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しにたい夜に

しにたい夜は、みんなどうやって過ごしてるんだろうと考える。”しにたい夜に”とぐぐってみてもなにもでてこなかった。 しにたい夜に、なにをしたらいいのかを考える。 この夜をはやくはやく、越えるために。 記憶においつかれてしまわないように。 聞こえない音につかまってしまわないように。 いらない感情に、砂糖漬けのようにどっぷりと浸かってしまう前に。 か細い月明かりを朝日だと嘯いて、夜明けはもうすぐそこだと言い聞かせてみる。 バスタブいっぱいぶんの涙に疲弊して、しなないままに迎えた

    • メンヘラって治るの?

      中学生の時の彼氏に、「なんでおまえってそんなに暗いんだよ」と言われたことがあるけど、今もしも彼に会ったら「なんでおまえってメンヘラなんだよ」って言われるのだろうか。 世の中にこんな関係はよくある。メンヘラが気に要らないのであれば、どうぞ捨て置いたらいい。なんでと責めたところでメンヘラは治らない。 そもそも、他人と比べて暗い、というパーソナリティは君が責めるに値する実害を君に与えただろうか。 なんでというのはこっちが聞きたい。なぜ君は、世界のすべてが君の好むようにできてい

      • メンヘラ 通院を始めてからの暮らし。

        メンヘラ歴が長い。この長いメンヘラ歴の中でも、今年は、深夜に巷を徘徊したこと以外には、ありふれたOL暮らしができている。 通院を始めてからそれができるようになった。 毎朝、午前中に起床をすませ、22分間の地下鉄に耐えて出社をし、昼休みと呼ばれる60分間には、昼食をとる習慣のない私はプロテインチョコレートを口に入れながら、株の売買や、勉強をする。 調子が悪いときは仕事中に切迫し、デスク上も荷物もコートも全てそのまま、真冬に体だけ帰宅したこともある。トイレで号泣をしたことも

        • 双極性障害者の日常

          大人になるまで待たなければならないことがあった。 きれいな洋服を着ること。好きだった音楽に触れること。暖かい部屋で眠ること。もう何にもおびえなくていい暮らし。何も壊されない世界。 小公女セーラを繰り返し読んだ。ラストシーンは私の宝物で、最後の数ページはちぎって持ち出した。 セーラは、悪意に当てられて、ネズミのでる屋根裏部屋で暮らしていたけれど、最後には誰かがやってきて、屋根裏から連れ出してくれる。 この家から、この街から。この国から。大人になったら。大人になりさえすれば

        しにたい夜に

          それぞれの10年 地味な闘病

          精神障碍者の闘病は地味だ。 私がまだ健常と障害の幅の広いボーダーにたたずんでいたころ、311と後に呼ばれた地震が起きた。金曜日だった。 当時勤めていたマスコミの記者たちは一斉に現地へ向かい、内勤の私のデスク横にあったプリンターからは、逐次カメラマンから届く凄惨な現地の写真が印刷された。津波から数日後、一変して泥にまみれた瓦礫の山となったその地に刺された、リボンのついた無数の竹竿は、ご遺体の位置を示していた。 公に出る写真はそこまでが限界だったけれど、編集部で飛び交う写真

          それぞれの10年 地味な闘病