見出し画像

詩  その6 (17編)

地平線の向こうまで
 
がらくたのような
自転車を
精一杯に整備して
遠くへと
走りだそう

地平線が見えるような
広野を
一心に走りぬけよう

登山のように
険しい峠を
立ちこぎをして
進もむ

天辺を通り過ぎたら
ジェットコースター
地平生まで続く坂を
一気に駆け下りよう

あの町へ
ゴールしたら
いったいなにが
僕を待っているだろう

あの部屋へ
帰ったならば
誰が僕を
待っていてくれるだろう

旅の終わりは
目的地に
着いたときに
やってくる
それまでの
道のりこそが
宝物
本当の旅

がらくたのような
自転車を
精一杯に整備して
遠くへと
走りだそう
 
 
 
おとぎばなしを
 
こもりうたを
うたうかわりに

おとぎばなしを
きかせよう

おとうさんの
少年時代よりも
おかあさんの
少女時代よりも

もっと
むかしの
おとぎばなし

おじいさんや
おばあさんが

おじいさんや
おばあさんの

おとうさんや
おかあさんに

おしえてもらった
おとぎばなし

おとうさんや
おかあさんが

おじいさんや
おばあさんに
おしえてもらった
おとぎばなし

あなたに
もし
おとこのこや
おなのこが
うまれたなら
きかせてほしい

おとぎばなしを
きかせよう
 
 

 
なれない
 
恋をしたときのような
素晴らしい
詩人には
もう
なれないよ

誰かに伝えたい
思いを

僕は
どれだけ
もっているんだろう

両親や家族への
感謝の思い
子供たちへ伝えたい
希望や記憶の断片

その時々の
心に
伴っていた
感動やあこがれが
時の流れに
削られて
消えていきそうだ

カメラひとつ
肩から
ぶらさげて

ひさしぶりに
小さな感動を
探しに行こうか
 

 
 
橋の下で
 
潮風の向こう
長い橋が伸びている
いつか
あの橋をわたって
どんな町へ
出かけようか

戦争のたびに
真っ先に
壊されてゆく
いくつもの橋たちは
平和と共に蘇ってきた

あの町への
あこがれや希望が
多くの橋を
蘇らせてきた

国の名を
叫び続けても
損得や勝ち負けや
言葉や歴史しか
見つからないよ

でも
誰かの
暮らす
精一杯の
生きているかを
思い描いたら
また
橋を架けたくならないか

世界中の
さまざまな町から
いろいろな町へ

今日も
橋が
架けられていくだろう
 
 
 
 
 
 
真っ赤っか
 
見ていたよと
声を掛けられると
真っ赤になる

誰も見ていないと
諦めていた
辛抱や苦労は
なおさらに
赤くなる

失敗や過ちは
人口に膾炙して
瞬く間に
広がるけれど

当たり前のことを
当たり前に続けてきても
誰も
そんなには
見ていない
……はず

だから
見ていたよと
声を掛けられると
真っ赤になる

恥ずかしくて
逃げ出したくなる

そうして

両の眼が
真っ赤になって
逃げ出したくなる
 
 
宝物
 
宝物をみつけたら
いったい
なにに
つかおうか?

宝物は
探すことしか
考えないけれど
みつかった
そのあとに
僕らは
大きな
責任をもつ

黙ってすてたら
不法投棄に
持ち続けたら
莫大な維持費

お金に換えても
つまらない

ただ
見つけた瞬間を
夢に描いている

宝物をみつけたら
いったい
なにに
つかおうか

君の笑顔も宝物
その瞬間が宝物

失うことのない
宝物

今日は
どんな宝物を
見つけようか
 
 
 
手のひら
 
圧倒されるほど
小さな手のひらが
僕の人差し指を
握りしめる

この子の人生を
最後まで
見届けたいなどと
悲しいことは
願えないけれど

いつか
この私の背中の
小ささに
気付くまでは
見届けていたいと
願う

その小さな手のひらも
これから
多くのものを
握りしめてゆくことだろう

もしかしたら
その手のひらに
あるものが
私の思い描く
ものじゃない
かもしれない
貴方の思い描く
ものじゃない
かもしれない

それでも
きっと
神様が
あなたの
手のひらに
握らせて
くれている

だから
いつか
この私の
背中の
小ささに
気付くまで
見守り続けたいと
願っている
 
 
 
