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楽して損取る


DX(Digital Transformation)の定義は「デジタル技術が人間生活のあらゆる側面に引き起こす、あるいは影響を与える変化」なので、Dはあくまで手段であってXが大事というのは、DX系の研修やら講演やらでは枕詞のようになっています。

それをわかりやすく伝えるために使っている比喩がこちらです。
私が考えた比喩ではないのですが、どこかで聞いて「これめっちゃ上手いな」と思ったので使わせていただいています。

DXのコツを伝える比喩

私が考える最大限にデジタルツールの強みを活かす方法は「今までの仕事のやり方を全部忘れて、デジタルツールに全部合わせる。」です。
ルンバの例えで言えば、部屋の中のものをなにも考えずに全部捨ててからお掃除ロボット走らせろということです。
できますか?
できませんよね?
だったら、ちゃんと片づけとしての「BPR」をしないといけません。

そして掃除や片付け・収納なんかにセオリーがあるように、業務の改善だってちゃんと先人の知恵があるので、そういうのちゃんと使ってやりましょうよ、というような話を事例込みでするわけです。

サービス設計12箇条

あるある質問

さて、そういう話を延々として「(あー、疲れた。)質問ありますか?」というタイミングでどんなご質問をいただくかといえば、こんな感じです。

Q.オンライン化したことで紙との併用になり、逆に仕事が増えたという事例をよく聞くが、そうならないコツは。
Q.効率化したいが現場に余力がなくてできない。どうしたら進められるか。
Q.(改善のためには100点満点を目指さず60点くらいを繰り返せというス
ライドに対して)
・100点満点を目指さないというのは理解できるが、公務員業界は失敗に厳しく、上司や市民にミスを許さないという人がいる。どうしたらいいか?
・60点とはどれくらいでしょう?
Q.管理職がDXや業務効率化に理解がない。どうしたらいいか。
Q.クラウドはセキュリティリスクが高いと思うが、どのようにセキュリティを担保するのか
Q.どれくらい人員を増やしたらBPRできるのか

一言で言えば「絶望しかない。」という感じですし、まとめて「知らんがなw」で回答したくなる瞬間です。(笑)

打ち出の小槌はない

こちらも長いこと地方自治体に勤務してましたので、状況がわからないわけではありません。
ご覧の通り、地方自治体の職員は一貫して減り続けていましたし、その一方で地方創生だのコロナ対応だのマイナンバーカード対応だのを負わされまくってきたわけで、私が良く使う例えでいえば「両手両足を縛られてプールに放り込まれても泳ぎ切る。」みたいな離れ業をしてきた人たちなわけです。

出典:総務省資料(https://www.soumu.go.jp/main_content/000608426.pdf)

状況としてはこんな感じですかね。

  • 人口が減る、公務員(正規職員)も減る

  • 市民ニーズが多様化し、制度が増えて、仕事も増える

  • 職員の生き方も多様化して、常識が揺らぐ

  • 自然災害が増え、仕事は増える

  • 変化に素早く対応することが求められるが、間違うと叩かれる

しかしながら、その両手両足プール遊泳状態が全く外部要因だけかというと、信じられないほど非効率な業務になにもメスを入れなかったが故に引き起こされているというのも否定できない事実です。

だからこそ、ちゃんとみんなが改善スキルを身に着けていくことが必要じゃないかと思いながらも、出てくるのは「効率化したくても現場に余力がない。(余力を生むための改善をやる余力がない)」という嘆きです。

結局のところ今求められているのは「君たちの業務フローを可視化したらこうなっていてここが非効率だからこう直して、ここにこんなデジタルツール入れれば全部解決するYO!」みたいなことを理解のない人の説得込みでやってくれる外からのヒーローで、なんならそれを100万未満でやってほしい(笑)みたいな感じなんだろうと思います。

「損して得取る」どころか「楽して得取りたい」みたいな状況ですが、結果的にはそれは「楽して損取る」状態を招くと思います。

とはいえ嘆いて愚痴っているだけで状況が勝手に改善するほど世の中甘くもありませんし、恐らくタイムリミットはもう目の前か、下手したら過ぎているくらいかもしれません。

この状況は「自治体の中にいる「問題に気が付いた人材」をきちんと活かせる自治体」が勝ち残るレースになりつつあると思います。

青い鳥はおそらくそんなに遠くにはいません。
ぜひご自身の自治体の中にいる人材に目を向けてみてほしいと思います。