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DX?デジタル化?

最近、一日一回は「DX」(デラックスではなくデジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞くようになってきました。

ICTに関して色々なバズワードが生まれるのはいつもの事で、DXも定義もへったくれもなくちょっとデジタル活用しただけで「DXだー」とドヤ顔するケースが多発しそうだなぁと危惧しているのですが、DXというのはインフラなどの技術革新や社会情勢によって段階を踏んで進められていく事がほとんどだと思うので、ある時点を切り取って評価する場合は「テクノロジーなり手段が、未来の発展性を考えて採用されているかどうか」という視点を持つことが重要かなと思っています。

最近、交通系ICカード「PASMO」に関してそれを実感することがありました。

PASMO(パスモ)は、株式会社パスモが発行し、関東地方・山梨県・静岡県の鉄道27事業者・バス76事業者(2019年4月1日現在)が発売する、電子マネー機能を備えたサイバネ規格のICカード乗車券である。


PASMO発売当初

私は通勤に横浜市営地下鉄を利用するのですが、市営地下鉄の定期券はPASMOでしか発行できないので、普段使いの交通系ICカードはPASMOになります。
2007年に発売された当時のPASMOは「磁気ICカード」でしたが、PASMOの登場によって向上した利便性は、以下の3つです。

1)券売機で現金を使って切符を買う必要がなくなる
2)カード内に現金をチャージしておき、乗り越し清算が自動改札機で自動的に行われる

もうひとつ隠れた効能として(ユーザーとしてはあまり意識することはないと思いますが)事業者側から見た時には乗降客の移動履歴が取れるという利点もあります。
これは事業者にとっては貴重なマーケティングデータとなりますし、そのことが消費者側に利便性の向上となって返ってくることもありますので、重要な点として強調したいところです。

とはいえ、この段階ではPASMOの利用はあくまでも公共交通機関を使うという限定的なものでした。

オートチャージ機能の登場と選択肢からの除外

2008年にクレジットカードとオートチャージサービス機能が1枚になったPASMOが登場します。

ただ、いちいち券売機でチャージするのがめんどくさいと思いつつも、交通機関以外での利用用途がなかったこと、クレジットカードを増やすのが嫌だったことから私は利用することはありませんでした。

横浜市交通局では担当が契約数の伸び悩みに苦慮していたという噂も聞いていたのですが、いわゆるユーザビリティを考慮してないという点ではイマイチだなぁと思わざるを得ませんでした。

モバイルSuicaによる現金利用の激減

2016年にApplePay版のSuicaが誕生します。
そのころには既に色々な電子マネーが登場していて、コンビニ等で利用可能でしたが、私は色々な電子マネーを併用するのが嫌だったのと、セキュリティ的な担保がなさそうだなと思い、PayPayほか乱立する電子マネーには手を出していませんでした。(実際色々ありましたしね)
ただ、元々iPhoneユーザーだったことや新幹線等の利用のためにSuicaは保有していたこと、Suicaは市営地下鉄でも相互利用ができること、交通系ICカードは決済手段として広く普及していることから、電子マネーをモバイルSuicaに統一して使うことに決めて、手持ちのSuicaをApple Payに取り込んで利用することにしました。

これが想像以上のユーザビリティ向上に貢献し、このことによって利便性がさらに3点追加されます。

1)券売機で現金を使って切符を買う必要がなくなる
2)カード内に現金をチャージしておき、乗り越し清算が自動改札機で自動的に行われる
3)磁気カードのSuicaを持ち歩く必要がなくなる
4)チャージがスマホアプリ内で行えるため、デポジットを現金で行う必要がない
5)コンビニ等の決済で電子マネーが使える

現金利用の激減には貢献しましたが、定期券はPASMOでしたので、Suicaとの2枚持ちという状況になり、買い物はスマートフォンひとつで済むものの、通勤時はPASMOを使って自動改札を通るため、別に磁気カードを持つ必要があることや、PASMOにデポジットすることがなくなったので市営地下鉄の定期区間との併用時にいちいち現金と精算機を使って清算しないといけないのがめんどくさいなぁと思っていました。(JRなどはSuicaだけで移動するので楽々でしたが)

モバイルPASMOの登場

2020年3月にいよいよ「モバイルPASMO」が登場します。
当初はAndroid版のみの対応だったので、しばらくはお預け状態でしたが、10月にようやくiOS版が登場したことを受けて、モバイルSuicaからモバイルPASMOへ移行することとしました。

この結果、定期券も含めた首都圏の交通機関利用、チャージも含めた電子マネーが全てPASMOで統一されることとなり、スマホ1台を持ち歩けば大抵のことはできるようになります。
これで劇的にユーザービリティが向上し、さらに3つ利便性向上が追加されます。

1)券売機で現金を使って切符を買う必要がなくなる
2)カード内に現金をチャージしておき、乗り越し清算が自動改札機で自動的に行われる
3)磁気カードのSuicaを持ち歩く必要がなくなる
4)チャージがスマホアプリ内で行えるため、デポジットを現金で行う必要がない
5)コンビニ等の決済で電子マネーが使える
6)磁気カードのPASMOを持ち歩く必要がなくなる
7) 定期券更新がスマホアプリ上でできる
8)スマホだけで大抵の用事は済むようになる

PASMOというサービスだけにフォーカスして考えた場合、個人的な感覚としては1~2くらいまでは「デジタル化」の案件で、3~5が「デジタル化とDX」のハイブリッドくらいに感じていましたが、6~8ではそれまで不便と感じていたことが気持ちがいいくらいに一掃され、「現金」という価値観が自分の生活の中から9割がた排除されたと感じることから、ここが「DX」だなぁと思っています。

1から6までの間はとても長い時間が掛かっていますが、その間にはソニーの非接触型ICカード技術である「FeliCa」の登場、バックエンドのサービスの構築や現場側の対応、スマートフォンの近距離無線通信(NFC)タグ対応など、様々な技術革新を待つ必要がありましたので、それは仕方がないことだと思っています。

個人的に「DX」という言葉を説明する時に「(窓口で申請を)書かない市役所はデジタル化だけど、行かない市役所になったらDXと呼んでいいと思う」という例えを使うことが多いですが、その環境を実現するためには、今現在もオンラインにおける本人確認(主にマイナンバーカードの普及、正しく言うと署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書を搭載したICチップの普及)をどうするか、電子署名を用いた契約をどう現場の業務に合わせるかなど、課題は山積している状態です。

デジタル化とかDXという言葉をまるで打ち出の小槌のように使う方をお見受けしますが、色々な外部要因も含めて全体の工程における利便性向上を考える必要がある作業だということは、全ての方に心に刻んでほしいと思う今日この頃です。

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