偲ぶれど子守りの日々と姉弟の差

 もう少し、こちらの記事たちの流れが続く。

 母方の祖父が亡くなり、その5日後に告別式となった。
 葬儀のあれこれで僕が手伝えることはほぼないため、ここ数日は姉の子あーさんの面倒を見るのにせわしなかった。

 現在2歳5ヶ月のあーさんは、平易な言葉を使えばこちらの言っていることもほぼ理解できるし、その舌足らずな発音さえヒアリングできれば意思の疎通が図れる相手である。故に要求がストレートに飛んでくる。

「アンパンマンじしん!」

 この一言で僕は「♪も~し~自信をな~くして~」と何度でもアンパンマンの歌を歌う。

「アンパンマンけーたい!」

 ならば、同じ曲を携帯電話やタブレットで流して欲しいということになる。
 どちらにしても保育園で習ったアンパンマン体操を踊ることに変わりはないが、アカペラとBGMの差が大事らしい。

 何度か一緒に散歩もしているので、あーさんは僕が歩くのに杖が必要なことはなんとなく分かっている。
 が、家の中ではケンケン等で動き回っているので、時には二階で遊ぼうと階段の前まで連れていかれる。僕だって上れないことはないけれど、さすがによちよち上る2歳児の安全までは保証できない。仕方がないので弟に助けてもらった。

 更にこの度は斎場で、初めてあーさんの前で車椅子に乗った。予想通り興味津々で、告別式の開始直前まで僕は車椅子に乗って追いかけっこをしていた。
 すぐ隣で受付に立っている弟2人とは雲泥の差である。

 いやいや、挨拶してご芳名をいただく上の弟は接客ができる。(元店舗勤めの販売員)
 香典を受け取って中身を確認する下の弟は金勘定ができる。(まだ入社一週間だけどそう言うに相応しい職場)
 そして僕に何ができるのかと言えば、文章が書けるので父の献杯の挨拶のチェックを任された。なかなか添削しがいのある原稿だった。

「無事に葬儀を『済ませられることができました』って、可能が二重になってるじゃん。『済ませられました』か『済ませることができました』でしょう」

「故人も『さぞ感謝いたしていることと存じます』って、存じているのはお父さんだからいいけど、感謝しているのはおじいちゃんなんだから謙譲語にしたら変じゃない?」

 父は重箱の隅をつついても文句を言わないのでありがたい。まあ、だからこそ任せてくれたんだろうけど。

 そう言えば前の記事で「僕たち孫はわんわん泣こう」と書いたが、姉弟4人の中で一番涙もろいのはどうやら末の弟らしい。
 祖父が亡くなった金曜の朝、真っ先に泣き出したのも彼だった。一緒に泣きじゃくった僕はどうやらそこで出し切ったようで、納棺でも葬儀でも鼻をずるずるさせている彼を見て「え、また泣いてるの?」と驚いてしまった。

 それぞれに怒濤の日々を過ごして、じいちゃんを弔った時間であった。

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