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女神 (15) こいつの事、守りたい

  こいつの事、守りたい

学校からの帰り、去年の事を思い出していた雄大に、
「ねえ、雄大。うちに来ない?。昨日、クッキー焼いたんだ。かなり上手に出来たんで食べて。」と良太の誘い。
「ああ、良いよ。クッキー好きだし。……久しぶりだな、お前んち。」雄大、この時はクッキーの事しか頭に無かった。
良太は、頬が赤くなっているのを隠す様に夕日に顔を向けている。

良太の部屋。女の子の部屋になっている。壁にはモーニング娘のポスターや、ラッセンのジグソーパズル。ベッドには水色のカバー。枕はピンク。ビニールカバーの衣装ケースが三つ。ぬいぐるみが4,5個。そして、化粧台。
本棚には、「理解して!性同一性障碍」「トランスジェンダーの事」「ショービズ・the world」「ダンス・ダンス・ダンス」などの雑誌や、ニューハーフが書いたエッセイ、ジュニア文庫の恋愛小説、アイドルの写真集などが入っている。
【あれっ、大学受験とかは?、、、どうすんだ?良太は。】
机の上とかを見たが、参考書や過去問題集とかの受験用書籍が全く無い。
良太がクッキーとコーラを載せたトレーを持って部屋に入って来た。
「お待たせ。食べよ。」低い丸テーブルの上にトレーを置く。
早速、頂く。サクサクとしっとり。「美味しいな。うん。さすがだな。うちのおかんも作るが、こんなに美味くねえぞ。」
「ふふん。ありがと。作った甲斐があったわ。」
「なあ、お前、大学どうすんの?」受験に関する本が全くない事を聞いてみた。
「え、大学?、、、行かないよ。」薄笑いを浮かべて答えた良太。
「何で?、勿体ねえじゃん、、、、行かねえのか、頭、良いのに。」
「うん、、、働くの。東京で、、、」
「東京っ?……もう決まってんの?……何処?、何すんの?」雄大、急に寂しい思いが込み上げてきた。
「……ショーパブ……ステージで踊ったり、歌唄ったり、、、」
「水商売だろ。お酒が出る所だろ、、、未成年じゃん。」
「ホステスみたいな事はしないよ、踊るの……1日3回位のステージだと思う、、、多分。」
「……もうお店、決まってるのか?……大丈夫なのか?、、、そこ?」
「うん、夏休みに観に行って来た。オーディションも受けてきた。合格だって、、、そこの店、競争率が10倍くらいだったみたい、、、」
「……そんなとこ、良く見つかったな、、、」
「うん、ダンス教室のコーチの知り合いだって、お店のオーナーが、、、実はそのオーナーって人、ニューハーフなんだって、、、」
「あっ、、、自分の事と重なったのか?その人と、、、」
「……うん。その人、手術してるんだって、女の人になる為の手術。」
「……そうか、、、いずれお前もそうすんのか?、、、手術、、、」
「うん。出来ればね、、、でもお金要るし、、、たくさん貯めないと、出来ないし、、、海外に行くことになるし、、、」
「ふ~ん、、、、そうかぁ、、、東京、行くのか、、、お父さんやお母さんに話したのか?」
「うん、話した、、、心が女の子だって言うのも中学生の時、理解してくれてたし、いずれはって話したら、判ったって言ってくれた、、、」
「そうかぁ、、、良い親なんだな。俺が言うのも変だけど、、、」
「そうだね、、、半分、諦めちゃったのかな?……こんな息子の事、、、」良太、寂しそうに窓の方を向いてそう言った。

「雄大はどうすんの?進学?就職?」
「ここいら辺りで就職しようと思ってたけどなぁ~。……お前が東京に行くんなら、、、俺も行こうかなぁ、、、
 お前が一人で東京へ行くの、心配になって来た。……東京の夜って怖そうだし、、、悪い奴ら、いっぱい居そうだし、、、」
雄大、気持ちがどんどん固まって来た。【良太の事、守ってやらなくっちゃ、、、一番大切な奴、、、俺が守んなくちゃ、、、】
「あたし、大丈夫だよ。無茶しないから。雄大は雄大で、頑張りな。」
「いや、駄目だ。良太の事、放っておけない!……俺が守る!守りたい!俺も東京へ行く!」
「駄目だよ、雄大。雄大を巻き込めないよ、、、あたし自身の問題だから、、、」
「いや、決めた。俺はお前を守るっ!守りたいんだ。良太の事を。ずっと、ずっと、、、、、ずっと。」

雄大、良太との別れが具体的な形になる事に、どうしようも無いやるせなさに覆われた。

「……何で?、……何で、あたしみたいなを?、、、」
「……好きだからだっ!。ずっと、、、前から、、、お前の事が好きだからだっ!」
「え、、雄大、、、」心の奥に隠していた雄大への思い。それは良太も同じだった。
「……ありがとう、、、あたしも好きだった、、、前から、、、でもね、雄大は雄大を生きてって、、、あたしは良いから、、、」
雄大、丸テーブルの横を通り膝立ちをして、良太の肩を両手で掴んだ。良太の目をまっすぐ見据え、
「俺が勝手に行くんだ。お前の行くところへ、、、勝手に俺が、、、俺の自由だろ、、、」
「雄大、、、」「良太、、、」

