どんでん返しを期待して
こんにちは、亀山真一です。
いっぱい書きたくて3つに分けた今期のドラマ感想の「事件もの編」になります。
結果的に今期一番完成度が高かった、面白いまま走りきった印象が強いのが『警視庁アウトサイダー』です。
西島秀俊、濱田岳、上白石萌歌という組み合わせは完全に実力勝負という感じで、いわゆる若手イケメン俳優がいないのに不思議と不満はなかったんですよね。警察もヤクザもおじさんばかりで中盤誰が誰やら分からなくなったけれど「チームパンチ」程度の認識でも乗り切れました。
連続ドラマの事件もので特に大事なのが横軸と縦軸の使い方だと思います。この種のドラマには各話で解決する横軸の事件と全体を通して追いかける縦軸の事件があって、その両方が魅力的でなければなりません。本作はどちらもお見事でしたね。
横軸は演出が誰だか一目で分かるネタの使い方と意図的な間の悪さでコミカルに盛り上げながら、縦軸はシリアスに真相が気になる引っ張り方をしていました。
そして最終回、何も考えずに見ていたら「犯人は斎藤工で確定じゃん」とミスリードに引っ掛かりそうなところへ、最初の頃に指摘した感情的なめった刺しで「犯人は女かもしれない」と話していた伏線を回収するのです。
これぞミステリーって感じでした。
この縦軸と横軸に失敗したのが『Get Ready!』でしょう。
そもそも闇医者チームなので縦軸は追いかけられる側なんですが、刑事たちがただの愉快な仲間たちでなんだかよく分かりませんでした。沢村一樹さんが現れてようやく捜査本部が締まりましたが、時既に遅しって感じです。
おまけに横軸の方も日曜劇場の悪いところが全部出たくさい話ばかりで、役者がいいからまだ見ていられたけれど……途中から倍速再生に切り替えました。
キャストに関してはさすがの豪華さでしたが「天才外科医が妻夫木聡で交渉人が藤原竜也って絶対に逆だろう」と、始まる前から弟は一蹴。
あえて逆にした狙いは分かります。自身が大病を患った際に「生きてさえいれば」と語っていたところや沢村さんと取引するところは完全に藤原竜也でしたし、闇医者になる前のブッキーもちゃんとブッキーでした。とはいえ、最終回はもはや別人すぎて……この極端さも日曜劇場の悪いところでしょうね。
次に『女神の教室』について。
こちらは学園ドラマでありながら、ロースクールという舞台設定によって楽しい学校行事もキャッキャウフフな青春恋愛もなく、代わりに実務演習で1話1判例という事件ものに近い構成でした。
それ自体は興味深かったのですが、どうしても扱うネタが弱くなってしまった気がします。
横軸はおおよそ学生の理想論が着地点になってしまうし、話が進むにつれてそれどころじゃなくなった感じでした。最初の模擬裁判くらいガッツリ判例に取り組んでくれると面白いけれど、それでは学生たちの青春が完全にどこかへ行ってしまいそうで……一応「青春リーガル白書」を謳っているのだからこれ以上学生たちの人間ドラマを削るわけにもいきません。
縦軸の事件は結局刑事である松也さんがほぼ一人で担っていて、学園ドラマの中では浮いてしまい上手く引っ張れていませんでした。といって月9らしいヒロインの恋愛模様で縦軸を構成してほしいわけでもなく……正解がよく分かりません。
分からないといえば山田裕貴さんのキャラクターも謎でした。制作陣が思い付いた変人エピソードを片っ端から詰め込んだかのような一貫性のない男で、それでも役者が上手いから見ていられるんだよなと見ていたら――急に事件に首突っ込んで刺されるとか何だったんでしょうね。最終回の彼の笑顔を見て「この中で一番成長したのアオイ先生じゃない?」なんて、母と話していました。
今期おそらく一番酷かったのに、それでも目を離せなかったのが『大学病院占拠』です。作りがちゃちで、脚本もちゃちで、櫻井くんはアクションに向かなくて……でも最終的には風磨くんが全部持っていってくれました。
ミステリーのどんでん返しではなく、僕の好みにどんでん返しではまったのがこのドラマなのでしょう。だんだんコントみたいな面白さを感じてしまいました。
赤鬼と青鬼の正体が判明した時のことは前に書きましたが、紫鬼が判明した回についても語りたいです。リアルタイムでテレビにかじりつきながら、父に語っていた僕の推理はこんな感じでした。
「本命は解析班の女の子だよね。あからさまに怪しい言動は少ないけど、裏で動ける余白がいくらでもあるから。でもあの子だとみんな納得しちゃって視聴者が驚かないよね。
解析班のお兄さんの方が意外だし面白いけど、たった今櫻井くん逃走の手伝いさせられちゃったから白かな。
平山さんでも意外だけど、あの人が繋がってるとしたらむしろお偉いさんの方だろうし、捜査本部で突っ立ってるだけでまだ何もしてないんだよね。
こうなったら一番驚くのはソニンだよね……さすがにない? そんなこと分かってるよ。白洲迅以上にあり得ない。白洲迅はまだあり得るけど、もしあいつが内通者だったら激おこ案件だよ? あのポンコツが自作自演だったらひどすぎるよ?」
結果、激おこどころか大爆笑でした。やっぱりこのドラマは壮大なコントだったんですね。でも僕はコントも好きなので、最終回まで見て1つも「嘘だろ?」とは思わなかったけど「いいねえ」とは何度も言いたくなりました。
(同じく櫻井翔主演ドラマ『家族ゲーム』より。櫻井くんの口癖であると同時に忍成くんの口癖でもありました)
……と、全体的にクオリティが高かったと言った割には苦戦した作品も多かった「事件もの編」ですが、役者の力で最後まで見せてくれた作品ばかりなのも間違いありません。
ドラマ感想記事はあと2つ、終わったものから書き溜めながら最後まで楽しんでいきたいと思います。
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