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女神 (26) 初めての夜

  初めての夜

【そろそろ言おうかな、、、なんて言おうか、、、いきなり?遠回し?どんなのが遠回し?、、、わかんない、、どうしよう。】
香織、落ち着かなくなってきた。ドキドキしてきた。顔も赤くなってきているみたいだ。お酒で酔っ払ってるのもあるし。
雄大、香織の顔の赤み、目の泳ぎ方、ソワソワする様子をみて、
【香織さん、、、もしかして、もしかします?……今夜、良いんですか?……俺から言った方が良ければ、、、】と思った。
〔行けっ!雄大!女に恥をかかせるなっ!男なら恥をかけ!〕天の声がした。
「香織さん、手を貸してください。」雄大、自分の手のひらを上にして、両手をこたつの上に置いた。
「……何ですか?、、、」弱弱しく香織が聞く。
「両手を貸してください。」雄大、やさしく言う。
香織は言われたまま、ドキドキしながら出された雄大の両手に手を置いた。雄大、やさしく握る。目線を香織に向ける。
雄大、す~っと鼻で息を吸いこみ、ゆっくりと吐き、「今夜、お相手して頂けますか?」
香織、ビクッとした。目を見開き雄大の目を見た。直ぐに目線を落とし、鼻で深呼吸。
「……お願いします。……初めてです。優しくしてください、、、」
「はい。優しくします。」雄大、香織の手を優しく強く握る。香織も握り返す。
「シャワー、浴びてきます。」香織にそう言われると、雄大は握った両手の力を緩めた。
香織、そっと立ち「部屋を暗くして、ベッドで待っててください、、、」と言って、シャワーへ向かう。
着ていたものを脱ぎ、肌着になった雄大、ベッドに移り部屋の明かりを常夜灯にした。
【長持ちはしないだろうけど、香織さんも初めてだと言うし、優しくしますから、、、】

香織がベッドに入って来た。ベッドに横になっている雄大の肩に手を当てその手に自分の額を寄せた。
雄大、腕を香織の頭に回し、香織を抱き寄せる。
「大丈夫です。心配いりません、、、やさしくしますから、、、」と言うと、香織は雄大の胸の上でコクリと頷いた。
雄大、上体を少し起こし、香織の顔に顔が近づけ、優しくキスをする。香織、ビクッと体が反応する。
顔を僅かに離し、改めて近づきキス。香織の口は閉じたまま。
【柔らかい、、、良太の唇に似ていると思ったけど、よく似てる、、、】
少しずつ唇を押し開く。無理しない様に押し開く。香織、少しずつ唇が開く。ゆっくりとゆっくりと。
香織の口から吐息が漏れる。雄大の顔を両手で押さえ、さらに激しくキスを求めてきた。
雄大の手が香織の体へと移る。下着は着けていない様だ。香織、触れられるたびにビクッと反応する。
優しく、あくまでも優しく雄大は香織の身体を愛撫してゆく。香織の反応が別の物に変ってゆく。
一つに重なってゆく。

どのくらい時間がたったのかわからない。
香織は雄大の腕の中で眠っている。雄大は香織の頭に手を置き、動かない様にしていた。
【香織さん、少しずつで良いですから話してください。持っている物、受け持ちます。】


翌朝、香織はキッチンでコーヒーを入れている。紙フィルターでのレギュラーコーヒーのドリップ。
「全部、100均で買ったんです、これ。豆はスーパーですけど。」
「何でも有りますよね、今、100均。でもスマホの充電ケーブルは止めといた方が良いらしいですよ。」
「何でですか?」
「直ぐ切れたり、ジャックが壊れるそうです。スマホに残骸が残る事もあるって。」
「そうですか、、、今度は気を付けます。……電気屋さんのは高いからな、、、」香織、困った顔をした。
「香織さん、お正月は実家ですか?……小田原でしたっけ?」雄大、香織の顔を見て話題を変えようとして聞いた。
「……実家、もう無いんです。……だからお正月もここです。」
「す、すみません。悪い事聞いちゃった、、、」雄大、地雷が至る所にあるなぁ~と思った。