【こいつの事、守りたい、、、】雄大の心は今、それ一つ。性的な興奮は表れていない。

雄大は良太を胸に抱きよせ、、、、ハグをした。良太も両手を雄大の背中へまわし抱き返す。
良太が雄大を少し押す。雄大の顔へ良太の顔が近づく。唇が合わさっていく。優しく、少し激しく、さらに激しく。
【やっぱりそうだ、、、、、良太の唇は薄く、柔らかく、蕩ける様だ、、、】昔から見ていた唇。今、自分だけのものになっている。
二人とも息苦しくなり、大きく息を吸い込み、ふ~っ、と吐く。おでことおでこをくっつけ、二人で笑う。声の出ない程度に笑う。

「……ねえ、、、雄大、、、、、、、する?」
「………お、俺、、、、どうして良いか、分かんねえ、、、、、」
「うん、、、、、任せてくれる?。」

「良太、、、あのさ、、、言っておかなくちゃいけない事があるんだ。」
「何?」
「……俺、、、真正包茎で、、、早漏で、、、もちろん、初めてで、、、」
「うん、大丈夫。」良太はそう言うと、机の引き出しから小さな箱とソース入れの様なものを取り出した。
小さな箱はコンドーム。ソース入れの様なものはローションだと言う。
「これは、珠美が着た時用。」箱から薄く四角いコンドームを幾つか取り出しながら良太が言う。
「こっちはコーチと会う時用に。」ローションをベッドの枕の横に置く。
「……あたしって浮気女だよね、、、珠美とコーチと雄大と、3人同時に好きなんて、、、」嫌悪感が少し混じったような顔の良太。
「違うと思う、良太は、、、お前の事が本当に好きな人に応えているだけだと思う。」
「雄大、、、ありがとう、、、」
良太は着ていた制服を脱ぎ始める。スポーツブラをしていた。雄大も脱ぎ始める。

二人とも裸になり、ベッドに正対する。
良太の胸は、大きくはないが膨らんでいた。形のいいおわん形って言うのだろうか?
正座した膝の向こうには良太の”もの”が、やや大きくなっていた。
「……雄大、来て、、、」良太に誘われるまま、雄大は良太の胸の中に顔を埋めた。
「良太、、、良太、、、」名前を呼びながら、良太の胸、首筋、頬、そして唇を求めた。
良太も、雄大の唇、首筋、肩、乳首、お腹を愛撫し、お互いに求め合った。

良太は雄大の”もの”を口に含みながら、手も添えて優しく愛撫する。その時、雄大の1回目の発射。
口の中の物をティッシュに取りゴミ箱へ捨てる。更に雄大の”もの”を優しくティッシュで拭く。
雄大も良太の”もの”を口に含む。手を添えて愛撫する。良太の”もの”は柔らかく、暖かい。
良太が雄大のものに、コンドームを着ける。ローションをお互いのお尻に塗る。
「あっ、、、」その時、雄大の2回目の発射。優しく雄大の物を両手で包みこむ、その中で鼓動する雄大。
フィニッシュ後、コンドームを外す。ティッシュで優しく拭き、再度コンドームを着ける。
雄大のものが良太の中に包まれてゆく。雄大の手は良太のものを優しく、優しく愛撫する。
雄大、3回目の発射。良太は優しく離れ、コンドームを外す。ティッシュで優しく拭く。
今度は雄大の中に良太が包まれていく。雄大の”もの”を良太は両手で愛撫し続け、腰も前後にゆっくりとゆっくりと動きながら、二人はほぼ同時に、フィニッシュした。

雄大の胸に顔を置く良太。良太の頭をなでる雄大。
「あたしの中にはねぇ、、、女の子の所と男の子の所があるの、、、段々と男の子が出なくなってきて、あそこも大きく硬くならなくなってきて、、、
 でもね、珠美と一緒の時は男になってるの、、、コーチの時は、男にはならないの、、、この先、あたし、、、、どうなっていくんだろう、、、、」
「……こうならなくちゃダメって言うのも、、、無いんじゃねぇの、、、、良太は良太だし、、、、」
「うふ、、、、優しいね、、、雄大は、、、」
双方の初恋の相手と結ばれた二人。

翌日の放課後、雄大は市立図書館へ向かった。
図書館にあるパソコンで、東京にある電気、電子専門学校を片っ端から調べた。
数十校ある中から[民生機器の設計と製造、修理、メンテナンス専門。東都エレテクカレッジ]を見つけ、ホームページを印刷。
その夜、榊のお父さん、お母さんに正座し頭を下げ「東京へ行かせてください。生活費はバイトして稼ぎます。お願いします。」と頼んだ。
お父さんは初め、「駄目だ。地元に残れ。お母さんの傍に居ろ。」と、取り合ってくれなかったが、1時間以上頼んだ結果、了承してくれた。

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