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我が家のサンタクロースについて

 こんにちは、亀山真一です。連載が結構シリアスな嘘の話なので、今日はほっこりする嘘(?)の話をします。

 あれは確か中学1年生のクリスマスのこと。当時の僕は家族の中で誰よりも朝が早かったので、誰よりも早くサンタクロースからのプレゼントを見つけました。

 そこで僕は、ちょっとした悪戯心を起こしました。
 勉強机から英語の授業で書いたクリスマスカードを引っ張り出し、弟のプレゼントの中に忍ばせたのです。

 あとは素知らぬ顔で登校の準備をして、朝ごはんを食べていた頃に弟がドタドタ起きてきました。
「サンタさんが手紙くれた!」
 もう笑いを堪えることができませんでしたね。筆跡で母には僕がやったとバレバレだったのですぐに怒られてやりました。

 そんな僕はいつまでサンタクロースを信じていたのか。
 正直に言うと大人になるまで信じていたところがあります。自分にサンタクロースが来なくなるまでに親の所業だと断定するようなこともなかったので、悪魔の証明をするのも大変だし……。
 いや、実を言うと信じてやらねばと思っていたところもあるのです。小学生の頃にクラスメイトと「サンタはいるのか論争」をした際、全然話が噛み合っていなくて気付いたんです。

 こいつ、サンタ名義のクリスマスプレゼントしかもらっていないらしい。

 クリスマスの時期になると親からあからさまなリサーチが入り、サンタクロースから欲しいものが届く。そりゃ疑いたくもなるでしょう。
 しかし僕は親名義のプレゼントで「欲しいもの」をもらった上で、サンタからはもっとささやかなプレゼントをいただいてました。だから以下のような仮説を立てたのです。

 こいつは早くもサンタからいい子認定されなくなったためにご両親がサンタ名義のプレゼントを用意しているに違いない。
 だってサンタクロースは世界中の子供たちにプレゼントを配るから、自分を疑う子供の相手をいつまでもしてはいられない。それにあまりに高価なものは用意できないし一人一人の好みを把握するのも限界があるから、僕が本当に欲しいものは用意できなかったのだろう……みたいな?

 要するに、もし両親がわざわざプレゼントを2つも用意しているのなら、申し訳ないからサンタは信じてあげようという謎の義務感があったのです。親名義のプレゼントは僕が物欲を表に出すのが苦手だったから用意せざるを得なかったのかもしれませんし。
(欲しいものを欲しいと言えない僕は親と一緒に買い物に行って一緒に悩むしかなかったのです。かといって要らないと言うのも姉弟間で不公平が生まれるから癪だったし……)

 そんなわけで僕はサンタクロースを「信じてやる」スタンスのまま、高校3年生を最後にプレゼントをもらわなくなりました。3つ上の姉も2つ下の弟もやはり高3まででした。

 しかし、我が家にはもう一人弟がいます。すぐ下の弟と区別するため、おちびと呼びましょう。
 おちびは僕の7つ下と少し年齢が離れているので、ちょっと違う環境で育ちました。すなわち幼い頃から自由すぎる姉貴兄貴に虐げられ……可愛がられてきたのです。周りが大人ばかりで得したことも損したこともあったでしょう。

 ある年、既に社会に出てお金を稼いでいた弟がおちびのためにクリスマスプレゼントを買ってきました。(ちなみにその頃の僕は大学で演劇に明け暮れていました。弟の方が僕よりずっと大人です)
 おちびが欲しがっていたゲームソフトを得意気に母に見せると、急に母が動揺。

 なんとそのゲームはサンタクロース名義で用意していたおちびへのクリスマスプレゼントと全く同じものだったのです。
「これ、返品してきて」

 これが後に語り継がれることとなる「サンタとダダ被り事件」でした。
 それにしても母サンタ、僕にはキャラクターもののタオルとかスケジュール帳とか実用的なものばかりだったくせに、おちび一人だと気前がいいですね。(僕が物をねだらないからだし、ありがたく使わせてもらったから文句はありませんけどね!)



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