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私が悪女?昭和な言い方ね。今ならなんて言うの?【渡部香澄】2

『日曜日の夕方は、手を繋いで一緒に歩いて下さい。』アナザーストーリー

未来予想図(秀の夢)

翌週の土曜日、秀は今日は来ない。部の遠征に同行。一週間の間に秀の訪問は夜の10時頃に2回。
【飲茶、食べたくなっちゃった、、、あの中華屋、一人で行こうっと、、、
 明菜って子がいるかな?でも、私、秀を落としました。さあ、どうします?小娘さん?】香澄、自分優位だと思っている。
楊貴楼へ入る。レジで先払い。飲み物代は後で精算。
あの子、明菜が居た。「いらっしゃいませ。」と微笑みながら席に案内してくれた。
【何?、、、余裕?、、、それとも、秀とは単なるセフレ?、、、探らなくちゃ。】明菜の笑顔に、少し疑心暗鬼。
食事中もチラチラと明菜は香澄を見ている。目が合えば明菜は照れ臭そうに目線を落とす。
【何だろうなぁ~、、、今日は秀と一緒じゃないのに、、、】香澄、明菜の目線に戸惑う。
食事も終わり、冷たいジャスミンティーを頼むと、明菜が持ってきてくれた。それをテーブルへ置きながら
「あの~、この後私、3時には上がるんで、ちょっとお話、良いですか?、、、お忙しいですか?」と聞いてきた。
特に用事も無い為、「良いわよ。何処で待ってようか?」と、軽く返事をする。
明菜の笑顔と、しょっちゅう目線が刺さるのが気になり、確かめてみたい気持ちがそう答えさせた。
「この先に、ケーキ屋が有って、そこのコーヒーが美味しいんです。『牧場のミルク』ってお店です。そこで、、、」
「良いわよ。『牧場のミルク』ね、待ってるわ。」
明菜、嬉しそうな顔で下がる。
【秀の事、渡さないわよって言う感じじゃないし、、、何なの?】

「ふ~ん、、、そういう事だったの、、、う~ん、、、、、、、良いわよ、付き合っても。但し、協力してくれる?」
『牧場のミルク』のイートインコーナーで、香澄は明菜の話を聞き、予想外の展開にウキウキし始めていた。
「ほんとですか?やったー!、、、気持ち悪がられたらどうしようって思ってたんで、良かった~。」明菜、満面の笑み。
「で、香澄さん、いつ会ってくれます?」上目遣いで見つめる明菜。
「今日、これから、、、私の家にいらっしゃい。歓迎するわ。」と明るい笑顔で直球を投げる香澄。
「ハイっ!行きますっ!」明菜も明るい笑顔で応える。

明菜と待ち合わせた香澄。それぞれ名前を告げた後の明菜の話とは、、、
・「私は、レズです。」
・「初めての人も年上の女性でした。」
・「秀と一緒に来た貴女に、その人が重なりました。」
・「秀とは、私の変な焦りから付き合う様になりました。」
・「秀はモテます。他の女から告られたら、秀は断りません。私、ジェラシーを憶えました。」
・「でも、先日の貴女と秀が一緒の時は、ジェラシーを超えてました。」
・「貴女と秀がお付き合いされても、構いません。ですが、私とも付き合ってください。」

香澄、女性相手のsexは初めて。
明菜の積極的な行為に応える内、好奇心やいつか見た動画の記憶のまま、香澄も攻めながら、求めあった。
男とのsexと違い、終わり方が難しい。双方が同時期に絶頂を迎えたタイミングの後、まどろみの中で、
「さっき言ってた変な焦りって何?」香澄は明菜へ問いかける。
「私、レズですけど男の人にも興味はあります。SEXしたいと思ってたし。
 で、大学に入って、秀を見て、話しかけて、誘ったら、すぐに応えてくれて。
 元気が良いし、何度でもイカせてくれるし、普段は明るいし、性格は素直だし、、、でも、他の女の子にはすぐ手を出すし、、、
 私の処女はペ二パン(ペニスパンツ)にあげたんです。年上の女性《ひと》が持っていて、それを使った時。
 それから、その女性《ひと》と、色んなグッズを使って求めあって、、、高校3年の時から去年までです。
 その女性《ひと》、ヨーロッパへ行っちゃって、多分もう戻って来ません。今、パリでベルギーのパートナーと暮らしています。
 その時のグッズは今は私が持ってます。その女性《ひと》が残してくれて、一人の時は使っています。
 ……要は、、、ペ二パンしか知らない女じゃ嫌だったんです。だから、秀に、、、」
「……人それぞれに事情があるのねぇ~」
「私、バイセクみたい。秀にも抱かれたいし、貴女に抱かれたいし、色んなグッズでイカサレたいし、、、」

