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「るるぶ びじゅチューン!の旅」で発見したことと思ったこと(旅に出たわけではない)

サブタイトルは「びじゅチューン!って、ブラックなところもあってそこがまた好き」だw


今週月曜日、我が家にこの本が届いた。

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そして今年最初の投稿はこれだ。

「びじゅチューン!」の曲が100曲になるのを記念して、視聴者から好きな曲のリクエストを募集した特別番組についての記事だ。
この記事の中で私はこんなことを言っている。

実は私の予想では、ネットでバズった「何にでも牛乳を注ぐ女」で決まりじゃんと思っていたのだが、早くも5位で登場してしまいそれから全く予想がつかなくなった。

思えば、ネットでおもしろ動画的に評判になったその数字と、クオリティの高いイラストを付けてまでリクエストの手紙を送る「びじゅチューン!」ファンの想いは、全く別なのだと改めて認識した。
アサハカなわたくし。

しかし冒頭紹介したムック「るるぶ びじゅチューン!の旅」の井上涼さんへのインタビューページにこんな個所を見つけてしまった。

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昨年の夏の終わりの時点では、井上さんご自身が「何にでも牛乳を注ぐ女」が断トツ1位では?と予想されている。

なんだ~、私と同じじゃんwやっぱねー
と、思ったのだけれどよく考えると、「作者の意図と受け取る側には、ずれというものがあるのだなぁ」と、今さらながら思ったのでそのことを書く。

♪ ♪   ♪  ♪

Eテレの「びじゅチューン!」という番組、古今東西の美術品(絵画、彫刻、建築物、工芸品などなど)を独特の歌とアニメで楽しく紹介する5分間のミニ番組だが、るるぶとのコラボのムックまで出るほどファンが多い。

その作詞・作曲・歌・アニメーションのすべてを手掛ける井上涼さんは、「この番組を通して、少しでも美術に親しんでもらえたら」というコンセプトで作品作りをされている。

そして今年の年明けに放送された「祝100曲リクエストスペシャル」という番組では、るるぶに書かれた井上さん(と私)の予想とは異なる曲「保健室に太陽の塔」が1位を勝ち取った。

ん-?なぜ?

好きな曲へのリクエストをメールではなく「お便り」で募集したからでは?
その方法によって、井上さんとリクエストを寄せた視聴者の間で曲への想いの違いが出てきたのではないだろうか。

番組で紹介された400通を超えるお便り。飛び出す仕掛けの数ページに及ぶ絵本のようになったもの、双六に仕立てたもの、素晴らしいイラスト入りのものなどがずら―――っと並んでいた。

なぜメールでなくお便りなのか・・・井上さんによると「びじゅチューン!」のファンの方の傾向として絵を描いたり手紙を書いたりするのが好きな人が多いようで、いい機会なので思いの丈を込めてもらおうと思った・・・のだそうだ。

きっとメールや番組ホームページの投票などで「好きな曲」を募集したら、井上さんや私が予想した通り「何にでも牛乳を注ぐ女」が1位になっていたのではないだろうか?

番組をそれほど知らなくても、あらおもしろい動画があるわ、とちょっと覗いてポチっとすればいいのだから。

しかし真剣にw曲を聴いて選ぼうとすると、アイディアや曲の面白さの中に、心に刺さる部分が出てくる。
するとちょっと見の面白さやキャッチーさが先に来る曲でなく、一見地味でも、優しさが心に染みたり、励まされたり元気になれたりする曲が「自分の中のナンバーワン」になったりする。

そうなったらもうどっぷり in the「びじゅチューン!」沼だ。

今回の「お便り」でリクエストを募集するという形式に応えてハイクオリティの作品で思いの丈を込めてお便りを送った方々は、どう考えてもちょっと見の面白さで曲を選ぶ方々ではないw
「びじゅチューン!」という番組に並々ならぬ思いを持った人々がお便りを寄せたのだろう。本当に時間と手間をかけた力作揃いのお便りだったもの。

井上さんにとっても、結果は予想外だけれど嬉しいことだっただろう。

しかし、反面あくまで井上さんは、前にも書いたように「この番組を通して、少しでも美術に親しんでもらえたら」、さらに「美術に興味がない多くの人にも見てほしい」ということを念頭に置いて作品作りをされているだろう。

するとやはり、何も知らない人でもちょっと見て「おっ」と思う作品、例えば「何にでも牛乳を注ぐ女」のような作品を、多くの人が見て評価してくれるのは嬉しいことだろうと思う。

「何にでも牛乳・・・」私も衝撃(笑撃)を受けたし大好きだし、他に「ダンス寿司」や「アルルの訳あり物件」なんかはもう・・・wwwほんと、スキw
(記事の趣旨から外れるけれど、ちょっと聴いただけで頭の中にヘヴィロテして知らぬ間に我々を虜にしてしまう曲というものもびじゅチューン!には存在する)

