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夢を歩く #10

監督を始めてから、仕事内容が変わった。実作業を人に任せ、方針を伝えていく。
プレイヤーからマネージャーへ。
そうして俯瞰で全体を見てみると、今までの仕事の1つ1つが、全部必要なピースである事に気づく。


「私なんて、ちょっとしかやってないし」
アニメーターの口癖だと思う。私も言ったし、周りも言う。
小さく傷ついた時、とても便利に使える言葉だ。でも、それがいつの間にか自分に根を張り、巣食っていって苦しくなる。


打ち上げのスピーチで、この話をした。
「皆さんの『ちょっと』は、必要なちょっとなんです」
自分の仕事に自信がもてなくて、虚しさを感じているスタッフに届けたかった。
アニメなんてクソ面倒臭い仕事は、1人で沢山はできないのだ。誰でもちょっとしかできないのだ。そして、その「ちょっと」は、作品が必要としている「ちょっと」なのだ。
「皆さんは、作品に必要とされてこの場にいるんです」
いじけていた過去の自分へのエールでもあった。


アニメを始めて今年で20年目。
同期も後輩も先輩も次々辞めていったが、私は生き残ってしまった。
作りたい作品があるうちは、まだ辞める気になれない。女の子たちを力づける、ガールズエンパワメント作品を作りたいのだ。


私の道のりは、側から見たら順風満帆に見えるかもしれない。
でも実際には、泣き言を言いながら続けてきた。
幸運にも、私には励ましてくれる人がいた。そうでない場合もあるだろう。
その時に支えになる作品を作りたい。心が弱った時に、ふと思い出してもらえるような。
周りに頼れる人がいなくても、ひとりぼっちでも。また顔を上げられるように。諦めずに進めるように。
長い道のりを歩いて行けるように。

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