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響子と咲奈とおじさんと(32)

  春が来た。

「響子。桜を見にいかないか?」醍醐が電話を掛けてきた。
「うわっ、、、桜?、良いけど、、、何処?」着信に出たと思ったら、いきなりの誘いに押される響子。
「福島の三春。滝桜で有名らしいぞ。」醍醐の声が弾んでいる。
「福島ねぇ、、、行っても良いけど、電車?車?誰が運転するの?」少し、面倒臭さを感じながらも誘いに乗りたい気分になってきた。
「俺。車は親父の借りる。」
「え、醍醐の運転?、、、、、、大丈夫?」
「お任せください。運動神経は至って良好です。温和な性格が運転に滲み出ています。」響子、醍醐の鼻が膨らんでるのが想像できた。
「……自分で言うか、、、ちょっと不安が残るけど、、、良いわよ。っで何時行くの?」面倒臭さ、運転の不安より桜を見に行きたいのと、醍醐との距離をもう少し近づかせたいとの気持ちが響子に返事をさせた。
「明日。大学、今休みだろ。平日なら車も混まないし、人出も少ないだろうし。」醍醐のドヤ顔が見えた。
「あ、明日?、、、私に用事とかあったらとか考えなかったの?」醍醐の気配りの無さにややへこむ。
「え、予定入ってるのか?、、、別な日にしようか、、、っても、見頃が過ぎちゃうらしいんだよなぁ~」
「も~、いつもだねぇ、醍醐は、、、まっ、空いてるから良いけどね。」
【マイペースって言うか、独りよがりって言うか、、、醍醐はこういう人だよね。そこも良い所なのかもな、、、慣れないとね、、、、、、醍醐が思い切り何かに打ち込める様に、支えてやるのも面白いかもね。】

「良かったなあ、あの桜。見事だったな。」
醍醐の運転で三春の桜を見に行った帰り。響子の家の近くに停めた車の中。
「うん、綺麗だったね。1000年だったっけ、樹齢。」
「ああ、そう書いてあったな。」
「もっと他の所にも、行ってみたいな、、、」
「家族でドライブで今まで行った所とかで、もう一度行きたいとか、行った事なくて行きたいとこってあるか?」
「……うん、お父さん、いつも居なかったからドライブとか行ってない、、、たまに帰ってきたら、レストランとか遊園地とか、ネズミランドとか、、、
 学校でもみんな、家族ドライブとか自慢げに話すんだよね、、、羨ましいし、なんかちょっと悔しいし、、、性格、曲がるよね。」
「みんながみんな、行けてた訳じゃねえと思うぞ。ウソつく奴もいたし、、、」
「フフ、、そうよね~。これから色んなところに行ければ良いねぇ~」
「ああ、行こう。今の内に行こう。就職したら、激混みの時しか行けなくなるかも知んないし。」
「そうだね。今のうちよね。」
「……響子、、、俺の助手席、お前の指定席にしたい。」
「……カッコつけたつもり?、、、似合わないねぇ~、、、醍醐らしくさ、素直に言ってよ。」
「そ、そうか、、、やっぱり、駄目だったか、、、似合わねえか、、、、、じゃ~、響子。」
「じゃ~って何よ。ついでみたいに。」
「怒んなよ。そう言う細かいとこ、ツッコムなよ。」
「しょうがないじゃんっ。気になるんだもん。……もっと醍醐の事、知らないと流せないし、、」
「じゃ、付き合えよっ! 響子の事、俺ももっと知らないと、、、地雷踏まない様にしないと、、、」
「また、じゃ~って言った。もお~、、、それに地雷って言ったっ。」
「いちいちうるせえなっ。つき合うのか、つき合わないのか、どうすんだよ、響子。」
「つき合うわよ。醍醐の事、もっと知って、、、手懐けてあげるんだから。」
「……素直じゃねえなあ、、、、響子は。」
「そうよ、素直じゃないよ。捻くれてるよ。変わり者だよ、、、、こんな私を好きだって言う醍醐も、変わり者だよ。」
「……いや、、、響子は変わり者じゃない。臆病者なだけだ。そうだよな?」
「……何よ、分かった風な事言っちゃって、、、、、、こんな、、、私で良いの?、、、難しいよ。」
「響子が良いんだ。俺は、、、そう言う響子が良いんだ。」
「……やっぱ、変わり者だ、、、醍醐は。」
「お前と一緒だ。あっ、、、、響子は変わり者だけど、変わり者じゃない。……ま、どっちでもいいか。」
「うん、どっちでもいい。……だから、、、、チュウしてよ、、、、、早くしないと、気が変わっちゃうよ。」
「……、、、、、」

響子と醍醐、付き合い始めた。
相変わらず醍醐は、自分が思った事を直ぐに行動に移す。響子に相談しないでドヤ顔をする。
「ねえ、どうしたらいいと思う?」って聞くと「自分の思うようにした方が良いよ。」としか返してくれない。
「ねえ、どう思う?あれって無いよね。」と何かに不満を漏らすと、「俺にはどうしようもねえなぁ~」と言う。別に解決して欲しい訳じゃないのにと思う。
「ねえ、なんとかしてよ。」と言う時は、「可哀そうだね」って言って優しくして欲しいのに、「よし、俺、頑張る。」と無駄に張り切ってしまう。

【う~ん、、、、、醍醐の事、もっと知りたいとは思ったけど、、、、知れば知るほど、理解不能な所、あるなあ、、、】

男と女の”あるある”かも知れないが、他の人より遅く来た「アオハル」に、今二人は居る。


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