恵まれているかもしれないと思えるまでになった。
今の私が、このバーでの出来事を思い出して思うことは、当時の自分の心の状態を思えば、そのように言われても仕方なかったな、ということ。
この頃の私は、変な方向に曲がった野心を持っていて、出会う人が自分にとって利益をもたらしてくれるのか、くれないのか、その一点のみでしか判断していなかった。成功するためには、行きたくない集まりにも顔を出して、今となっては顔も覚えていない何十人もの人とLINEを交換して。
「人脈増やしたいとか、仕事が欲しいとか、その気持ちはわかるけど、もっと自分のこと大事にしなよ」なんて、友人のありがたい言葉も右から左に受け流していた。
人間関係は自分を映す鏡である、という言葉があるが、この言葉は真理であると思っている。色々な人に出会って、傷ついたり怖い思いをしたことで、私はようやく真の人間関係を築いていこうと心を入れ替えることができた。
すると不思議なことに、それまでの縁が次々に切れていく。東京に上京する頃には、自然と全部がリセットされたような状態になっていた。
今の私を取り巻く人間関係は、今の私の心の状態が作り出しているもの。
そう思って今周りを振り返ると、素敵な人の多いこと。
バーのマスターが言っていたようなクズな男性に引っかかることなく、優しく、時には本音をぶつけられるようなパートナーにも巡り会うことができた。
自己肯定感が低く、なかなか自分に自信が持てない私だけど、こんなふうに良い人間関係に恵まれている今の自分は、誇るべきだろう。
自分のことだけではなく、友人や仕事で出会った人など相手にとっても私との関係が、良い関わりだと思ってもらえるように、これからも人には誠実でいたいと思っている。
今回の投稿は、これまでで一番長文になってしまった。
ちなみに、私がバーのマスターに聞きたかった、いつ頃死ぬのか、その死因に関しては、87歳で老衰するということだった。
苦しまずに死ねるらしい。人生大往生じゃん。
この霊視の通りになるように、健康には気を遣っていこうと思う。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?