日本でBコープ認証企業になるには
1. Bコープ認証とは
Bコープ認証の基本概念
Bコープ(Benefit Corporation)認証は、社会的および環境的な面で高い基準を持つ企業に与えられる認証ラベルです。これは、従業員、消費者、地域社会、環境などの広範なステークホルダーに包括的な利益をもたらすビジネス活動を行う企業を対象としています。この認証は、アメリカの非営利団体B Labによって営利企業に対して付与され、透明性、説明責任、持続可能性、社会・環境へのパフォーマンスなどの分野でB Labの厳しい評価基準を満たした企業としての信頼性を証明します。
B Labとその役割
Bコープ認証は、2006年に設立されたNPO団体B Labによって管理されています。B Labは、資本主義社会において別のアプローチを通じてより持続可能で、社会・環境に配慮のある企業を増やすことを目指しています。B Labは世界中に支部を持ち、企業が自己申告する評価を基準化し、厳格な審査を通じて持続可能な社会構築を促進する制度としてBコープ認証を設けました。
持続可能な社会への影響
Bコープ認証は、持続可能な開発目標(SDGs)と多くの共通点を持っています。SDGsは経済、社会、環境の3領域を対象とし、Bコープ認証のB Impact Assessmentの評価項目と多くが一致します。SDGsに取り組むことは、Bコープ認証の基準を満たす可能性が高く、認証取得はSDGsの目標達成に貢献する事業を実施している可能性を示します。このことから、Bコープ認証は持続可能な社会の実現に大きく貢献するとされています。
2. Bコープ認証取得のメリット
企業イメージの向上
Bコープ認証は、企業が社会的責任を果たしているというポジティブなイメージを消費者に与えます。多くの消費者は、持続可能ではない企業よりも持続可能な企業から製品やサービスを購入する意向を持っており、社会的責任を全うしている企業に対する信頼が高まっています。そのため、Bコープ認証は売上の増加につながり、消費者からの悪印象を防ぐ効果があります。
ステークホルダーとの関係強化
Bコープ認証を取得することで、20代から30代のミレニアル世代の優秀な人材を雇用しやすくなります。認証は企業の魅力を第三者から証明し、企業の理念や姿勢に共感した優秀な人材が集まる可能性が高まります。これは、企業が持続可能なビジネスモデルを採用し、社会的責任を重視することを示すものとして、人材確保の面でメリットをもたらします。
国際認証としてのメリット
Bコープ認証を取得すると、企業の理念に沿った活動がステークホルダーに認められやすくなります。一般的な営利企業では、利益第一の圧力がある中で、社会貢献や環境の持続可能性に貢献する活動が難しいことがあります。しかし、Bコープ認証を取得することで、これらの活動が利益以外の目的であることが理解されやすく、企業が社会的価値を生み出すための活動に集中できるようになります。
3. Bコープ認証の取得条件と手順
認証の基本条件
Bコープ認証を取得するためには、以下の基本条件を満たす必要があります。
評価基準の達成
B Labが独自に作成した基準で、すべての項目で80点以上のスコアを獲得すること。評価の内容にはガバナンス、環境、コミュニティなどが含まれます。
コーポレートガバナンスの変更
企業は株主だけでなく、すべてのステークホルダーへの説明責任を負い、公益を目指す内容を法的責任として記載する必要があります。
情報公開の義務
B Labの基準に基づく企業の活動に関する情報を公開し、透明性を維持すること。
取得までのプロセス
Bコープ認証の取得プロセスは以下の通りです。
オンライン評価の実施
B Corpのウェブサイトで登録し、B Impact Assessmentツールを利用して複数の質問に回答し、達成度合いを自動で作成します。
内部努力
評価基準に満たない項目がある場合は、企業内で努力し向上させる必要があります。
申請と審査
全ての項目で80点以上のスコアを達成した後、申請を行います。根拠となる情報の提示が必要です。その後、B Labによる更なる審査と面談が行われます。
プロフィールの公開
審査に合格すると、企業の詳細なプロフィールがB Corpのウェブサイトに公開されます。
更新手順
Bコープ認証は永久ではなく、有効期限は3年です。更新手順は以下の通りです。
年会費の支払い
企業の収益に応じた年会費をB Labに納める必要があります。
再評価とレポートの提出
3年ごとにB Impact Assessmentを受け、評価を更新し、「B Impact Report」を提出し公開する必要があります。
これらのプロセスを通じて、Bコープ認証は企業が持続可能な社会に貢献する姿勢を示す重要なツールとなっています。
4. Bコープ認証取得の具体的なプロセス
認証の審査基準
Bコープ認証の審査基準には、以下の要素が含まれます。
