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世代を超えた交流の場をーはらぺこ食堂(ブラスマ委員会)代表 高田佐和子さん

 御殿場市で活動する民間ボランティア団体「ブラスマ委員会」は、市内で月に1度、「はらぺこ食堂」を開催しています。代表の高田佐和子さんは、令和4年5月に、静岡県が高根ふれあい広場(御殿場市)で開催した知事広聴「平太さんと語ろう」に登壇し、子ども食堂による地域支援について語ってくださいました。
 今回は、「はらぺこ食堂」の活動内容や活動に対する思いなどを聞かせていただきました。

・「はらぺこ食堂」Facebook


高田佐和子さん

「はらぺこ食堂」とは

 「はらぺこ食堂」は、2018年に、ひとり親家庭などの孤食を防止するとともに、様々な世代間での交流の場を提供することを目的として始められました。立ち上げの経緯について、高田さんは、生活困窮者の相談員をしていた時の経験が大きかったと語ります。「毎日、多くの方が相談に来ていて、本当にこのままで大丈夫なのだろうか、何か私たちにもできることがあるのではないか、という思いで子ども食堂を始めました。」
 現在は、高田さんを含む3人のスタッフと、約10人のボランティアを中心に、月に1度、御殿場市内で子ども食堂を開催しています。開催場所は固定しておらず、市内の公共施設やお寺の敷地を借りて開催しており、毎回、子どもから大人まで多くの人たちが訪れています。ちなみに、「ブラスマ委員会」という名前には、ぶらっと来て参加者全員がスマイルになってほしいという願いが込められています。


大切にしていること

①世代を超えた交流

 一般的に子ども食堂とは、地域住民や自治体が主体となり、無料又は低価格で子どもたちに食事を提供するコミュニティの場です。しかし、高田さんは、やり方に正解はなく、それぞれの子ども食堂に個性があって良いと考えます。「はらぺこ食堂」の特徴としては、利用者の年齢、居住地域を制限していません。その理由について、高田さんはこう語ります。「子どもに限定してしまうと、あそこに行ってる子ってお金がないらしいよ、と周りから思われてしまう可能性があります。そもそも、子ども食堂自体が困窮家庭のためのものという認識が皆さんにあると思うので、来てくれる方が何かと区別されないように、地域の方にも来ていただけるようにしています。その中に、本当に生活に困っている方がいたとしたら、その方の助けになればいいなと思っています。」
 「はらぺこ食堂」は、子どもはもちろんのこと、一緒に参加してくれている保護者や、幅広い年代のボランティアの方との世代を超えた交流が楽しめる場となっています。

畑作業の様子

②様々な体験の場

 「はらぺこ食堂」では、食事の提供だけでなく、様々な体験ができるワークショップを毎回企画しています。調理体験や工作など、内容は様々です。中には、板前さんが目の前で魚をさばいてくれたり、ビニールハウスを貸し切って、いちごやブルーベリーの収穫体験を行ったりと、普段体験できないようなものもあります。また、2021年には、専用農園である「はらぺこ農園」がオープンしたことで、地元農家さんの協力のもと、苗植えから収穫までを体験できるワークショップも行われています。
 また、市内の子ども食堂有志によって組まれた「御殿場けやきっこ応援隊」の活動でも、読み聞かせや工作、さらには動物とのふれあいなどの体験の場が提供されています。子ども食堂は、子どもたちに楽しい思い出や体験の場を提供するという大きな役割を担っていきます。

凧づくり体験の様子

③地域とのつながり

 地域の企業やボランティアとのつながりも、「はらぺこ食堂」が大切にしていることの1つです。食堂で使用する食材は、御殿場市社会福祉協議会やフードバンクふじのくに、地元企業、個人店などの寄付を受けています。2020年には、御殿場・小山フードバンク協議会が設立され、子ども食堂や困窮家庭に食料品が届けられるようになりました。また、市内の子ども食堂が共同で使える冷蔵庫と冷凍庫を御殿場市社会福祉協議会が設置するなど、地域での子ども食堂への支援の輪が広がっています。

子ども食堂専用の冷蔵庫


 さらに、地域のボランティアの方たちにとっても、「はらぺこ食堂」は大切な居場所となっています。食堂で提供される料理は、コロナ禍で活動が無くなってしまった婦人会の方が作ってくれています。「婦人会の方たちが、その日にある食材を使っていろいろと工夫しながら調理している様子を見ていると、とても良い雰囲気で活動されていて、保護者にとっても、良い交流の場になっているんじゃないかなと思います。」と、高田さんは語ります。また、高田さんは、地元農家の高齢の方から、「人生の最後にこんな楽しいことに関わらせてくれてありがとう。」と、言われたことがあるそうです。「はらぺこ食堂」の活動は、活動に関わる人たちの生きがいにもなっています。
 携わってくれる地元の方々とのつながりや優しさに、「はらぺこ食堂」は支えられているのです。

調理の様子

「はらぺこ食堂」のこれから

 「はらぺこ食堂」のこれからについて、高田さんは「欲張らず、自分たちも楽しむこと」を大切にしたいと語ります。「長続きさせるためには、あまり欲張らず、自分たちができることを地道にやっていくことが大事かなと思います。自分たちにできる範囲で、世代を超えた交流の場を提供していきたいですね。」
 これからも、子どもから高齢者まで、来てくれたすべての人々の笑顔を「はらぺこ食堂」は作り続けます。


【関連する静岡県の取組紹介】
 子どもの居場所とは、学校や家庭以外に子どもが地域で安心して過ごすことができ、無料又は低額な料金で利用できる地域の居場所です。食事の提供をする子ども食堂や、学習支援、遊び場の提供等があります。
 静岡県では、全ての子どもが安全で安心して過ごせる子どもの居場所づくりの取組を促進するため、円滑な立上げや持続的な活動に向けた支援を行っています。

県内の子どもの居場所の数の推移(単位:箇所)

〈子どもの居場所づくりの支援〉
子どもの居場所づくり応援事業
居場所立上げの働きかけ、サポーター募集・マッチング、セミナー開催等を通じて、子どもの居場所づくりをサポート。

子どもの居場所応援事業費助成
①子どもの居場所応援基金事業費助成

個人(ふるさと納税)や企業・団体からの寄附金を活用して、県が社会福祉法人静岡県社会福祉協議会に対し、「静岡県子どもの居場所応援基金」の造成費用を助成。社会福祉法人静岡県社会福祉協議会が、子どもの居場所づくりに取り組む団体へ助成。
②クラウドファンディング型子どもの居場所づくりプロジェクト事業費助成
新たなプロジェクトを公募し、採択されたプロジェクトの資金を寄附金(クラウドファンディング型ふるさと納税)により募集し、補助金として交付。


 県では、子ども食堂や学習支援等のボランティアの募集や、子どもの居場所についての相談窓口を設けています。
 詳しくは、静岡県公式ホームページをご覧ください。

※掲載している情報は取材時のものです。

(担当:駒谷)