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劇団のお芝居をみた話

7/1〜7/7までの1週間、
新宿高島屋の紀伊國屋サザンシアターで芝居を観ていた。

文学座公演  
『 オセロー 』    
作:ウィリアム・シェイクスピア
訳:小田島雄志
演出:鵜山 仁


主演の横田栄司さんの復帰公演として心から楽しみにしていたが、初めて目の当たりにした文学座の方々がつくりだす世界の奥行きにただただ圧倒された。
一人ひとりがシェイクスピアの言葉を全身で生き、四大悲劇の一つであるはずのオセローを、ユーモアたっぷりに笑わせてくれる。
人間性が出るとはこうゆうことなのかとステージに立つ全員に思ったことだ。

シェイクスピアの登場人物でもっとも狡猾と言っていいほど、言葉巧みに周囲を掻き乱し、不幸を巻き起こしていくイアゴーを演じるのは
文学座で長く公演に立ち続ける浅野雅博さん。
彼が素晴らしかった。
悪役であるはずのイアゴーに同情すら寄せさせるほど、現代の人が共感しやすい「嫉妬」と言う感情を笑いにかえて見せてくれた。

今回が舞台初であるというヒロイン、デズデモーナを演じるsaraさんの透明感と一本芯の通った愛には胸打たれ、ああ、オセローって愛を描いてもいたんだと思い出させる。
これまで蜷川幸雄さん演出のオセローを観ていたがここまでオセローとデズデモーナの関係性に感動をすることはなかった。と思う…。

愛の要素といえばイアゴーの妻、エミリア役の増岡裕子さんもすてきな女性だった。
正直、エミリアのポジションっていきなりすぎて、ちょっと無理あるなぁと思っていたのだけれど、
増岡さんのエミリアはイアゴーを愛する妻と、デズデモーナに親愛を尽くす侍女として、感情が正確に組み立てられていたのだ。夫によって巻き起こされた不幸に刺され倒れるさいごは涙が溢れた。


そして横田栄司さん、
おかえりなさいと言うしかないほどの完成度で、
しかし文学座の座員としてのびのびと高らかな声を劇場に響かせ、客席の間を通って観客にも話しかけて絡み、笑いを誘い、舞台の上を縦横無尽に転げて飛び回り、豊かな感情でオセローを魅せる。

三谷幸喜さんが
「そしてなにより、横田オセローは明るくてチャーミング。観客は誰もが彼を好きになるし、デズデモーナが夢中になった気持ちもよく分かる。心から思います、横田さん、待ってましたよ!」
と仰っていた通り、
チャーミングで人間らしくて、
愛情深いからこそ嫉妬深い人物であったのだと、
そこまで愛する妻を信じられなかったことが彼を何よりも苦しめたのだと、
オセローという作品を俯瞰させ、
納得させてくれた。

シェイクスピアって面白いなぁ。
現代を生きる人にも理解、共感させ、
400年以上愛される文章の素晴らしさを改めて実感できた。

もちろん彩の国さいたまシェイクスピア公演で観てきたからこそ、シェイクスピアの魅力にハマって、追いかけてきたのだけれど
文学座の方々の生きるオセローを観て
舞台に立ち生きる誰もが主役なのだと思えた。

彩の国さいたまシェイクスピアでも横田さんを観てきたけれど、これからは文学座での彼のお芝居ももっと観て行きたい。

そしてどうか、生涯愛する藤原竜也さんとのご共演がまた叶いますように……。
と、つい考えてしまうけれども。
やはりシェイクスピアっていいなぁ!と心から思えた1週間だった。


お元気な姿が観られて本当によかった。
わたしももっと、いろんなお芝居を観よう。

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