B Impact Assessmentのスコア
B Labが提供するオンライン試験「B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)」で、200の質問のうち80点以上を獲得する必要があります。この試験は無料で受けられ、企業のコミュニティ、環境、顧客、ガバナンス、従業員の5分野におけるパフォーマンスを測定します。
取得プロセスの詳細
Bコープ認証の取得プロセスは以下のステップで構成されます:
B Impact Assessmentへの登録
まず、B Labのウェブサイトで「B Impact Assessment」に登録します。
B Impact Assessmentに回答
企業の規模や事業内容、業界、環境、地域社会に関する約200の質問に回答します。回答後、その内容を証明する書類を提出します。
スコア取得
回答が終わったら、B Impact Assessmentで80点以上のスコアを取得する必要があります。
B Labの審査
次に、B Labによる適正審査を受けます。審査は、B Impact Assessmentの結果や会社の業態、業界に基づいて行われます。
Bコーポレーション契約にサイン
審査に合格したら、Bコーポレーション契約にサインします。
B Corp認証の取得
最終的に、B Corpの宣言書に署名し、契約書を作成し、B Labに認定料を支払って認証を取得します。
申請のためのノウハウと手間
Bコープ認証の取得プロセスは、一見して多くの工程が含まれており、複雑に見えるかもしれませんが、各ステップを確実に進めれば、特に複雑なことはありません。しかし、日本語に対応していないため、申請は英語かスペイン語で行う必要があります。また、企業によってはB Impact Assessmentの質問内容に適応するための内部の努力や変更が必要になる場合があります。審査プロセス全体で6~10ヶ月ほどかかることもあり、計画的に取り組む必要があります。
これらの詳細を踏まえると、Bコープ認証は持続可能な経営と社会的責任を重視する企業にとって重要なステップであると言えます。
5. 日本におけるBコープ認証の現状と課題
Bコープ認証企業の数と特徴
2023年12月現在、日本でBコープ認証を取得している企業は36社です。Bコープ認証は、企業が社会的、環境的責任を果たしていることを証明するもので、様々な業種や規模の企業に取得されています。特に、サステナビリティへの影響が明確なBtoC企業やアパレル業界の関心が高い傾向があります。また、コンサル会社がBコープ認証を取得する例も多く見られます。これは、サステナビリティ領域での企業支援を行う際、自社が実践していることの説得力を高めるためです。
取得のメリットと課題
Bコープ認証の主なメリットは、企業のイメージ向上、ステークホルダーとの理解が得やすくなること、そして取引先の信頼が得られやすいことです。これによりビジネスチャンスの拡大や優秀な人材の確保、ESG投資を行う機関投資家からの資金調達が容易になる可能性があります。
しかしながら、大企業にとっては取得が難しい面があると指摘されています。大企業はサプライチェーンなどのビジネス方向性を変更する必要があるため、取得までのプロセスが複雑で時間がかかります。また、大企業は必ずしもBコープ認証にメリットを感じられない場合があり、体制を転換するのが難しいという課題もあります。さらに、認証の取得準備から申請までの時間も企業によって大きく異なり、すでにB Corpのような行動をしている企業は申請が容易ですが、改善が必要な企業では半年以上かかる場合もあります。
6. 日本のBコープ認証企業事例
企業の紹介
日本では、2023年12月時点で36社がBコープ認証を取得しています。この認証は、企業が社会的、環境的な責任を果たしていることを示すものです。企業のカテゴリーは多岐にわたり、例えば「エコリング」「シグマクシス」「mayunowa」「ファーメンステーション」「オシンテック」などがあります。
企業の取り組みと成果
Bコープ認証を取得する企業は、社会的責任と環境的持続可能性を重視しています。例えば、クラダシは食品ロス削減に取り組んでおり、ライフイズテックは中学・高校生向けのIT・プログラミング教育サービスを提供しています。これらの企業は、Bコープ認証を通じて、社会的インパクトが明確に定義され、客観的な視点で語ることができるようになりました。
また、バリュエンスホールディングス株式会社はリユース事業を行い、限られた資源の循環を目指しています。2022年8月にBコープ認証申請を行い、現在審査中です。
インタビュー記事
各Bコープ認証企業のインタビュー記事には、それぞれの企業の取得の思いや企業文化が反映されています。例えば、「シルクウェーブ」「石井造園」「日産通信」などの企業がインタビューされており、それぞれの企業の独自の取り組みや考え方が紹介されています。