【5回目の失敗=宇宙戦艦ヤマトのPに言われた、お前はクビだ!】
目次
1、 送別会での出来事
2、 僕を守ってくれた部長
3、 部下からの情報収集
4、 人は簡単に信用してはいけない
1、 送別会での出来事
1984年(昭和59年)頃、宇宙戦艦ヤマトのプロデューサー故・西崎義展氏(以下、代表と記す)が社長をしていた会社にいたときのことである。
六本木で、営業のAさんの送別会が行われていた。そこへ、代表が乗り込んで来た。
代表は、Aさんの隣に座り、Aさんの優秀さを語り始めた、僕を含めた送別会の出席者は。拝聴した。語りが終わった頃、誰かが何かをして、代表の逆鱗に触れた。
代表は、テーブルを捻って、テーブルの上のものを床にぶちまけた。
そして、出席者を睨みつけ、この送別会についてのことや日頃の不満を語りだした。その時に、代表の目に、僕の目が合ってしまった。
代表は、僕を睨みつけると、「お前は、俺の悪口を言っているそうだな。お前はクビだ!」と言い放った。僕は、いきなりそんな事を言われたものだから、気が動転してしまって、立ちすくむだけだった。
2、 僕を守ってくれた部長
呆然としているうちに、代表は帰り、送別会はお開きになった。僕はタクシーで当時住んでいた大井町に向かった。頭の中は「クビ」で一杯だった。大井町について、不安に駆られていた僕は、夜遅いにも関わらす、部長の自宅に電話した。部長に事の経緯を話して、部長からは「悪口」を言ったのかと聞かれたが、心当たりはない、と答えた。部長は、「俺に任せておけ」と言って電話が終わった。
その日は、不安で眠れなかった。
出社した日、部長へ挨拶に行った。部長は「守ってやる」と言って、代表が出席する会議へ向かった。
会議が終わって、部長は「お前のクビはなくなった」と教えてくれた。僕は部長に深々と頭を下げてお礼を言った。あとで、会議の出席者にどうして、僕のクビが回避されたか教えてもらった。
部長は、僕をクビにするんだったら、自分も辞める、と言って身をもって庇ってくれていた。
涙が滲んだ。部長にどこまでも、ついてゆこうと思った。
こうして、僕のクビ騒動は、終わったのだが、釈然としないことが残っていた。クビと言われた理由だった。
3、 部下からの情報収集
会社の先輩に訳を教えてもらった。それは、女性社員に気を許して話をしたことが原因のようだった。代表の部下の女性社員が僕と一緒に働いていた。その社員は僕より年が上で、社歴が浅い僕のことを気にかけてくれていて、僕とよく話をしてくれた。僕は、仕事の現状やまだ慣れていないこの会社のことなどを話したり、教えてもらったり、愚痴を聞いてもらったりした。
今回の原因は、その愚痴だった、ある時、僕はその女性社員に代表への不満を言ったことがあった。それが、どうやら代表に伝わったらしかった。僕は、その女性社員は代表が社員を監視するスパイみたいなものじゃないかと先輩に聞いた。先輩はそれを即座に否定し、彼女は何も悪くない。代表の聞き方がうまいんだ、と言った。
先輩の話を要約すると、こういうことになる。
代表は、自分の部下の女性社員を中途で入社した社員の中へ配置することをやっていた。。そして、何かの折に、女性社員を社長室に呼んで、ねぎらいの言葉をかけながら、自分が知らない会社の中の様子を個人名も含めて聞いていたのだった。
女性社員には、告げ口をしたという意識は全く無く、社長に聞かれたことを単に報告しているという感覚だったらしい。
4、 人は簡単に信用してはいけない
僕はこれを聞いて、驚くとともに大いに反省した。会社って気を許してはいけないところなんだと、初めて思った。人を見る目がまだ無かった、23歳の出来事だった。
それから、少し、警戒心を持つようになって、優しい人を簡単に信用しないように心がけるようになった。でも、人を疑うことは嫌いだった。まだまだ、青かった。
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