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スポーツにおける合法的トビ方ノススメ

こんにちは。あなたの人生のエキストラ、よくいる佐藤です。微糖派です。

はじめに

今回の記事はセンシティブな話題(ドーピング)を含みます。
また、2022年の禁止物質を参考に作成した記事です。2023年以降に読んでいるスポーツ競技者のあなたはJADAのHPなどから禁止表をご覧ください。
さらに言うと、私は何の専門家でもありません。正しくないことを書く可能性が大いにあります。鵜吞みにしないでください。

いけない欲望渦巻いてそう(調べる側目線)

言い訳は終わった。本題に移ろう。
現代スポーツの世界には多くの競技に存在する共通のルールがある。
ご存知、アンチ・ドーピングである。

ドーピングというといわゆる筋力増強剤を思い浮かべる人が多いと思う。
私の友人はボディビル競技者だが、筋骨隆々すぎて大学で(アナボリック)ステロイドというニックネームをつけられたことがある。
大学生独特の「ノリ」ではあるが、ただでさえドーピング問題についての議論が盛んなのがボディビル系コンテスト競技の世界である。マッスル北村やジュラシック木澤のようなノリでステロイド佐藤(仮名)なんて呼ばれたらたまったものではない。実際その友人も禁止薬物自体使用していない。

そして実際には、ドーピングと呼ばれる行為は多岐にわたる。
筋肉を大きくする薬、血液中の赤血球を増やす薬、脳の興奮水準を上げる薬、集中力を高める薬、それらの違反物質が検出されるのを防ぐ薬、貧血でない状態での輸血、果ては意図的な遺伝子の操作など、最後は素人目には少しSFの世界に足を踏み入れている気もする。だが、おおむね事実である。品種改良を想像すると近しいかもしれない。

また、アンチ・ドーピングの規則では検査対象となる選手自身がアンチ・ドーピング協会に居場所を提出し続けることを怠った場合や、アンチ・ドーピング違反者とスポーツの場で関わること、選手のドーピングに協力することなどドーピング行為そのもの以外にもルールが設けられている。
そのため、罰則を受ける可能性はコーチやドクターなどのサポートスタッフにもある。

ちなみに選手が居場所を提出し続けるのは抜き打ち検査を行うためだ。実際に体験した選手の話では、本当に一切の予告なしらしい……

外れたブレーキ(とそれを止める術)

ルールは破るためにある。よく聞く言葉だが、私は亡き祖父から教わった。祖父には「赤信号、皆で渡れば怖くない」という言葉も教わった。思い返すとろくでもないなあ。

卵が先か、鶏が先かという話があるが、ドーピングとアンチ・ドーピングは明確にドーピングが先だ。そりゃそうだ。

ドーピングによる初めての明確な犠牲者は1886年、競技の際に興奮剤過剰投与により死亡した自転車選手である。
(自転車競技ではその後も1956年に某有名レース参加選手の20%で覚せい剤陽性が発覚したり、1998年には大規模なドーピングスキャンダルがあったり、2012年には有名選手がドーピングを理由に永久追放されたりと、なにかとドーピングに因縁がある)

さらには古代ギリシャでも競技力向上に薬を使用していたなんて話もあるらしい、知らんけど。

一方でドーピング検査が初めて実施されたのは1960年代以降のことらしい。

検査の精度は科学の進歩とともに向上しているが、そうなればより検出されにくい物質を探すし、ルールに穴があればそこをつく。勝つためにはルールのギリギリも責めるのが常識という競技スポーツの世界では、実に自然な流れなのかもしれない。

そんな感じで、アンチ・ドーピングがルール化されて以来、ドーピングとアンチ・ドーピングのいたちごっこは続いている。

特に禁止物質は数々の議論を経て毎年変更が加えられている。このあと紹介するブツも一時は禁止物質だった。より巧妙に、分かりづらいように進化するドーピングと、それらをなるべく公平に確実に判断するために進化するアンチ・ドーピング。両者の戦いは今日まで繰り返され、これからもおそらく永く続く。

そのDrug(?)の名は

ここまではドーピングとアンチ・ドーピングについてざっくりと概要を説明してきた。ここで今回の記事を書くときに私が個人的に気になった物質、カフェインについて書かせてもらう。

あなたはコーヒーを1日にどのくらい飲むだろうか。コーヒー1杯には80〜100mg程度のカフェインが含まれている。
私は200~1000ml程度のコーヒーをほぼ毎日飲む。飲まない日は頭が重いのでカフェイン依存症の可能性がある。