「で、協力って何ですか?」
「うん、秀の事。近づく子が居たら出来るだけ、邪魔して欲しいの、、、それとねぇ、秀のアパート、知ってる?
 出来るだけ、秀のアパートへ行くようにしようよ。連絡せずにふらっと寄ってみた感じでね。
 他の子を連れ込まない様にする為の牽制球よ。その子の部屋に行ったり、ラブホ行ったりしたら、あなたが怒るの。
 で、私が、秀とあなたをなだめる様に、許す様に優しくするの。そうすれば秀はあなたと私の物よ。要は飴と鞭ね。」
「分かりました、、、でも、私が悪役?」明菜の口が損な役回りとでも言いたげにアヒル口になる。
「二人とも悪役じゃ、秀は逃げちゃうわよ。あなたと秀の事も許すのよ。私とあなたの事は秀には内緒でね。」香澄の不敵な笑顔。
「香澄さんの頼みなら、協力します。……その代わり、私と長く付き合って、、、」

香澄、2LDKのマンションに独り住まい。
持ち主は父親。群馬で不動産業を営む。東京近辺のマンションを、何箇所か投資目的で所有。その内の一つ。
中学生の時、母が他界。子宮がん、それが内蔵に転移。入院から半年であっけなく旅立った。
母方の祖母も、叔母の母の妹も、子宮か卵巣がんと転移した内蔵疾患で亡くなっている。
香澄が高校2年の時、下腹部に違和感。生理不順、酷い生理痛、来た時の2週間続く多下血。市立病院で検査して貰うと、、、
子宮内膜症と、右側の卵巣に腫瘍らしき物(チョコレート嚢胞)と診断された。
内視鏡手術で右側の卵巣を摘出。鎮痛剤と2種類の薬、低用量ピルとを処方され、現在も服用中。
薬の効果もあり、今は日常生活に支障は出ていないが、
【いずれ私も、、、間違いなくやって来る、、、】香澄の、確信に近い予想。

母が他界した後、実家には家政婦さんがやって来るようになった。朝 9時から、夜の9時まで。
加納 京(みやこ)さん。40歳くらい、小学生のお子さんが居る。
明るい人で、おっちょこちょいで、香澄や父には遠慮がちに立ち回り、入り込んでこない。
夕方、香澄が中学校から帰ると、洗濯機のある部屋の机で、小学生の男の子が宿題をしたり、図書室から借りて帰った本を読んでいる。
京さんの子供、進君。お母さんの仕事が終わるまで待って、夜の9時過ぎに一緒に帰る。歩いて10分くらいのところのアパート。
この京さんは、鍋を焦がしたり、風呂の栓をし忘れお湯を溜めようとしたり、カレーライスを作った時には、ご飯を仕掛けるのを忘れたり、おっちょこちょいぶりを遺憾なく発揮する。
最初は呆れていた香澄も、京さんが他人に対して、”何か出来ないか”といつも気にかけている様子が妙に微笑ましく、段々好意を憶える様になった。
高校2年の時の入院手術も付き添ってくれて、術後は次の朝まで麻酔が覚めるまでベッド横に居てくれたり、通院には車で送迎してくれたり、
3年になった時の進学塾通いも、授業終りの10時過ぎに迎えに来てくれたりと、献身的に接してくれた。
だからと言って、過干渉にはならず、余計な事も言わない。不思議な人とも思えた。
大学入学で実家を離れる時に、父に、
「京さんに、プロポーズしたら?、、、良い奥さんだと思うよ。」と言ったら、
「した事がある。断られた。今の関係で良いそうだ。」と薄笑いで返事。
「なあ~んだ。もうしてたのか、、、っで、フラれたっと。…ん?今の関係?、、、そういう関係?」
「あ~、たまにな。」父親、照れ笑い。
「へえ~、やる事、やってんだ、、、」香澄、呆れた様な、ちょっと嬉しい様な。
それにしても、親子の会話ではない様な会話だった。

