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おたねさんちの童話集 「カササギの傘」

カササギの傘
 
 シロクロ二色のカササギたちは、なんでもシロクロつけたがる。何でもかんでも、シロクロつけて、他の誰かを責めたがる。ネチネチイチイチ、細かい事を、シロクロつけて責め立てる。ゴカイ間違い関係なしに、とにかく誰かの悪口ばかり。だから、ミ~ンナ離れていって、ぽつんと小さくカササギの群れ。
 それでも、誰かが責め立てる。あいつが悪いと責め立てる。だから、ミ~ンナ離れていって、みんながみんなぽつんと一羽。それでもミ~ンナいないのに、やっぱり誰かのせいにする。
 空から見ていた神様が、可愛そうにと声をかけた。カササギの群れをミ~ンナ集めて、小さな力を与えてくれた。カササギの群れをミ~ンナ集めて、小さな仕事を与えてくれた。
 小さな仕事は糸つむぎ。頑張るみんなの心から、かすかに出ている綿毛の光。それを集める力こそ、カササギたちの貰ったチカラ。カササギたちは喜んで、精一杯に働いた。あんまり精一杯だから、誰かを責めることもない。誰かの悪口出てこない。それよりも、見えてくるのが頑張る姿。みんなの、みんなの頑張る姿。カササギたちは、感謝して、もっといっぱい頑張った。
 希望の綿や幸せの綿。それらを紡いで糸にする。
キレイな色の糸にする。機を織るのはお姫様。
キレイなお空のお姫様。お空で見ている神様に、使って頂く大事な布を織姫様は織っていく。
 キレイな心はキレイな綿を作り出す。
 キレイな綿はキレイな糸を作り出す。
 キレイな糸はキレイな布を作り出す。
 カササギたちは探し出す。
 キレイな心を探し出す。
 空から見ている神様が、みんなの為に使う布。誰かの心をなぐさめて、誰かの心を温める。カササギたちは喜んで、今日もお空を飛び回る。
 最初の頃は、そうだった。最初はちゃんと探していた。けれども、ずっとは難しい。いつの間にやら、疲れてきちゃう。だって、そうでしょ!そうだもん!キレイな心が見つからない。どれほどキレイな綿に見えても、やっぱりどこかが汚れている。
 一瞬キレイに思えても、どこかサビしい綿もある。どんなのキレイに思えても、とっても悲しい綿もある。汚れていても、そのなかに、とってもキレイな綿もある。
 カササギたちは、選び出す。いろんな綿のキレイな部分。それだけ選んで糸つむぎ。カササギたちは糸つむぎ。セッセセッセと糸つむぎ。一生懸命頑張った糸。誰かのために頑張った糸。家族みんなの幸せの糸。
 だけど、やっぱり足りません。どんなにセッセとつむいでも、ゼンゼン時間が足りません。
 お空で見ている神様に、大事な布を渡すのは、七月七日と決まっている。彦星様の牛車に載せて、大事な布を渡すのは、七月七日と決まってる。けれども、ゼンゼン進まない。
 キレイな心の持ち主は、どうしてこんなに少ないの?カササギたちは、探している。キレイな心を探してる。けれども、なかなか見つからない。見つからないから増えました。汚れた糸が増えました。
 織姫様にはわかります。汚れた糸はわかります。キレイな糸のキレイな部分、それだけ使って布を織ります。汚れた糸は山のよう。まるでボクらの心のように、汚れた糸は山のよう。
 カササギたちは反省をして、キレイな心を探しています。どれほど時間が迫っても、織姫様は、使いません。キレイな糸しか使いません。キレイな糸を選んでは、セッセセッセと織っています。
 織姫様を見ていたら、カササギたちは泣き出した。
もっと僕たち頑張らないと、そう思ったら涙が出てきた。
 キレイな涙が降り注ぐ。汚れた糸に降り注ぐ。カササギたちの流した涙、糸の汚れを流していった。カササギたちは糸つむぎ。キレイになった糸くずと、もう一度叩いて綿にして、今度はキレイに糸になれ。
 それでも、なかなか集まりません。キレイな糸は集まりません。もう七月になったのに、まだまだ糸は足りません。カササギたちは懸命に、セッセセッセと探しています。頑張る心や、幸せの心、誰かを思う優しい心。東の山へも、西の海へも、見渡す限りの平原も、北の森へも、南の砂漠も、世界の果てまで飛び回る。
それでも、糸が足りません。
 織姫様は、待ってくれる。ぼくらの帰りを待ってくれる。一番時間を気にしてるのに、ずっとニコニコ待ってくれる。カササギたちは、泣き顔のまま、とにかく頑張る。飛び回る。ついに明日は七月七日。けれども、やっぱり足りないみたい。カササギたちは、倒れ込む。もう体力の限界だ。もうあと少しが踏ん張れない。織姫様はニコニコと、もうあと少しと励ましてくれた。カササギたちは、飛び立った。最後の力で飛び立った。最後の力で飛び立って、最後の力で糸つむぎ。それでも僅かに足りないみたい。カササギたちは、それぞれに泣きそうな顔を見合わせた。キレイな綿が咲いていた。
 カササギたちの背中から、キレイな綿が咲いていた。
 精一杯に頑張った、キレイな綿が咲いていた。キレイな綿を糸にして、織姫様に手渡した。織姫様も喜んで、精一杯に布を織る。
 七月七日の夕暮れは、街に短冊あふれてる。
みんなの願いがあふれてる。赤や黄色の短冊が、ゆらゆら夕日にゆられても、織姫様は布を織る。セッセセッセと布を織る。
 最後の最後の最後まで、織姫様は布を織る。
 真っ赤なお日様沈む頃、やっと全部が仕上がった。
 真っ赤なお日様消えた頃、けれども雨が降ってきた。ぽつりぽつりと降ってきた。お空の星は見えないけれど、織姫様は歩き出す。彦星様の牛車に乗せて、お空の神様のところまで、織姫様は歩き出す。
 カササギたちは飛び出した。大事な布が濡れないように!織姫様が濡れないように!みんなで大きな傘になる。まるでお空の橋のよう、お空の神様のところまで、長い長~い傘になる。
 お空の神様は雲の上、キレイな明るい星空の中。そこまで続く長い傘。天の川より、もっと遠くへ伸びる傘。赤青黄色の短冊が、空からキレイに見えるよう、シロクロ二色の長い傘。みんなのキレイな願い事、空からキレイに見えるよう、シロクロ二色の長い傘。

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