寄生虫
 
心に住みついた
寄生虫が
もこもこと
うごめいている

誰かの言葉や行いが
素直に心に届かない

誰かの心の
悲痛な叫びや
恥ずかしそうな
笑顔にも

なかなか
共鳴できないでいる

しかたがないと
寄生虫の声に
耳を傾けようとしたけれど

蚊の泣くような声は
聞き取れないので
やっかいだ

心に住みついた
寄生虫が
もこもこと
うごめいて

自分の心さえも
見失いそうに
なって

自分の言葉や行動にさえ
自信を持てなくなってきた

駆除した方がいいのかな
共存の道を探ろうか

どんなに
小さな物音だって
しっかりと拾う
マイクを
とりつけて

今日は
寄生虫の声に
耳を傾けようか
 
 
 
 
明日の朝
 
あの年の6月19日
僕は16歳だった
高校二年生
親元を離れての寮生活だった

いつものように
布団へはいり
いつものように
眠りについた



起きてから
病院へ向かったのは
耳の病気で
通院していたから
耳なのに
どうして
点滴を打つんだろう
そんなことを考えていたら
うとうとして
眠りかけた
「起きろ!!」
目の前に
寮の幹事さんがいた

「お前のお父さん、なくなったらしいぞ」

持病もなく
前日まで元気だったそうだ
眠っている間に
心臓が止まったらしい
父は46歳だった

兄貴と二人
電車に乗って
慌てて姫路の実家へ
戻った

子供の頃からの
父の思い出を
かき集めるようにして
思いだし

……これからの人生

そんなことを真剣に
考えた

その日から
次の朝
目覚めるかどうか
不安になった

毎日が
ぶらぶらと
考えているようで
何も考えない
空洞の日々

あれから
20余年
今でも
6月19日

布団に入ると
不安に思う

明日の朝

僕は
きっと
今年も
目が覚めたことに
感謝しているだろう
 
 
 
 
父の日
 
小学校で描いてくれた
似顔絵
僕に似てるかな?

父の日のプレゼント

子供のように眺めては
また
封筒にもどしてる

「子供みたい」
お父さんのとなりで
お母さんは
笑っているけど

こんな子供みたいに
頼りのない
お父さんの横で
お母さんは
いつもいつも
笑ってくれる
 
本当に
ありがとう

あと
5年
あと
10年もすれば

子供たちは
思春期を迎え
恋をして

お父さんを
煙たがって

泣いたり笑ったり
するんだろな

お父さんは
お母さんの隣で

おろおろと
迷ったり
悩んだり

時にはきつく叱ったり
本気できれて怒ったり

だけど
赤い糸でくくられた
誰かのおうちへ
届けるまで

精一杯
お母さんと二人

お前達を
まもりたい

お前達のために
生きていきたいと

願っている
 
 
 
 
 
ありのままの風景
 
心に映る日差しは
眩しくなるほど
黒い影がさす

あなたの心の
闇が深いのは
すこし
太陽にあたりすぎた
せいかなのも

この地球の表面だって
暑いところ
寒いところ
雨の日だって
晴天だって
一年中
氷の溶けない場所だってある

心の部屋に
エアコンをつけて
心の南極の氷を溶かしても
環境破壊が進むだけ

心に映る
ありのままの風景は
本当の
幸せの景色
心のアンテナに触れる
いやなことも
うれしいことも

この星にすむ
全ての人は
一人ひとり
輝きながら
きっと
幸せの景色を
探している

きっと
そんな
誰かの
幸せの
景色と
重なったり
影になった部分を
照らしてもらったり
そんなことを
くりかえしながら
 
あなたの
幸せの景色も
もっと
もっと
きれいに
なっていくのかも
 
 
 
