見出し画像

不安を隠す学生の様

 私が住んでいる町はいわゆる学園都市というやつで、大学を中心に町が発展してきた。そして、住んでいる人々も当然のように大学生が多い。近所のスーパー、コンビニ、居酒屋、いたるところで学生の姿を見る。

 今が夏休みの期間だからだろうか?彼らはとてもうるさい。

 よくそんな大きな声で、大きな動きで、他人の迷惑も考えずにふるまえるな、と感心する。私はおとなしくジメッとした人間であるためそういうものには縁がない。

 今日も今日とて、スーパーに買い物に行くと学生のグループがお酒のコーナーの横ではしゃいでいた。

 そのはしゃぎ様を私は、白々しいなと。

****

 はしゃいでる姿は楽しそうに見える。だが、それは無理に盛り上げているように感じてしまう。

 もしかしたら、陰気な私が知らないだけなのかもしれない。

 それでも、無理に大きな声で、無理に大きく笑い、無理に大きな動きをしているようにしか見えない。何かを恐れているようで、それを必死に見ないようにと嘘をついているように感じる。

 ただ、私の思い込みだと思いたい。

****

 思えば、大学生というのは不安定な存在だ。親から離れて一人暮らし。新たな土地で独りぼっちの生活を送る。それは心細い。友達ができるかどうかの思いもあるだろう。

 なまじ、社会性を身につけつつあるため、心の不安定さには耐えられず生きにくい。

 故に、感じた白々しさは虚勢なのだろう。

 猫が毛を逆立てるように、犬がやかましく咆えるように。ただただ、自身のグラついた心を無理やりに安定させる。外へのアピールとともに。

****

 太宰治のエッセイに次のものがある。

学生とは、社会のどの部分にも属しているものではありません。また、属してはならないものであると考えます。...(省略)...老成の社会人になりきることは学生にとって、恐ろしい堕落であります。学生自らの罪ではないのでしょう。きっと誰かに、そう仕向けられているのでしょう。だから私は不憫だと言うのであります。
引用:太宰治著 心の王者

 本来、学生は不安定な存在で、だからこそ無理に強がる必要もないはずだ。逆に、揺れ動く自分の心をまっすぐ見つめられないことがかわいそうで仕方ない。

 いつか自身の心に気づいてほしいと思いながら、私はレジに向かうのです。

----

最後まで読んでいただきありがとうございます。
もし、良ければRTやシェアをして頂くと非常にうれしく思います。
あなたはこの作品を読んでどう感じますか?
教えて頂けるとうれしいです。

ここを見ているということは最後まで読んで頂けたんですね!ありがとうございます。 サポートしていただいた分は他の方のnoteや参考資料そして生活費に使わせていただきます。