NiziUの「配信+地上波」というビジネスモデル

デビュー日も12月2日に決まり、デビュー曲がどこまでヒットするかに注目が集まっているNiziU。その日本におけるヒット要因の分析で、Nizi Projectのオーディションのスタイルについて、これまでのプロデュース101シリーズからASAYANまで、いろんなオーディションとの比較論が展開されていますが、虹プロが成功した理由としては、「配信+地上波」というスキームが成功したことが大きいと思います。

ASAYANの時代は「地上波」のみが成功の秘訣でした。CDがたくさん売れいていて音楽番組も盛んで、まだテレビがメディアの王様にあった時代です。

一方、最近のK-POPにおけるオーディション番組ブームの象徴である「PRODUCE 101」シリーズは、韓国の財閥・CJグループのエンターテインメント部門であるCJ ENMが主催で、グループのケーブルテレビ局であるMnetで放送。日本でもCSやCATV等のMnetチャンネルで放送しましたが、地上波では流れませんでした。

AKB48のメンバーも参加した「PRODUCE48」も、企画として日本での話題性はあったと思うんですが、これまでの韓国のプデュ・シリーズと同様に放送はMnet中心で、地上波ではほとんど取り上げられませんでした。

韓国のスキームを日本に導入して行われた「PRODUCE 101 JAPAN」も、吉本興業が主催に参画し、TBSもついていたにもかかわらず、オーディションの中継はGYAO!の配信が中心で、地上波のTBSで流れたのは何故か初回のダイジェストと最終回のみ。

K-POPは根強いファン層がついておりMnet等を契約している人も多く、積極的にアクセスするので、そこから生まれたIZ*ONEやJO1はデビューから人気を集めましたが、一方でデビュー時点における世間的な広がりについては今ひとつだったように思います。(もちろん理由としては地上波がなかったことだけではなく、IZ*ONEならプデュの不正疑惑、JO1ならコロナ禍など他の要因もあったと思います。また、今後もっと露出も増えて人気が広がっていく可能性も十分あるとも思いますが。)

一方の日本での最近のオーディションとしては「ラストアイドル」がありました。バトルと呼ばれたサバイバル・オーディションの模様はテレビ朝日で放送されました。ただ、 ASAYAN地上波のの時代に比べると、地上波がもつ力が減っていることは否めなかったと思います。

そしてNizi Projectですが、オーディションの模様については、Huluでの配信を中心に、日本テレビの「スッキリ」の中のコーナーや深夜に放送した「虹のかけ橋」で地上波でも取り上げられました。まずは地上波を窓口にして関心をもってもらい「フルで見たい方ははHuluで」と配信に誘導する、という「配信+地上波」モデルをとっていました。今でも一般層へのリーチにおいては地上波に勝るメディアはないので、そこで広く網をかけて、そこから有料配信でコアなファンをつかむことに成功。デビュー時でコア層だけでなく一般層への広がりを獲得し、ヒットにつながりました。日本テレビとHuluの資本関係があったからこそ実現した施策かもしれませんが、今の時代にヒットを生み出す一つのモデルになるかもしれません。

ちなみに今年9月までやっていたBig Hitの男性グループ・オーディション「I-LAND」は、ABEMAで配信していたのでテレビ朝日がもっと取り上げるかと思いましたが、結局とりあげませんでした。主催にCJ ENMが入ってると、地上波でとりあげるのにハードルがあるんでしょうか? まぁ、ここからデビューするENHYPENは、今をときめくBTSの弟分になるわけで、日本人メンバーも入ったので、大ヒットするとは思いますが、一般層にどこまでリーチを獲得できるかは注目したいです。

地上波だけでなく「配信」があることのメリットとしては、「いつでも誰でもアクセスできる」という面もあります。アイドル・ファンの世界では「古参/新規」という概念があり、途中からファンになることに対するハードルが存在しますが、虹プロの場合は、新規にNiziUに興味をもっても、Hulu(またはYouTubeのダイジェスト版)で1時間×20話分を見れば、いつでも・今からでも古参に追いつけるわけです。口コミで虹プロをオススメされ後から見てみたらハマった〜という人も多いですが、地上波だけでなく配信があることがNiziUのファンの更なる広がりを生んだ面は大きいと思います。

今の時代、地上波だけでも、ネットだけでも、ヒットをうむのは難しいなかで、地上波が持つ「リーチを広げる力」と、配信がもつ「コア層をうむ力」という、それこそ総務省も進める「放送と通信の融合」の成功例が、虹プロジェクトだったと言えると思います。この「地上波+配信」のモデルは、今後の音楽やエンターテインメントにおけるヒットの方程式の1つになるかもしれません。

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