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泥中に咲く一輪の白い花(38)

  神頼み

休日、桜子と幸太郎、ショッピングモールへと買い物に出かけた。
モール内では、赤ちゃんを抱っこ紐で前抱っこしている若いママさん達をよく見かける。
幸太郎が目で追いかける。顔は優しく笑っている。見方によっては不審者にも見えるが。
その若いママさんと目が合うと、急に下を向く幸太郎。それを横で見る桜子。申し訳なさが湧く。消そうにも消えない思い。
【幸太郎君、子供が欲しいのよね、、、でも私は子供が宿る身体じゃないからな~。昔、帯刀に言われた「私に生きる価値など無い」し、、、
 せめて、幸太郎君は大切にしてあげる、、、SEXも好きなだけして良いし、、、情は湧くけど、好きになっちゃいけないし、、、、
 でも、、、、、、幸太郎君の願いは、叶えられるもんなら叶えてあげたい気もするし、、、、、どうしよう、姉さんに話そうか、二人で話を聞きに行こうか、、、】考えが堂々巡りする桜子。

「あ、忘れてた。」桜子、急に思い出した。
「うわっ、何ですか、急に、、、何、忘れてたんですか?」
「あ、ゴメン、急に、、、お祓い。神田明神のお祓い。そう言えば行ってなかった、、、」
「あ、そうすね、、、忘れてました、、、また来ようと言ってたんですもんね。」
「今度の休みが合う日に行ってみようか、、、邪気を祓うの、、、効果あるか知んないけど、、、」
「行きましょう。桜子さんの邪気、祓って欲しいです。なんなら、俺が受け取っても良いです。」
「ダメよ。幸太郎君が好きになった人が死んじゃったらダメじゃん。私、、、死んじゃうかも、、、」
「あ、それはダメです。絶対にダメです。すみません、、、おかしなこと、言っちゃいました。忘れてください。」
「フフフ、、、大丈夫よ。私はなんせ、疫病神だからね。神様だから、、、」
「でも、なんか、身代わりになりたいです、俺。桜子さんが生きてくれるなら、、、」
「ふ~ん、、でも私はイヤ。幸太郎君が死ぬ方がイヤ。身代わりにはさせないわ。神様なんだから、それぐらいは出来るでしょう、、、多分、きっと。」
「……俺、、、なんて言って良いのか分からないです。」
「じゃ、言わない事ね。分からない事は言わないの。」

神田明神でお祓いを受けた。
特に、変わった処は無い。衝撃が走るとか、闇が晴れるとか、光が差すとかという事も無く、正座した足が痺れただけだった。
気持ち的には落ち着いたのかもしれない。いや、変わっていない。所詮、神頼みとはこんなもの。桜子はそう感じた。

祝詞を挙げて貰ってる間、もう一人の桜子の事を考えてた。【どこ行っちゃんたんだろう、、、】

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