手術をした市民病院の主治医、工藤孝明が東京で個人医院を開業した。『ビーナス・レディースクリニック』
香澄は、大学入学後も、検査、検診、術後経過観察で月に一回、市民病院へ通っていたが、工藤から東京で開業すると言われ、
『ビーナス・レディースクリニック』開院と同時に転院した。香澄が大学3年生。工藤が42歳の男盛りの時。
工藤とは、高校3年生の夏からの付き合いで、既に7年経過。月一の診察と薬の処方、食事とホテル。たまに旅行。お小遣いあり。
「ねえ、、先生?、、、いつもこうやって患者さんに手を出してるの?」行為後のピロートーク。
「いや、出さないよ。香澄君だけだよ。」真面目な顔で工藤。
「嘘ばっかし、、、先生、モテるから、、、断れないでしょ。」
「嘘じゃないよ。それに俺はそんなにモテないし。」
「まっ、不倫だし、先生には奥さんも子供さんも居るし、、、束縛しようと思っても無理よねぇ~。」
【私には時間が無いの、、、先生、私の望みを叶えてね。いずれ頼むから、、、。】

明菜は週に1回、男物のブリーフケースにグッズを持参して、香澄の部屋を訪ねる様になった。
そのグッズは、按摩器の様なバイブレーター、双頭のシリコン製ペニス、先端がぐるぐる回るペニス型電動こけし、コンドーム。
そしてペニスパンツ。なかなかの優れもので装着側の女性器が当たる部分にはいくつもの突起物と、内側に向き挿入する為のペニスの張りぼて付き。
相手側へは反り返った大き目のペニスのシリコン製の張りぼてで、緩やかに作って有り、動くと双方に刺激が伝わる。
お手入れ用に、赤ちゃんのおしりふき、キッチンペーパー、イソジンうがい薬、プッシュ式の霧吹きはうがい薬を薄めて使う。
「使った後や次の日にはちゃんと清潔にしとくの。雑菌が湧くと嫌だから。でもね、バイブやこけしが電気だから、水洗いが怖いの。感電したらやだから、、、」と明菜が笑う。
”秀に見つかるとヤバい”と言って、毎回そのグッズは明菜が持って帰る。
「電車の中とかで、鞄が開いたら大変ね!」と揶揄《からか》うと、「大丈夫です。全部小物袋、作りました。」と明菜が自慢する。
そう言えば、一つ一つ、カラフルな袋に入っていたわと香澄は思い出した。鞄から出した時には、グッズだけに興味があったせいで見て無かったみたい。
「かわいい子ねぇ~」と明菜を抱きしめてあげる。明菜、目一杯の笑顔で喜び、キスをせがむ。そして、楽しむ。

秀のアパートへは交代の様な間隔で連絡をしないで訪ねる。秀は不機嫌になるが、SEXすると機嫌を直してくれる。
「他の子を連れこもうとしない様にって思うから、、、」と連絡しない言い訳を言うと、「しょうがねえなあ~」とにやける秀。
単純な男である。
「それでも、その子の所へ行ったり、ラブホ行ったりしたら、怒るから、、、」と明菜が釘をさす。
ある日、二人そろって秀のアパートへ行った。
「あっ~、、、何で二人いるんだ?、、、お前ら、中華屋で会ったきりじゃ無かったか?」
「あれから私、一人で行ったの。その時、明菜ちゃんから友達になってって、頼まれたから、、、」香澄が意味深な笑顔で説明。
「私、香澄さんに良い女になる為の教育を受けるの。あの時、ピンと来て、、、また来て下さったから、思い切って声掛けたの。」と明菜の照れくさそうな顔。
「は~、いつの間に、、、ま、どうでも良いけど、、、」【このコンビには、逆らえそうにないな~、、、しばらくは自粛か?】
秀の顔が苦笑いとも、残念とも言えない表情になり、香澄と明菜はそれを見て、顔を見合わせ笑い合う。
その夜は、秀は二人を相手にすることになった。
秀が一人を手や指、唇と舌で弄ぶ間、もう一人が秀の股間を攻める。
もしくは二人して秀を抑え込む。一人が秀の下半身へ、一人が秀の顔へそれぞれ下腹部をあてがう。
明菜と合体中の秀、「う~、、、イキそうだ、、、」と声が漏れる。
香澄が、秀へ「明菜へは、中出しはダメ、、、」と耳元で囁く。
「あっ、あ~」の秀の声と同時に、明菜が秀の腰から降り、秀の股間へ顔を埋める。明菜の口の中で秀、フィニッシュ。
明菜は果てた秀の物を、暫くの間愛撫し続けた後、顔を上げ口の中の物をクチュクチュと転がす。
香澄が明菜にディープキスを仕掛けた。二人の間で、明菜の口の中の物が音を立てながら行き来する。
そしておもむろに、二人して口の中の物を飲み干す。
それを見て秀。【うわっ!、、、さすがに引いたっ!、、、そこまでするか~?】二人に対して、恐怖とまではいかない威圧を感じた。
秀のアパートへは明菜一人が来る時と、二人来る時とあり、別な日は香澄のマンションへ秀が出向く日のパターンが続く。
「明菜を泣かせちゃダメ。私も泣かせちゃダメ。言う事聞いてくれたら、しっかり応援するから、、、」香澄が褒美をぶら下げる。
秀は、もう二人のテリトリーから抜け出せなくなっていた。