しかし、引用記事にも書いたけれど私が一番好きな曲は「立体曼荼羅マスゲーム」という曲だ。励まされる。そして派手ではないけれど曲のつくりや伴奏、コーラスなどが本当におしゃれでかっこいい。

井上さん的には、どっちが嬉しいのだろうか?
(どっちが嬉しいって、選ぶものでもないのだけれどw)
番組や井上さんのコンセプトとすれば、やはり多くの人が面白いとみてくれる作品が、「良い作品」ということになるだろうか。

だが番組制作の意図とは別のところで、ファンは熱く盛り上がっているw

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こう書いていくと、井上涼の「びじゅチューン!」の作品は温かく優しい・・・という方向になるのだけれど、(そしてそれは間違ってはいないけれど)案外井上さんはそんなことを主眼にはしていないと思う。
もちろん作品には井上さん自身の温かさや優しさもにじみ出ているけれど、それを伝える番組ではないのだからw

案外シビアな世の中やブラックな面、ダークサイドもたくさんにじみ出ておりますがな。

家族の多様な形が表現されていて泣く、井上さんの優しさが・・・と感動を呼んだ「納涼シアタ―」についても、井上さんは「祝100曲」の中でさらりと「お金持ちと結婚したから2階を建て増しできた」と・・・w

現実的というか世俗がもろに顔を出したというかw

こちらの勝手な思い入れをしれっと躱してくる。意図的なのだろうか?

他にも例を挙げれば「お局のモナ・リザさん」で、モナ・リザさんが他の社員たちに放つセリフの数々・・・
この作品でモナ・リザさんのことを嫌いになる人はいないだろうけれど、実際に言われたとしたらマジ辛辣、かつ具体的で生々しい。どこでそんなセリフを仕入れてきたの?と聞きたくなる。

割と新しい作品「落穂拾子
「落穂拾い」は、地主が貧しい農民のために残しておいた落ち穂を農民たちが拾い集めているところを絵に描いたものだが・・・
番組では3人娘の人間関係が解説され、それによると落穂拾絵は地主と付き合っている。オトナの事情が匂うw。落穂拾美は権利の獲得に積極的だそうな。貧しい小作農として?女性として?ちょっと彼女の境遇や気持ちを考えてしまう。でもなんだ笑う。手段がラップだからかw

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好きだと言った「立体曼荼羅マスゲーム」でも、ベテラン調理師さんの苦い経験の陰にいい加減な助手の姿が見える。

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無責任な笑顔で「何にでもオッケーを出すイエスマン」w
こんなヤツいる・・・現実になるとすごく困った嫌な奴だ。

オフィーリアだって、意地で背泳ぎをしているのは恋人の残酷な仕打ち(ハムレット、ええかげんにせえよ!)だし、「アルルの訳あり物件」の不動産屋さんのお兄ちゃんは「どうなの?」なヒトだ。

他にも「貴婦人でごめユニコーン」の謝る気ゼロの貴婦人とか、「夏秋草図屏風デート」の職場恋愛する二人の喧嘩で「月曜に持ち越すと職場でも面倒/そんな打算はお見通しで余計にヒートアップ」といった、妙にリアルな心中とか書きだしたらキリがなくなってきたw

世間のダークサイドというかちょっとブラックな部分、下世話な部分も、あるがままに表現されている。

Eテレのアニメ番組=子供向け ではないのだ。
Eテレで「びじゅチューン!」をジャンル別で検索すると「アニメ・特撮」と分類されている。「キッズ」ではない。

きっと井上さんは「子供向け」には作っていないのだろう。
多くの人に美術に触れるきっかけを・・・だから彼の持つ優しさや温かさと同時に、世の中を鋭くシビアに観察したことも容赦なくぶっこんでくるのだ。

月並みだけど、「だからこそ、心に刺さるし面白い、んだよね」と思う。

でも最終的に、なんだかほんわか、忘れられない曲に仕上がっている、のは、あの歌声のせい?番組で見せるとぼけた解説のため?

なんだかんだ、まとまらないことを書き綴ってしまったけれど、「びじゅチューン!」って割とブラックな部分もあって、そこがまた好きなんだよなー、ということ。

あと井上さんに「優しい」という色を付けたり、そういう曲を期待したりするかもしれないけれど、本人はそればっかりではないと思うし、そういう色付けをさらっと躱しちゃったりしてるんじゃないの?という、これも外野の実に大きなお世話な感想。
本当に好きな人は、ちゃんとわかってるよね、そんなことw








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