カフェインはすごい。これだけありふれる物質でありながら効果がすごい。
ものの本(後述)によると、ランニングやサイクリングでは、20%~50%疲労困憊に至る時間を延長できるらしい。その効果の高さゆえに2004年までは禁止物質(競技会時のみ)に指定されていたらしい。

また、カフェインは同じ興奮薬のアンフェタミン(覚せい剤取締法の規制対象)よりもパフォーマンス向上の効果が高いらしい。
これはそれぞれの作用機序によるもので、ものすごく要約するとカフェインは特異的な領域(運動機能)へ影響を与えるものなのに対し、アンフェタミンはもっと広範囲(特に感情)へ影響を与える。

アンフェタミンをとれば強くなった気になれるが、カフェインをとれば実際に強くなれると表現すればさらにわかりやすい。

だが、結局カフェインは「日常嗜好品であるから」という理由で現在は禁止物質リストからは外され、濫用の監視対象にとどまっている。
ちなみに「馬はスターバックスに出向かない」という言い分で競馬では今も禁止されている。言い回しがおしゃれ。

錠剤?液体?

さて、カフェインを摂取する手段はコーヒーやエナジードリンクだけではない。

カフェインの錠剤は薬局で簡単に買うことができる。価格もそれほど高くない。液体よりお腹にもたまらなそうだから、運動前に飲むのにはベターな気がする。

だが考えてみてほしい。「嗜好品です」と言って錠剤を飲むのって、なんというか……怪しくないだろうか。いやいや健全ですよとは、ぱっと見言いがたい。実際それを良しとせず、「スポーツ精神に反する」とする意見もある。

でもでも、例えば仮に錠剤だけ禁止するとしても、そもそも錠剤と液体で効果はどう違うの?同じじゃない?というか摂取源が錠剤か液体化検査で判断可能なの?カフェイン自体アウトになると選手たちは嗜好品の摂取という行動を制限されることになるけどそれってどうなの?

的な感じで、カフェインという身近にあふれる物質一つとってもルールを定めて運用していくには各方向から意見をぶつけていく必要があるのだ。アンチ・ドーピングにおいて、何ひとつとして簡単なテーマはない……

(ルール上)合法的なトビ方を心得よ

「キタネェ奴らにも筋通して勝つからかっこいいんじゃねーか?大将」
名作『幽☆遊☆白書』より桑原和馬のセリフである。
それが出来る天才がスポーツの世界にも確かに存在すると思う。

だが、頂点を狙う権利は万人にあり、そこへ近づけば近づくほど勝利への執念は深くなっていく。
『幽遊白書』の「キタネェ奴ら」はスポーツの世界ではちょっとありえないレベルでヤバい金持ちがキタネェことをやっていたが、ルールの範囲内で勝利に対して意地キタネェ奴なら結構いるのだ。

スポーツで勝つ、特にオリンピックのような国際競技会やプロスポーツで勝ことで得られるものは名声だけにとどまらない。時には良くも悪くも人生を変えるほどの大金や地位が手に入ることもある。自分だけでなく家族、一族の暮らしが変わるケースもあるだろう。

そういった世界で何人もの大人が勝ちたいと本気で思ったとき、ルールで禁じられていない行為を自ら遠慮することはむしろ邪道といえる。速く走れるシューズがあればみんな履くし、速く泳げる水着があればみんな着るし、強くなれる禁止されていない物質があればみんな使うのである。

だが、それが行き過ぎるとルールからはみ出たところでズルをする人間、あるいは集団が出てくる。それを取り締まるのがアンチ・ドーピングの役割のひとつだが、素人目に見てもまだまだ仕組み、手段が発展途上であるように思う。のびしろしかないわ。

最後に

今回の記事は
公益財団法人 日本アンチ・ドーピング機構の公式HP(2022年10月閲覧)
クリス・クーパー著、西勝英訳「走る、泳ぐ、ダマす」金芳堂(2018年出版)を主に参考にした。
正直に言ってまだまだ書きたかったことがある。

あとはCreepy nutsの曲を聴きながら書いたので随所に漏れ出ているかもしれない。

多くの物事は白と黒には二分出来ない。ドーピングも引きで見れば「悪いこと」とされるが、拡大すれば公平性、利害、善悪などに折り合いをつけるための議論に溢れている。知れば知るほど言葉の歯切れは悪くなる。

ルールとしてのアンチ・ドーピングの歴史はまだ60年を少し過ぎた程度だ。
人類の技術が日々進歩している以上、今ここで完璧なルールを用意することなどどんな天才にも期待できない。
今後、より多くのアスリートにとって納得できるルールや検査体制が整備されていくことを、スポーツ愛好家の一人として願っている。

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