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夢を歩く #5

「アニメの仕事ができて、嬉しいなあ」
客の少ない穴場の喫茶店だった。
「……え?」
目の前にはAiko さん。数年前からお世話になっているセラピストさんだ。
「アニメの仕事ができて嬉しいなあ、って言ってみて」


ひとりで考えていても結論は出ない。困って相談することにして、ひと通り説明し終わったところだった。
困惑する私に、彼女はいたずらっぽく笑う。
Aikoさんの言葉は、私にはだいたい唐突だ。しかし、従った方がいいのも経験で知っている。なんとなく腑に落ちないけれど言ってみた。


「あにめのしごとができてうれしいな……」


呟きは、数秒経ってから、腹落ちする感覚があった。


そうだったんだ!


知らなかった。
あんなに辞める事ばかり考えていたのに。
そうか、私はアニメの仕事が好きだったんだ。
やっと分かった。
私は、アニメの仕事が、好きだったんだ……!
「だから続けてたんでしょ。文句垂れながら」
Aiko さんはこともなげに言った。
「あなたに仕事を振る人は、あなたにならできると思ってるんだよ」


そうだろうか。


そうかなあ……


単に人がいないからだけな気がするけど。
そうだといいなあ。


背中を押されて、ようやく引き受ける気になれた。



6に続く。


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