トリュフはどこへ消えた?
こんにちは。
あなたの人生のエキストラ、よくいる佐藤です。マイタケが好きです。
はじめに
私は普通の人間です。会社員です。あやしいものではありません。
思い立ったら吉日
ザリガニの記事を書いて以来、野食系のブログ、Youtubeチャンネルを見漁っている。自然のものを扱う以上、話のタネに旬があるようで、11月はトリュフを扱う方が多かった。
トリュフと言っても世界三大珍味のあれと全く同じではない。
イボセイヨウショウロという国産のキノコである。香りは少し弱めらしいが、それでも熟成させればちゃんとトリュフの香りがするらしい。
キノコ狩りというと森林に立ち入るイメージがあるが、国産トリュフはそのへんの公園で採れる(可能性がある)。それなりに人の手が入った土地のコナラ周辺の地面から顔を出すため、特別な道具なども必要ない。割った断面が特徴的なため、ほかの毒キノコと間違える可能性も高くない。
私に採れと言っているようなものではないか。
私は休日、軍手、ジップロック、カメラをリュックに入れて自転車に乗った。公園の目星はついている。
昼の公園で男1人
公園についた。
日曜日の昼下がり、家族団らん、散歩の老夫婦、何かを語り合う若者、彼らは全員知らない。
ここには金脈が眠っている(かもしれない)んだぜ?
イボセイヨウショウロが見つかりやすいとされるコナラの若木もちゃんと生えている。これはもう勝つイメージしかない。
私は両手に軍手をはめ、地面にしゃがみこんだ。
ここからは集中力の勝負である。
一心不乱に落ち葉を避け、元に戻し、また避けて、元に戻し、地面に目を凝らし続ける。ダンゴムシ、枯葉っぽい蛾、ハルクホーガンのピンバッジなどが落ち葉の下に隠れていたが気にしない。
30分を超えたころに気づいた。
……トリュフ無いよ?
公園内のそれっぽい木の根元はすべてあたった。だが見つからない。
公園内の家族連れからは距離を置かれ、老夫婦は不思議そうに眺め、若者たちはニヤニヤしながらこちらを見ている。
まあ、住宅街に囲まれた公園ならこの反応が普通か。
急に今の自分のヤバさに気づき、私は名誉ある撤退を決意した。
コンビニにて
トリュフ採集に出る以前、あるプランがあった。
トリュフはクリーム系のパスタと大変相性が良いらしい。
そして私の大好きなセブンイレブンではクリーム系パスタが結構ある。
もしもトリュフが採れたらセブンのクリーム系パスタに合わせて食べてみたい。そしてその写真をインスタとかにあげてやろう。何千円も払って高級レストランでトリュフ入りパスタを食しインスタにアップするオシャレピープルめ、ざまあみろ。
仮にトリュフが見つからなかった場合、コンビニには割と廉価なトリュフ入りパスタを置いていることがある。それはそれで採れなかったときのネタにできる。noteやTwitterに投稿して昇華しよう。
なんにせよ採れても採れなくても美味しい体験に終わるはずだった。はずだった……。
普通に近所の公園で、そこそこの知らない人がいる中で、30分以上、落ち葉をかき分けながら地面を眺めるアラサーの男性、それが今の自分であることに気づき、心が折れかけていた。
ならもうトリュフチョコでいいや。ギャグにしてお茶を濁せ。そう思ってお菓子コーナーを見たが、それすら見つからなかった。完全に心が折れた。
幼き日々を思い出すボロアパート
私は帰宅した。汚れた軍手を洗い、まったく汚れていないジップロックを収納し、まったく使わなかったカメラ(ホーガンはスマホで撮った)を部屋の定位置に戻した。コンビニで買った割高な缶コーヒーをちびちびと飲みながら昔を思い出す。
小学校最初の夏休み、皆越ようせい著『おちばのしたをのぞいてみたら』という絵本で読書感想文を書き、ものすごく褒められた。全校生徒の前で読まされたりもした。ほぼ母による作であることなど、そろそろ時効だろう。
実際にその本はかなり面白くて昆虫図鑑と一緒にぼろぼろになるまで読んだような記憶がある。実際に落ち葉をどけて生きものを探すこともよくあった。特にダンゴムシが鎧っぽいし大人しいしたくさんいるので好きだった。人生で初めての友達だったと思う。きっと今日はそんな友達との同窓会だったのだ。
あれから20年以上……三つ子の魂百までとはよく言ったもので、ためらいなく落ち葉をめくる大人になった。その下に見つけたいものが何かなど、些末な違いだろう。
ところで、ここまで読んでくださったあなた、国産トリュフがある場所こっそり教えてくれませんか?できればニヤニヤしながら見てくる若者は少ないところがいいです。
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