『西東京フィジカルクリニック』(スポーツ整形外科専門)から秀が出てくる。
先ほど主治医から言われた言葉が秀の頭の中をぐるぐるとまわる。
「子供の頃に脱臼した事で、外れやすくなっている様だ。肩の周りの筋肉を強くしてカバーするしか無いですね。」
「そんな事は分かってる。腕立て伏せやウエイトトレーニングはしてる。肩の筋肉はついてはいるが、硬い。柔らかさが無い。体質かも知れない。」
その事を香澄に話す。いや愚痴をこぼす。そうすると香澄は励ます様に、、、
「君には目標があるでしょ、関東大会の優勝と全国大会のファイナリスト。」
「その為には、良いトレーナーに着かなくちゃ。紹介してあげるよ。ジムの会費は私が出してあげる。」
「先ずは目の前の事をこなしなさい。プロテインを取って、美味しいもの食べて、トレーニングして、身体を造りましょっ!」
「私が応援するから、、、秀が活躍して、笑顔になるところ見たいから、、、」
週一でジムへ通う様になった。会費は本当に香澄が出してくれた。

明菜は明菜で、部の練習やジム通いに着いてきたり、時間が空くとゲーセンやライブ、新しいファーストフード店へと連れ回す。
「秀に悪い虫がつかない様に、見張っておくもん!」とケラケラと笑う。最初は鬱陶しくても段々と楽しくなる。気分転換には良い。
特に肩の具合がよくない今は、気分も落ち込むのだが、明菜と遊ぶと気は紛れる。
暫くすると秀、ジムでのトレーニングが苦痛になる。実際に肩の筋肉は硬いままで、筋肉痛が酷くなる。
【筋肉が硬いのは体質かな~?、、、辞め時なんだろうかな~?、、、】香澄には申し訳ないが、ジム通いをさぼり、明菜と遊びに行く様になる。
香澄には、ジムをやめたいとは言っていない。が、明菜を通して秀の行動は、香澄には筒抜けとなっている。
「辞めても良いよ、ジム。秀には合わなかったのね。ごめんね、良かれと思って薦めたのに、余計酷くしちゃったかな?」
香澄、秀が訪ねてきた夜、ジムの事について尋ねた時、秀の浮かない顔を見て、そう言った。
「ゴメン、香澄、会費まで出して貰っておいて、、、俺、やっぱっ、ダメみたい、、、」
「良いのよ、秀の夢、壊しちゃったの私のせいかも知れないし、、、」
香澄、あくまでも秀に優しく接する。まるで怒らない母親の様に。

「秀は卒業したら、何したいの?サラリーマン?」行為後、香澄が秀の胸の上で聞いてきた。
「なんだろうな~、、、まだ決めてないけど、どっかに就職出来たらそれで良いかな~って。」
「どこかの会社へ就職なら、3年生から訪問しないとダメよ。陸上部のコネ入社も2年で辞めたら無理っぽいわよ。」
「そうみたいだなあ~、、、俺、勉強そんなにしてこなかったし、得意な分野も無いし、何からしたら良いか、さっぱり分かんない、、、」
「地方公務員は?、、、4年生で受験して合格すれば卒業後に何処かへ行けるかもよ。」
「地方公務員?、、、市役所とか?あっ、警察官や消防士も地方公務員か!」
「そうそう。秀なら警察官や消防士が向いてるんじゃない?、、、市役所とかなら土木や建築とか、ガタイが良いし。」
「いや、俺、建築とか土木とかさっぱり分かんないし、、、出来るなら、消防士かな~、、、何となく。」
「うん、そうね。秀みたいにカッコよくて、大きな男の人は助けてくれたりした時に、頼りがいあるから本当に良いかもね。」
「うん、俺、目指してみるよ、消防士。……ってか、どうしたらなれるの?公務員試験?」
「3年生から民間の公務員試験講座、行ってみたら?、、、費用は出してあげるわよ。ジムの件もあるし、、、秀の事、応援したいし、、、」
「香澄、、、。いや、香澄さん、俺、甘えます。その代わり、目一杯頑張ります。こっちの方で、、、」
秀は、香澄の身体へのしかかり、今夜何度目かの行為を始めた。
【フフフ、、、秀君、離れちゃダメよ。離れたくても、離さないからね、、、覚悟しときなさい。】

