広島協奏曲 VOL.3 もののふの妻 (15) 再会
再会
「高城さん。お綺麗になられましたね、、、誰か分かりませんでした。」
由里亜と山形は木陰に座り、話し始める。
「ありがとうございます。大人になりましたからね。高校生のイモ姉ちゃんじゃ無くなりました。」
「いえいえ、あの頃も可愛い人でしたよ。クールな印象でした。今は、まともに見れないくらいお綺麗です。」
「山形さん、、、おべんちゃらも御上手になられたんですね~、、、意外~。」
「いやいや、おべんちゃらじゃありません。本当にお綺麗です。」
「ニャハ、嬉しい。頑張った甲斐がありました。デへへへへ。」
【整形した事は今は、内緒で、、、、今はって、、、次はある?、、、】
「山形さんは、今どけぇ~所属されとってんです?」由里亜、標準語から広島弁へと変わる。
「自分、今広島です。海田の駐屯地です。」
「えっ!、海田ですかっ、、、うち、今広島です。広島に帰ってきて住んどります。」
「確か、矢野でしたっけ。ご自宅は、、、帰って来たって、どちらから?」
「矢野の家はのうなりました。立ち退きで、、、高校出て東京へ行って、去年帰って来たんです。」
「そうだったんですか、、、、、今、お仕事は。」
「イベントとかの運営です。ショッピングモールとか家電量販店とかでの、携帯電話やら家電やら教材やら、、、売るんはメーカーさんとか代理店さんなんじゃけど、
会場の準備とか受付とか、来場者の整理とかは運営側でしょうるんです。その一人、、、」
「そうですか、、、じゃお休みとかは土日じゃないんですね。大変じゃ~そりゃ~。」
「そうでもないですよ。休みの日にどっか行こうか思うても、人は少ないし楽ですよ。映画とか買い物とか。」
「そうすよね。自分らも土日、関係なかったりするんで一緒すね。」
「山形さん、もうご結婚されとってんですか?」
「いえ、してません。縁が無くて。」
「お付き合い、されとる人とかは?」
「いません。」
「山形さん、連絡先交換しませんか?」由里亜、いきなりの依頼。
「え、、、、連絡先?、、、自分とですか?、、、良いすけど。自分、今携帯持って出ていないんで、、、どうしましょう。」
「へじゃ、うちの番号書きます。それで、寝る前にでも電話掛けて来て下さい。ワン切りで良いっすから。」
由里亜、受け付け用のメモ紙とボールペンを、いつも持ち歩いているのを胸ポケットから取り出し、それに番号を記入し、山形へ渡した。
「あん時、、、12年前、、、連絡先聞こうと次の日にって思うとったら、撤収で、、、ちょっと気になっとったんです。」
「そうだったんですか、、、、自分の連絡先をですか?、、、そうですか、、、初めてじゃな、こう言うの、、、なんか照れるの~、、、ハハ、ハハハ。」
当日の夜9時過ぎ、就寝、休憩用に割り当てられた教室に戻った時に、携帯の通話着信が鳴った。
『はい。もしもし。』着信に出ると、山形だった。
『山形です。夜分にすいません。今、戻りました。お休みでしたか?』
『いえ、うちもさっき終わったばっかです。』
『お疲れの所、申し訳ありません。お電話させていただきました。』
『こちらこそ、ありがとうございます。山形さんもお疲れでしょう。ゆっくりお休みになってください。』
『ありがとうございます。それではおやすみなさい。』
由里亜、予想だにしなかった急な展開にわくわくしている。
まさか、そこに山形さんがいるなんて。
昔と同じシュチュエーションで、トイレにいるなんて。
あの頃の風貌が一部を除き、あまり変わって無くて。
電話番号を渡せるとは、我ながら上出来だって。
律儀に電話してくれるなんて、素直に嬉しくて。
これからは、会いたいと思えば会えるなんて。
そして、まだ独身だった。案の定とゆうか、、、
【あれ、山形さんの事、好きになっとる?、、、惚れてもうた?、、、そうかも知んないし、、、なんかちょっと違う気もしょうるし、エッチな気が起きんし、、、恋ってそういうもん?
そういや~うちって、恋愛未経験だったか~、、、、、、、】
2週間の予定だったボランティアを終え、広島へ戻る。
山形さんとはあれから、2度くらいトイレ掃除の時に会えた。
長い時間は会えない為、今している仕事の内容とか、休みの日はどう過ごしてるとかの話だけ。
広島へ帰ってから暇さえあればLineする。という訳にはいかない。山形さんは、就寝前くらいしか携帯を触れないと言う。
でも同じ町の中にいる。駐屯地のある海田町は広島市に囲まれている街。同じ空の下にいる。それだけでも嬉しくなる自分。これまで居なかった自分。
由里亜、一日一回の一言を送ってみる事にする。
”お疲れ様。今日、うちは次のイベントの打ち合わせと備品準備でした。”
”お疲れ様。いよいよ今日からソレイユで、キャンプ道具New アイテムの販売促進イベントでした。”
”お疲れ様。今日はオフ日。一日中、ゴロゴロでした。”
【ツイッターかよ。関係あらへんがや。こんなん送られても、迷惑やろな、、、】とは思う。でも、山形さんは、、、
”お疲れ様です。イベント頑張ってください。何事も段取り八分と言います。”
”お疲れ様です。キャンプ道具ですか。自分らは出動すると毎日がキャンプの様です。グッズもたまに参考になります。”
”お疲れ様です。身体と心の休養。大切です。”
ビジネスメールで返してくる。
”お疲れ様。非番の日、教えてください。食事でも行きましょう。お話しましょう”
思い切って送ってみた。中学生かよ。と自分にツッコミを入れた。
そう言えば、中学生になったばかりの時には、もう男を知っていた。
わくわくドキドキする前に、アヘアへ、ウ~ウ~言ってた気がした。
急に顔が赤くなった。30のおばさんが、、、恥じらっている。胸が苦しくなってきた。
【あの人のどこが良いん?連れて歩いても誰からも羨ましがられんよ。……別にええし、、、見せびらかす為に、人を好きになるんじゃなあし、、、】
ふと思った。どこまで言う?自分のしてきた事、、、
中学生の頃、性に目覚め、クラスの男の子の数人と順繰りに付き合ってた。手を繋ぐんじゃのおて、おまた開いとった。
高校生の頃、広島へ遊びに行くと、誘いまくってアピール繰り返してた。お小遣いをくれる人が彼氏だった。
専門学校で東京へ行った頃、自分のレベルに愕然とし、整形をした。手と口と鉄マンで稼いだ。
LCCの地上勤務の頃、セクシー女優でAVデビューした。
さあこれからという時、過去を知っている男性に、仕事を辞めさせられた。覚悟を持って始めたのに、後悔した。
だらだらと過ごしていた頃、結局、自分の身体を切り売りし、生計を立てていた。
【別に言わんでも、ええよね、、、今の自分を見てくれりゃ、、、それで、ええんよね。】
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