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まだ見ぬ一面も、確かに“その人”だ。チームづくりに向けた偏愛マップワークショップと反省

良いチームは、「その人が“その人”でいられるチーム」だと思っている。ティール組織でいうところの全体性に近い。自分の意見を偽ることがない。「こんなこと言っていいのかな」という窺いがない。そんな状態だ。

もちろん、それが100%良いとは思わない。仕事用の仮面を被った方が心地好い人もいるだろう。けれど、これは信念にも近い。僕は、「その人が“その人”でいられるチーム」を夢想して、仕事にあたっている。

では、そんなチームを作るにはどうしたらいいのか。いろんな打ち手はあると思うが、第一歩目はライトなものを選択した。

それが、偏愛マップワークショップ。

知っている人も多いと思うが、說明をする。偏愛とは、偏った愛。つまりは、自分のなかにある“誰にも理解されないかもしれない好き”だ。偏愛マップは、この偏愛を一枚の紙に落とし込んだものだ。

僕の偏愛マップ。デザイン性がない……笑

ワークショップでは、このマップを作成し、チーム内で共有する。そして、まだ見ぬ一面を知ろう、というものだ。

なぜ偏愛マップを共有するのか

実は、偏愛マップは研究者の方が提唱しているもの。明治大学文学部教授の齋藤孝先生が、下記の本で解説している。

もともとは、初対面の人どうしのコミュニケーションツールとして開発。
・人となりを早いうちに知ることができる
・意外な一面を知ることができる
・意外な共通点を見つけることができる
など、他者との距離感を近づけることに有効だとされている。偏愛の裏には、価値観がある。その価値観を知ることは、他者を知ることと同義である。

他者との距離感を近づける。それは初対面に限らずだ。既に見知っている人どうしでも、意外な一面を知ることで、その人への理解が進むだろう。「あぁ、それが好きだからこういう言動しているのね!」という発見もあるかもしれない。

もちろん、その偏愛に全てを帰結させるのは危ういので、対話が必要にはなるけれど、まだ見ぬ一面は確かに“その人”の一部。それを共有し、出せるようになるのは、その人が“その人”でいられるチームに近づくはずだ。

偏愛マップワークショップの進め方

進め方も簡単に記しておく。とはいえ、多くの他記事で語られているので、そちらを参照していただきたい。

■STEP1
紙の真ん中に、自分の名前を書く
■STEP2
自分の“偏愛”を書き出す
■STEP3
偏愛マップを共有、発表する

注意点としては、「なんとなく好き」でもOKということ。偏愛と聞くと、語れないといけないのでは……などと思ってしまうけれど、そんなことはない。気になっているんだ、くらいでもいいから書いてみると、意外とそこから広がるかもしれない。

加えて、「他の人が好きだから」はNG。あくまでも自分の価値観で書くことが大切になる。

開催後の思考と反省

ワークショップ自体は盛況に終わった。チームメンバーからも楽しかったという声があり、相互理解が進んだように思える。

けれど、それによって「その人が“その人”でいられるチーム」に繋がったかというと、少し疑問が残る。

ひとつは、偏愛の紹介に終始して、その裏にある「価値観」にまで話が及ばなかったから。これは、共有後の対話の設計が不十分だったためだと思われる。具体的には、提示した質問例が乏しかったこと、共有の時間をちゃんと取れなかったこと。

ある人が「カレーが好き」と言ったとしても、その事実だけでは価値観にまでは入り込まない。なんで好きなのか。そのWhyに話が及ぶことで、ようやく価値観の一端に触れられる。そのためには、どのような質問を重ねるか、ひいてはどのように発表するかが大切になってくる。

ワークショップの前に、「Whyを語ろう」というひとことがあるだけで大きく違ったのではないか、と今では思う。

ふたつめは、短時間&一過性のもので終わってしまったから。分かってはいたことだが、偏愛を共有したからといって、いきなりチームが変わるわけではない。その奥にある価値観を、定期的に共有することで、ようやく“その人”が分かる。いや、“その人の一部”が分かる。そう思うと、2時間弱のワークショップでは不十分なのは当たり前だ。

そもそもひとり数十分だと、偏愛を語り尽くすこともできない。せっかくの熱を持て余してしまう感覚もあった。そうならないために、どうしたらいいのか。

そのヒントが、先日読んだこちらのnoteにあった。

毎月一人、誰にも理解されないかもしれないけど愛してやまない「偏愛」を語る。20分間一方的に語り、のこり15分間はQ&Aタイム。

上記noteから引用

この取り組みのなにがいいかって、「ひとつのものに絞って20分間語る」ことと「定期的にそのような場が設計されている」ことだ。

偏愛マップだと、どうしても網羅的になるので、深堀りができない。熱を持て余してしまうのは、これが理由だ。けれど、20分間でひとつのテーマとなると話は違う。ありあまる熱を伝えることができるだろう。

また、毎月実施しているのも良い。「そうか、こんなことを話しても良いんだった」と、思い出す契機になるからだ。この安心感は、一過性のものでは沁み込まない。繰り返し繰り返しなじませて、ようやく身に沁みるもののはずだ。

終わりに

結論、僕が開いたワークショップは「盛り上がり」という観点では成功だったけれど、「チームづくり」という観点では失敗だったと思う。

けれど、この失敗の理由を振り返ることが大切なのだろう。チームづくりは、一過性のものではない。花火を打ち上げれば、それでいいものではないのだ。

自ら企画して、実施したことで、その限界に気付くことができたのはとても大きい経験だった。

いかに連続させるか。いかに身に沁み込ませるか。チームづくりは、その観点が大切なのだろう。偏愛マップも、ひとつの有効な手段であることは変わりない。けれど、その先の展望があってはじめて活きるものでもある。

「その人が“その人”でいられるチーム」を夢想して、これからも試行錯誤を続けていきたい。

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Twitterでも試行錯誤の記録を残しているので、ご笑覧ください。


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