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狙いは早朝

「お祭りがあった次の朝は、よーけ お金が落ちとるでよー
 りっちゃんも拾いに行ったらいいにぃ。」

萩原のジジは、毎朝5時くらいに起きて、開店前の近所の大型スーパーに散歩に行ってた。
開店前のスーパーにわざわざ?毎朝?とあるとき聞いたら、
お金が落ちてないか探しにいっているらしい。

「7時に行ってはもう遅い。先に誰かに拾われてしまう。6時には行っとかないかん!早起きはサンモンノトクって本当だに。」

「そんなに簡単にお金がもうかるなんてすごい!拾いに行きたい!」と、律子は瞳をキラキラさせた。
けれどどうしても早起きができなくて、結局一度も行くことはなかった。

6才の律子に、赤ちゃんみたいな顔だと思われている萩原のジジ。
元泥棒で、刑務所にいたこともあるらしい。
いわゆるゼンカモンだとオババがヒソヒソ言ってるのを聞いたことがある。

だが、見た目がかわいらしくて、いつもニコニコしてクシャクシャって笑うからぜんぜん怖くない。そして思ったことをバンバン言い、いつも楽しそうに話す。子供っぽくておもしろい。
律子はそんな萩原のジジが大好きだった。
多分、若い頃はモテモテだったんだろうと思う。

毎朝5時に小銭を拾いに行くジジは、すごいなぁと律子は尊敬の目で見ていた。

後から冷静に考えたら、

いや、それってただの、ネコババじゃん!


今で言う「朝活」の雰囲気で、意識の高い俺感を出して言ってたよな、ジジ。子供になんてことを教えてくれとったんじゃ!と、ちょっとイラッとくる。毎日そんなに早起きして出かけられるのなら、普通に仕事した方が楽なんじゃないかな。
律子、早起きできなくてよかったよ。本当に。


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