見出し画像

舞空瞳が礼真琴のトロフィーワイフなら、礼真琴は舞空瞳のトロフィー部長である

トロフィーワイフというのは基本いい意味では使わないと思うが、言いたいことはこういうことなのだ。え、何?と思われるかもしれない。星組のトップスターとトップ娘役の関係性の話です。

礼真琴と舞空瞳がそろってトップになったのが2019年、もう3年になる。とはいえ筆者はつい最近、2020年からのファンなので、就任当初の雰囲気は知らない。今だって別に真の姿を知っているわけもなく、スカステや出版物で(恣意的に)与えられるものを漫然と消費しているだけだ。しかし古くからご存じの方なのかどうか、定期的に「この二人はうまくいっていないのでは?」という声が観測されるのが面白い。今のところ芸事の相性には文句のつけようがない(二人とも宝塚的な基準点を遥かに超える仕上がりを是とするプライドと根性の持ち主のために)からか、芸事以外の「コンビ愛」について不足があるように見えるようだ。礼さんが相手役の目を見ない、愛情が感じられない、冷たい、お互いもっといい相手役がいるのでは……等。こうして素面で書いてみるとすごいですね。筆者は何よりこの二人の舞台でのパフォーマンスが好きなので、実際がどうであろうと余り興味はなく、逆にすごく仲が悪かったりしたらそれはそれで燃えるな……みたいな感じではあるが、まあそんなことはないでしょうよ。足を引っ張る暇はどこにもないし、互いが互いの命綱を握って綱渡りするような緊張感のある舞台を作っている。二人は首席同士のコンビとしても知られるが、首席みたいな人って自分が好かれているかどうかなんて自意識よりも所属団体の成績が上がるほうが嬉しいものだ。ふたりはことなこ(注:コンビ名)、ふたりはプロフェッショナル。

それとは別に、礼真琴という人は忍者が育っていく麻を飛び越えて跳躍力を高めるように基本的に「叶わない壁」を劇団から設定されては血の汗を流しながら but 一見軽々とクリアしてきた印象があり(※ニワカなのですべて後追いの妄想ですが)、そういう意味では先日退団された愛月ひかるさんが自他ともに認める〈ラスボス〉だった……と見せて、実はオーラスのラスボスとして舞空瞳さんが設定されたのだと思っている。あるいは勝者のトロフィーとして。舞空瞳さんのトロフィー感と言ったらすごい。彼女は大体ショーのここぞという時に、鍛え上げた体幹と柔軟性により本当に人間ですか?みたいな難しい姿勢をビタッと決めながらセリ上がってきて、彫像じゃん……と思うと音楽の魔法で息を呑むほどなめらかに動き出す。『Ray』のオリンピアの場面での女神役も凄かった。カフェブレで中井さんが「もう本当に女神、女神そのものですね」と端的に言っていたあれ。舞空瞳は礼真琴という希代のスターが星の王を継ぐにあたり、劇団から捧げられたトロフィーなんですね。このトロフィーは気を許すとラスボス化するので、礼真琴は一層の精進を迫られ、今日もまた至高の芸を磨いている。そして伝説へ。

また逆もしかり、舞空瞳さんにとって礼真琴さんは輝けるトロフィーハズバンドなのだと思う。舞空瞳さんがタカアシガニより長い脚を伸ばしつつ礼さんに寄り添い「これが私にふさわしい男」と美しくドヤる顔は毎回観てるけど毎回実に気持ちがいい。「俺の女」&「私の男」のドヤり愛。互いの目よりも客席を見てドヤる、だって互いがトロフィーだから。これが首席コンビの愛し方。

まあでも素のお二人を見ていると、礼さんはハズバンドというより部長っぽい。『VERDAD!』で界隈を震撼させた「ノンネッコヤ事件」、韓国ドラマにはまっているという舞空瞳さんの同期の都さんが礼さんに「ノンネッコヤ(君は僕のもの)って舞空に言ってやってください」と提案したら、礼さんはハイハイと舞空さんを指で舞台中央に呼び出してプロ級のノンネッコヤを決め、崩れる舞空さんに「これで頑張れるね!」と言ったというあの事件。この最後の礼さんの「これで頑張れるね!」が味わい深い。部長すぎる。この部長がすごい2021。邦キチ映子の部長と競うくらいの部長のイデア。礼真琴は舞空瞳のトロフィー部長なんだなあ、と思いました。

仲なんてどうでもいい。駄作だろうがなんでもいい。一作でも多く礼真琴と舞空瞳のコンビを観ていたい。そういう話でした。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?