4月、秀は公務員受験の為、関東アカデミー公務員講座へ毎週火曜日に行くことになった。その日は香澄と明菜の逢引の夜にもなった。
一月ぐらいした後、秀の顔が妙に、にやけてきている事に香澄は怪しんだ。
「どう?公務員講座、、、たのしい?」
「うん、面白いし楽しい。」秀の顔が薄笑い。
「誰か可愛い子でも居た?」心の中と裏腹に、穏やかに聞く香澄。
「いや、高校の同級生がいた。部のマネージャーだった奴がいた。変わって無かった。」
「付き合ってた子?」声が少し低くなった。
「全然、、、付き合いの”つ”の字も無かったし、おとなしいし、おっちょこちょいで良く失敗してたやつだよ。」
「随分嬉しそうね。」
「うん、普通で居られる、、、恋愛とかSEXとか、全くの無縁みたいに思えるかな?」
「ふ~ん、良かったね。勉強、捗《はかど》るね。」香澄、嫌な予感を押し殺す。
その後、秀の事を注意深く見たり、遠まわしにその子の事を聞いてみるが、進展は無さそうに思える香澄。
秀がその子をアパートへ連れ込まない様に、火曜日は秀のアパートへ行く事にする香澄と明菜。交代だったり、二人一緒だったり。
何か月かすると、帰りの時間が早くなった。車で送って来て貰っているらしい。窓から覗く。何事も無い事にホッとする香澄。
【途中、ラブホに寄ったり、車の中でいたしたり、帰り際のキスとかしてたら、爆発する所だったけど、、、何も無さそうね、、、何か拍子抜け。】
秀と香澄、明菜の3人のパターンは、秀の公務員試験の合格発表まで続いた。

「香澄、明菜。……すまん、別れてくれ、、、頼む。この通り、、、解消してください。」
秀の突然の土下座に、香澄と明菜は驚いた表情をした。
「何で?、、、ナゼ?、、、他に好きな人でも出来たの?、、、いつ?、、、誰?。」明菜は動揺している様な言葉。
香澄は無言のまま、秀を見つめる。
「公務員試験を一緒に受けた同級生だ、、、そいつの事、好きになった、、、一緒に居たいと思ってる。」
「いつからっ?!、最初からっ?!、、、帰りの車の中でっ?!」明菜、涙と共にうろたえる。
「まだ、手も出していない、、、付き合っていない、、、申し込んでもいない。」
「その子に振られたらどうするのっ?!、また私たちと続けるつもりなのっ?!」明菜の声が涙声に変わる。
「戻らない、、、消防士になる為に専念する。」
「……そう、前に話したマネージャーの子?、、、秀がそうしたいのなら、しょうがないわね、、、。でもね、あなたには随分応援させて貰ったのよねぇ~、、、」
「こ、これ受け取って欲しい。バイト代貯めた、、、」秀はジャケットの内ポケットから封筒を差し出す。
「ふ~ん、、、準備が良いのね。そこまで考えてたのね、、、。秀にしては良く考えた方かしら。」
「香澄さんっ!良いの?秀の事っ!」明菜、矛先は香澄に向かう。
「仕方ないでしょ、、、これが男と女よ、、、悲しいけどね、、、さ、明菜ちゃん、次、行くわよ。私に着いてくる?」
「グスっ、、、う~ん、香澄さんが良いなら、、、私もそうする、、、香澄さんに着いて行く、、、」
「秀、今までありがとね。楽しかったよ。あんたも頑張んなさいよっ!、、、消防士とその女の子との事、、、」
「す、すまない、、、ありがとう、、、本当にありがとう。」秀も、申し出を受け入れて貰って、ホッとしたのか涙ぐんできていた。

香澄と明菜、秀のアパートを後にする。
「言ってた通りになったでしょ?、明菜。」駅へと歩く途中、香澄。
「香澄さんの言ってた通りでした、、、どうしてわかったんですか?」明菜の顔も元に戻っていた。さっきの捏ねたダダは演技だった様だ。
「だって、秀って分かりやすいじゃん。あまり考えて行動してないって言うか、顔に出るって言うか。」
「確かにそうですよねぇ~、昔っから。」
「で、明菜は卒業したらどうすんの?就職、決まってるの?」
「うん、タレント事務所に入ります。先週、面接行ってきました。」
「タレント?、、、アイドルにでもなるの?」
「タレントって言ってもAVです。」
「えっ!、、、随分思い切ったわねぇ~、、、武器とか特技は何かあるの?なきゃ続けられないでしょ?」
「レズ専門です。香澄さんと一緒に研究出来ましたから、、、ウフっ!」
「あっ、そうか~、、、そっちね、、、納得。」

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