その時、雄大のスマホが鳴る。「うわっ!」驚いた。榊のお父さんから着信だった。
『おい!、雄大。正月は帰るんだよなっ!お母さんもひかりも待ってるぞ。』
今度の正月は帰れないと伝えると、
『何で?お母さん寂しがるだろっ!ひかりも就職決まったのを祝って貰おうと待ってるのにっ!』
妹のひかりは市民病院へ看護士として就職すると言う。珠美がその病院に居るそうだ。
『そうか~、寂しいなぁ~。一緒に酒、飲めると思ったのに、しょうがねえ。5月の連休、楽しみにしとく!良いな!』
榊のお父さんがほぼ一方的に喋って、電話は終わった。

「帰んなくて良いんですか?実家。」香織が聞いてきた。
「ええ、、今年はこっちに居たいんです、、、香織さんとお正月。……ではいけませんか?」香織に聞いた、半分笑った顔で。
「私のせいですかぁ~?帰っても良いのにィ~。」香織、困った様に拗ねる。
「いや、ゴメン、ゴメン。俺がそうしたいんです。香織さんのせいではないです。ハイ。」
「……ちょっと、嬉しいです、、、」香織、にやけた顔になった。
「あの、香織さん。聞いても良いですか?、、、お父さん、お母さんの事ってゆうか実家の事。」
「……はい、、、。母は小学校の時、父は高校生の時に亡くなりました、、、」
「そうだったんですか、、、。すみません、嫌な事聞いちゃいました、、、」
「市営住宅に居たんで、もう実家は無いんです。私が高校卒業するまでは出て行くのは、待ってて貰えました。
 下田の叔父が帰ってきて良いよって言ってくれるんですけど、叔母さんと相性良くなくって、、、私。」
【俺には待っていてくれる家族が居る。実家もある。……もしかすると別の家族も待っててくれているかも知れない、、、 でも、香織さんは今、一人だ。そばに居てやりたい、、、】

年末は12月30日から、正月は1月3日まで休み。雄大は香織の部屋にずっと居た。
下着や着替え、洗面道具をリュックに詰め持参した。
「あの~、香織さん。これ、持ってきました、、、」雄大は小さな紙袋を出した。
「何ですか?」香織、袋の中を覗いて「ん?」と言う表情で箱を出してみた。
金色、銀色、赤、青、緑、黄色のモザイク模様の箱。0.02の文字。
「あっ、、、、コンドーム、、、ですか?これ。」
「そうです。やっぱり、必要かなって。」
「……気を使って貰ってすみません、、、」
二人、恥ずかしながら微笑み合う。
年末年始の休みの間、毎日いたした。昼間からいたした。夜もいたした。
【痛くない。鈍い痛みは来ない。あそこの痛みはもう無い。……良かった、、、雄大さんで良かった、、、ありがとう、雄大さん
 続けていけるかもしれない。いずれは別れるにしても、今は傍に居る事が出来る。雄大さんの相手も出来る。良かった、、、】香織、安心した。
【これから少しずつ聞いて行こうかな、、、地雷どこにあるか分からないが、少しずつ、少しずつ、、、
 少しは長持ちしてる様な気がする。挿入前に出来るだけ頑張ってるからか、香織さんも反応が良くなってる気がする。良かった、、、】と雄大。
二人の相性は良いみたいだ。頑張れ、雄大。頑張れ、香織。
怯えてる訳を理解しようと思う雄大。自分の事も少しずつ話していこうと思うが、良太の件はちょっと刺激が強すぎるかと考えていた。
何よりも、香りに笑っていて欲しいと願う。その為には面白い話を仕入れておこうと考えていた。

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