見出し画像

ジジと律子と笑っていいとも

萩原のジジは一人暮らしだった。
息子さんがいるらしいが、嫌われている、あまり仲良くないと噂されていた。
きっと今までにいろいろやらかしてきたのだろう。
息子さんは結婚したばかりと言っていたから、元ドロボーのジジに奥さんを会わせたくないのかなと、律子は考えていた。

「あいつはいかんでぇ」
と、ある日ジジがリリーにきて、大きな声で話し始めた。
どうやらタモリさんの悪口を言っているようだった。
新しく始まった「笑っていいとも!」という番組を見てからリリーに来たのだ。
律子に向かって、
「あのタモリってやつは、あいつは失礼なやつだよ。
テレビに出るっつーのに、昼間っからサングラスなんかかけやがって。
おれ、テレビ局に電話して言ってやったよ」
と大きな声で言い始めた。

律子は驚いた。え?タモリと知り合いなの?
テレビ局に電話したらタモリがでるのか?
怒られたのかな。タモリちょっとかわいそう。
テレビ局といえば東京じゃないか、10円玉が何枚必要?
高い電話代を払ってまで テレビ局に電話して文句を言うんだ!ジジは金持ちだな。テレビ局に電話できるんだ、番号知っているのか、なんかすごいなと思った。

実はこの時、律子はタモリをあまり知らなかった。
「笑っていいとも!」の前の番組「笑ってる場合ですよ」が律子は大好きだった。
最終回を見たときは悲しくて悲しくて号泣したのだ。
だから「笑っていいとも!」が新しく始まった時、怒ってテレビを消してしまった。この番組を見るということは、「笑ってる場合ですよ」への裏切りだと律子は強く思ったのだ。
だからタモリというタレントも知らなかった。

ちなみに律子は、この時の思いを忘れたフリをして、しれっと何もなかったかのように「笑っていいとも!」を見るようになったのはこの数ヶ月後、
あまりにヒマすぎた夏休みのことだった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?