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マスクが奪った小さなもの


夕方薄暗くなるころ、日課のウォーキングから帰って来た。
いつもはもっと遅く夫と一緒に出ることが多いが、今日は私一人なので早めに出かけた。

そしてその途中、どこからともなくふわっと、甘い香りが漂ってきた。


どこに出かけるのにもマスク必須の昨今だけれど、このウォーキングだけはほぼノーマスクで出る。
私は体温発散があまりうまくできない。
そしてほとんど人通りもなく、桜が両岸から張り出した大きめの水路の両サイドそれぞれに、広い遊歩道と一方通行の車道、それに広い路肩もあるコースだからだ。

人とすれ違うこともまれだし、たまに向こうから人やワンちゃんが来たらこれも通行量の少ない車道をふらっとわたって、すれ違う時に5mほど距離を取ればいいだけのことだからだ。

今日はいつもより早いまだ明るい時間帯、たまにすれ違う人を見るとマスクをしていないのは私だけで、ちゃんと考えたうえでの行動だけれど少し気が引けるな―などと、ちょっぴり考えながら1時間ぐらい歩いて帰宅した。

そして花に水やりをし、ついでに敢えて草取りをしないでおいた畑の一隅に見事にモフモフと花盛りになったカモミールを写真に撮ろうとした。(ヘッダー画像)

その時もカモミール特有の、甘い、青リンゴのような香りに包まれたのだけれど、そのとき「あっ」と気が付いた。

今日私が、ウォーキングの途中で甘い香りを感じられたのは、花の時期、湿度の増す夕方の時間帯という条件、そして何よりマスクをしていなかったからだ。

今までもマスクなしのウォーキングだから、例年と同じように秋の金木犀や春先の梅、沈丁花など、それぞれの季節を代表する香りを楽しんでいたのだけれど、それはこちらもそろそろあの香りがどこそこのお家の庭でするはずだと意識して、「こっちからいったるでー」的に「香りハント」していたからだ。

しかしそういった季節を代表する強い香りが特徴の植物以外にも、ふと気づくとほんの数日だけ、奥ゆかしく香りを届けてくれる植物たちがいる。

そしてそれは、マスクをしての外出では気づくことはできないはずだ。

たまたま私は、人の少ない場所を人の少ない時間帯に歩けるけれど、そうでない方も多いはず。
マスク生活ゆえに奪われた、別に大したことじゃないけれど、私にとってはとても残念に思えるものについて少し考えてしまった。

たまたま今日、少し明るい時間帯に出かけて、私以外犬の散歩の方もウォーキングの方もみんなマスクをしていて、ちょっともやもやしながら帰宅したからこそ気づけたのかもしれない。


カモミールを写真に撮った後、道の途中で香ったのはきっとあの花に違いないと、急いで庭の片隅に行って深く呼吸してみた。

やはり同じ甘い香りが、さわやかに私の中に広がった。
白いモッコウバラの香りだ。

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まあ、香りハントのためにマスクしないで例のロナロナにかかって、嗅覚自体がダメになっっちゃったら元も子もないので気をつけようと思う、と、ちょっと真面目なことを書いて照れたのでしょーもない一言を付け加える。



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