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純喫茶リリー

“石を投げれば喫茶店に当たる”
この辺りの地域はそう呼ばれている。
大通りから一本奥の路地裏の角にひっそりと佇む赤いテントの喫茶店。
そこに純喫茶リリーはあった。

カウンターに4席、4人がけのテーブル席が2つ、3人がけのテーブル席1つ。
そして、一番奥の窓際に、インベーダーゲームが1回100円で遊べるゲームテーブルが1台。
お客さんが17人で満席になるこじんまりとした赤いお店だ。

ママの趣味なのだろう、床も椅子も壁紙も全部真っ赤だ。
新聞と週刊誌が並んでいる本棚までも赤い。
ママの娘の律子。
お店の名前のリリーとは関係ない。
この本棚は、律子が白いカラーボックスを赤いスプレーで塗った本棚。
まだ6歳の律子が塗ったそれは、赤がムラになっていて、決して上手に塗れたとは言い難い。

普段はFMラジオがかかってるけど、
日曜日の3時だけは、ラジオから競馬中継が流れる。
たまにママの趣味の甲斐バンドのカセットテープがかかる。

そんな純喫茶リリーのことをちょっと思い出してみようと思う。


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