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年が明けたら22週



19週で破水している。


統計上、破水するとだいたい2.3日、長くても1週間以内に陣痛が来て、出産になるらしい。
そして日本では、22週以前で産まれた赤ちゃんの救命は行わない。
産まれてきたら、お母さんと家族と最期の時間を過ごす。
23週台も病院によって、治療するところとしないところと分かれるらしい。

だいたい22週-23週の赤ちゃんって、450-600gくらい。
身体も未成熟で、重い障害が残ったり、長く生きられない場合が多い。

まず、このまま妊娠を継続するかどうかの判断が問われた。
破水なので、陣痛が来なくても感染症を起こして母体が危険になる場合もある。

産婦人科の先生とも、新生児科の先生とも話した。
明日かもしれない、明後日かもしれない、今日かもしれない。
そうやって2020年が終わろうとしていた。



私は想像した。

産まれてすぐ亡くなってしまう我が子を抱く。
入院して、初めて涙が出てきた。
けれど全く実感が湧かない。ドラマを観て流す涙のようだった。

NICUに通う私。
すごく想像できた。
保育器の前で名前を呼んで、小さな窓から手を伸ばし、小さな手を握る。



やっぱりこの子は産まれてきてくれる。
そして重い障害を持つかもしれないし、どうなるかわからないけれど、とりあえず産まれてきてくれて、生きてくれる。
ただのポジティブ思考なだけかもしれないけど、どうしても絶望する未来は想像できなかった。


でもまだ22週になっていない。
今産まれても病院としては何もできない。というより対応は変わらない。
産まれる兆候もない。出血もなく、感染症もなく、赤ちゃんは元気。


年末年始ですし、ご家族で話し合われては?と一時退院の提案がされた。
どんな状況でも夫と過ごしたい。
産むことは決意していたけれど、時が過ぎないとどうしようもない。

12月30日から、1月4日まで家に帰ることにした。
もちろん、痛みがきたり出血や発熱があったらすぐに病院に行くこと。



私よりそわそわ、落ち着かない様子の夫と(一応)話し合う。
私の気持ちは変わらないし、夫も尊重してくれると思っていたから。
産まれてきてくれる(と信じている)赤ちゃんの話はたくさんした。


ベッドを動かしてもらって、寝ながらテレビが観れるように。
病院と同じ。
トイレとシャワー以外はほぼ寝たきりで過ごした。
食事は慣れない手つきで夫が作ってくれた。
今年も一緒に紅白歌合戦が観れると思わなかった。
すごく印象的な年越しだった。



1月4日、21週4日。
何も変化が起きないまま、私は再び入院する。
今度は一般産婦人科病棟へ。

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