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保護猫《さん》とウチの《まる》 ②

野良猫《さん》登場の巻

①はこちらから

今年の春ぐらいから、今まで見たことのない白黒の猫を家の周りでよく見かけるようになった。

我が家の周りには割と猫が多い。外回りもする飼い猫ちゃんからレギュラーの野良までラインナップはそろっている。猫好きの方はそうだと思うが、私も家の周りの猫は大体把握している。

しかしその白黒ちゃんは新顔だった。

いつの間にか見かけるようになり、気づくとレギュラー野良となっていた白黒猫。かつてお隣にいた白黒柄2匹に次いで、白黒としては3番目だったので、私は「3」と呼ぶことにした。
野良猫《さん》の爆誕である。

5月ぐらいにご近所さんとの立ち話で仕入れた情報によると、どうやら発情して甘い声でメスを求めて夜な夜な徘徊しているらしい。あちこちのご近所の庭先で堂々とくつろぐ姿もよく見た。ここで飼われているのかな、と思うほどのくつろぎぶりだった。
そしてマーキングをしていくので、どのご家庭もおしっこ臭くて困っているらしい。ふむふむ。(やっぱり野良か)

《さん》の恋のターゲットはお隣のキジトラちゃん。そして我が家にも美人女王《まる》がいる。彼女たちは避妊済みだが、それでも《さん》はやってくる。

我が家のウッドデッキもさんのマーキングでおしっこ臭くなり、何回か水洗いした。ゴシゴシ。
(洗うのは面倒だけれど、私は「猫にも生まれた場所で生きる権利はある」派なので、怒ったり追い払ったりする気は全くない。あんたも頑張ってるよね、と思う。保護されて人の元で暮らせればそれが一番ではあるけれど、猫くらいのんびり暮らせる大らかな地域でありたいとも思う)

さて、恋のターゲットになった女王《まる》である。
①でも書いたがまる様は絶対女王であらせられ、他の猫の存在を大変に嫌がられる。《さん》がウッドデッキに上がり、網戸越しにリビングをのぞき込むと、やはりまるは網戸近くにうずくまり、高く低くうなりながらさんをロックオンし続けている。女王自ら最大級の警戒警報発令だ。相手がくつろげば、辛うじてまるも少し離れたところからウッドデッキを気にしながらもくつろいでみる。そんなことが続いた。

さんは時々網戸に鼻先を押し付けて中を覗く。たちまちまるも網戸に突進し、喧嘩の鳴き声を上げながら網戸越しにバシバシと猫パンチを繰り出す。

今までも他の猫にもそうしてきた。まるの攻撃的な態度に反応して向こうもけんか腰になる。まると他の猫との関係がよくなったためしがない。

しかしさんは、網戸をはさんだ至近距離でまるがものすごい態度を取っているのに、きょとんとしている。さすがに最初の1,2回は多少反応したが、ほとんどまるの喧嘩に応じようとしない。
「あれ?僕なんか悪いことしたかな」という顔で小首なんかかしげて、いつでもご機嫌、まるへの好意を隠さない。

今までの野良君たちとは様子が違う。

まる様は振り上げたこぶしをどうしていいか分からないご様子。ぷぷぷw
なんだか中途半端に唸り声を収め、その場に座ってみちゃったりするようになった。背中の毛はちょっと逆立ったままだけれども。

そんなこんなで呑気君でお人よしの《さん》は、何となく我が家のウッドデッキに長居をすることが多くなった。

なんだかいい感じだ。

ちょうどその頃我が家には、女王《まる》様が全く食べないタイプの餌2㎏が頂き物としてあって困っていた。ほんとはダメだってわかっているけど・・・うーむ・・・白黒君にやってみるか。もったいないし。

ほんとはダメよ、うん・・・(ほら、お食べ)

私は今まで野良猫に餌をやったことはない。けれどこの時、着地点も想定しないままさんにご飯をやり始めてしまったのだ。

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最初は用心していたさんも次第に慣れ、毎日定時に現れニャーとアピールしてご飯を要求するようになった。我々が見ていても《さん》は気にせず、カリカリを夢中で食べている。

まるもさんが現れる時間になると、外をじっと見て待つようなそぶりをするようになっていた。

そのうち、私は餌をやる時にさんの頭をちょっと触れるようになった。
その頃の《さん》はがりがりに痩せ、バサバサの被毛からは白いふけみたいなのがいっぱい出ていて、きれいとはとても言い難かった。栄養状態も悪いためノミなどをはねのける体力もなさそうだった。

わー、ばっちい。
当然だが、《さん》と接触したら石鹸でよく手を洗わずにはいられなかった。

私はある日、《さん》がご飯を食べている隙に、まる用に買っておいたノミ取りの薬を《さん》の背中にちょちょいとさしてみた。
まるは脱走もしなくなり、不要となった薬は少し古くて効くかどうかわからなかったけれど、みすぼらしい《さん》を少しでも楽にしてやりたかった。

さんは毎日きちんと姿を現し、ご飯をモリモリ食べて、梅雨に入るころには毛艶もよくなり少し太った様子だった。

今年のよく降る梅雨の中でもやってきては「ゴハンチョーダイ」と言う。
その頃にはしっかり撫でられるようになっていて、ある日びしょぬれだったさんを少しでも乾かしてやろうと背中を手でごしごしした。
まるとは全く違うごわごわの毛質、撫でた手には茶色い泥水がびしっしょり付いた。

そんな風にびしょぬれでも毎日我が家に通っていたさんが、ある日突然ぱったり姿を見せなくなった。

オスだし、修行の旅に出たり他の猫とテリトリー争いもあるだろうし、野良オスらしくどこかで元気で頑張っているはずだと言い聞かせながら、心の底ではオロオロし、もし決定的な何かが分かってしまったら私は耐えられるだろうか、と考えたりした。

1週間が経っても、期待して器によそっておいたドライフードは全く減らなかった。


🐾 🐾 🐾 🐾

今回はここまで  続きます。


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