日曜日の午後に
 
部屋で
ゴロゴロしていたら
家内が
掃除機で押しのける
袖の汚れも醤油のシミも
毎日
洗濯ありがとう

独身時代の
僕の部屋から
想像もできないほど
片付いているのは
全部が全部
家内のおかげ

毎日
誰かに
叱られたり
嫌なことに
であったり
心の汚れを
忘れられるのは
騒がしい子供たちの
おかげかな

神様が
出会わせてくれた
家族や幸せに
感謝をしよう

毎日のご飯が
美味しいのも
やっぱり家族のお陰かな
嫌いな誰かと食事をしても
場違いなレストランで
カチカチになっても
あんまり美味しくないもんね

家族で
同じ空気をすって
お金に換えることの出来ない
いつもの会話を楽しんで
同じ夢をみてゆこう

時々
角がはえるときも
喧嘩して
ベソをかくときも

犬も食べない
喧嘩のあとも
冷戦のあとの
ベルリンの壁も

慌てて病院へ走る夜も
看病につかれて
眠い朝も

両手を挙げて
同じポーズで
ウルサイ鼾が
響く部屋も
ごめんなさいや
ありがとうの
後に見せた
はにかんだ笑顔も

同じ時間
同じ景色
同じ音声
同じ匂い

いろんなものを
共有しながら
 
 
 
 
 
紅灯の夜
 
言い出せなかった
過ちを
誰かに聞いてほしい夜
誰かに言い訳したい夜
ほんとは
誰かに
あやまりたくて
霞がかった細い月をみる

紅灯の街
ふらふらになって
公園のベンチ
頬を覆った両の掌

誰かを傷つけた言葉
誰かに傷つけられた言葉

ぐるりぐるりと
後悔が
足下を揺らしていく

ハリネズミのように
偽りの言葉を
全身に纏い
傷つくのを恐れて
誰かを傷つけている

素直な言葉一つ
選ぶことが
どうしてこんなに難しいんだろう

紅灯の街
ふらふらになって
公園のベンチ
ぬるいビールを
頭からかぶって

潰れてしまう前に
必死で
帰る道を探している
 
 
 
 
 
 
祭りのあと
 
祭のあとの静けさが
夕焼け雲に溶けてゆく

ゆ~らりゆらりと
雲の上
ぽか~んと穴があいたよう

心にピーンと張り詰めた
糸の余韻は
生ぬるい風

テールランプが一列に
ぞろぞろぞろと帰ってく

楽しかったことばかり
家族やみんなに
話すけれど

嫌な話や虚しいことは
いったい
どこに捨てようか
 
 
 
 
ああ 寝苦しい!!
 
眠い眠い眠い……
暑い!
眠い眠い眠い……
暑い!

鼾が相当ヒドイらしい
そんなの
寝ててわからんわ

全身がベトベトで
寝苦しい

寝返りする子供たちに
ひっぱたかれる

たばこ臭い
酒臭いと
子供らに嫌われる日が
きっともうすぐ
くるんだろな

眠い眠い眠い……
暑い!
眠い眠い眠い……
暑い!

ありがとう……
ありがとう……
と心の中でつぶやきながら
ねむりつくつもりが
朝までつぶやいていそうな
気分

だけど
このウルサイ寝息と
突き出てくる
何本もの
足や手が

明日の支えになってるんだろな
 
 
 
 
 
今日の日に
 
私の命が
明日の朝
消えるのならば
今日の日に
いったい
何を残そうか

貴方の命が
明日の朝
消えるのならば
今日の日に
いったい
何を話そうか

あいつの命が
明日の朝
消えるのならば
今日の日に
いったい
何を呑まそうか

私の街が
明日の朝
消えるのならば
今日の日に
いったい
何処へ
逃げようか

私の国が
明日の朝
消えるのならば
今日の日に
いったい
何を
持ちだそう

私の星が
明日の朝
消えるのならば
今日の日に
いったい
何を
守ろうか

私の暮らし
明日の朝
消えることなど
考えず
今日の日は
もうすぐ
消えてゆく
 
 
 
 
頭上の器
 
世界中
至る所に降り注いでる
幸せの雨を
うけるため

きっとぼくらの頭上には
大きな器がついている

ぼくのはどんな色かなぁ?
幸せの雨が流れるたびに
キラキラ光る器がいいな

たくさん雨が入るように
口はしっかり広いのかなぁ?

たくさん雨がためられるよう
底はしっかり深いのかなぁ?

立派に見えて
水漏れしてる
そんな器じゃないよねぇ

蒸発したり
ゴミが入ったり
そんなことがないように
しっかりとした
蓋もほしいよね

幸せの雨は
世界中
至る所に
降り注いでる
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?