しにたい夜に

しにたい夜は、みんなどうやって過ごしてるんだろうと考える。”しにたい夜に”とぐぐってみてもなにもでてこなかった。

しにたい夜に、なにをしたらいいのかを考える。
この夜をはやくはやく、越えるために。
記憶においつかれてしまわないように。
聞こえない音につかまってしまわないように。
いらない感情に、砂糖漬けのようにどっぷりと浸かってしまう前に。

か細い月明かりを朝日だと嘯いて、夜明けはもうすぐそこだと言い聞かせてみる。
バスタブいっぱいぶんの涙に疲弊して、しなないままに迎えた黎明の空に何度でも絶望するけれど、薬でひどく緩慢になったこのからだは、本物の朝を、閉じた瞼からでも感じとって、床を這いずるようにゆっくりと、この夜をひとつ越えたのだと知る。
しにたい夜はだいたいこんな感じ。

しにたい夜は、最速で眠りに落ちる努力をする。
迎える朝など望んでいなくても。
朝を迎える理由を求めたら、たぶん、死神に追いつかれる。
迎えるどんな日も望んでいなくても、
ベッドまでたどり着けなくても、
薬を増やしても。
そうした自分を責めない。
もう誰にも謝らない。
こんな感じで、死神の傍らで今日もしにたい夜を越える。

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