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詩 その5 (20編)

道しるべ
 
お前たちが
これから歩む
世界

決して
輝いては
いないかもしれない
暗闇を
さまようような
人生で
終わってしまう
かもしれない

お前たちが
どんな道を
歩もうとも
喜びや
幸せを
感じ取れる力

それを
培ってゆけるために
私は
何を残せるだろう

お前たちの
確かな
道しるべを
しっかりと
刻みつける
ために

お父さんや
お母さんは
きっと
毎日を
生きている
 
 
 
難しい
 
世界中の
人々は
きっと
活字に
綴られた
結果をみて
今日を
生きる

音や文字になった
完成品をみて
今日を
生きる

それまでの
努力や課程が
どれほど
大切であるか
という説教を
幾度となく
耳にした

想像することは
難しい

理解することは
もっと
難しい

始めから
終わりまで
悟ることは
遙かに
難しい

世界中の人々が
計算した数式
夢見た風景
想像した世界
挫折
絶望
 
理解をしようと
思うだけで
恐ろしくなる
 
 
  

 
僕が積んだ
徳の量

僕が出会った
幸運の量

僕が傷つけた
他人の
心の量

そういったものを
真剣に考えれば
考えるほど

日々の
暮らしが
場違いなほど
申し訳なくて
もったいなくて
 
ただただ
毎日の
全部が
全部
幸福の雨に
思えてくる
 
 
 
 
 
心にウソの
 
知らない人と
すれ違うよりも

ほんの少し
顔を知っているような人と
すれ違うとき
ボクは
背筋を
伸ばす

鎧やイガで
覆うほどの
宝物など
持ち合わせていないのに

心にウソの
覆いを纏い

僕は
歩いている
 
 
 
 

 
窓ふきをすると
向こう面の汚ればかり
みえてくる

何度こすっても
消えないから
反対側へ廻ってみたら
やっぱり
見えてくるのは
向こう側のよごればかり

だから僕は
何度も両面を往復して
気の済むまで磨き続ける

いくつものドアを
くぐるたびに
その窓を磨いた
誰かのことを
想像しよう

歩むべき道に
塵をみつけることが
なかったら
掃いてくれた
誰かを
想像しよう

そうしないと
もしかしたら
 
ぼくは
誰からも
必要とされない
人間になる
かもしれない

不安になる
 
 
 
 
 幸せな食卓
 
私は
食いしん坊だから
夕食のメニューが
気になる
家内が
台所に立っていると
ついつい
のぞきたくなる

でも
私は知っている
味の決め手が
料理の腕じゃないことを
 
私は
知っている
味の決め手が
食材で
決まらないことを

味の決めては、
いつ、どこで食べているのか
誰と食べているのか

嫌いな上司の隣で
料理と一緒に
言葉まで飲み込む一夜
暗い部屋でひとり
テレビを相手に
鍋を突く一夜
心に夢見る
幸せの風景は
きっと
そんな
風景じゃない

だから
今日も
私は
食卓で
笑い転げる
子供達の姿を
想像しながら
台所に立つ
家内の手元
包丁に
刻まれていく
大根を
のぞき込んでる
 
 

神様までの道のり
 
遠い昔
神様が
人間を
つくられてから

僕の祖先は
いったい
どうやって
暮らして
きただろう
 
いったい
何人の
祖先が
存在しただろう

幸せに過ごした
時間が 
どれだけ
あったろう
過ちを
犯した
砂の数
誰かを
殺めた
波の数
苦しみの重さ
ハッとするような
驚き

誰かを
愛おしみ
育て
傷ついて
病気になり
仕事の
重さに
耐えきれなくなり
傷つけられ
泣きつかれ
笑い飛ばし
鼻で笑われ

とにかく
僕にまで
命を繋いで
下さった

息子や
娘たちの
ささいな出来事に
笑い転げたり
怒って
本を
投げ飛ばしたり
しながら

今まで
命を
繋いでくださった
祖先の方々の
とてつもなく
たくさんの顔を
想像して
 

僕は
思いっきり
背筋を
伸ばしている
 
 
 
 
 
傷つけている
 
出会う人
一人ひとりの
名前の
向こう側にある
あまたの物語

書類一枚の
数字の行間にある
幾筋の汗や血

それら
一つ一つの言葉を
辿っていくと
きっと
僕は
運命という
河に合流してゆく
何千、何万という
人々に出会うだろう

でも

僕は
その存在さえも
気付かないままに
心ない言葉で

今日も
誰かを
傷つけている
 
 
 
 
 
僕は今日も夢をみる (2009.5.16)
(10年以上も前に、なんで僕はこんな詩を書いたんだろう)
 
世界中の人々が
一斉にマスクをつけて
歩く午後

空の上から
神様は
何を見てるのだろう

世界中の人々が
戦争に怯えて
眠れない夜

宇宙の闇から
神様を
何を発するのだろう

この世界には
毎日
新しい病気が
生まれ
新しいはずの命が
消えていってる

競争に勝てない者たちは
誰かの欠点を探して
安心する

幸せをつかめない者たちは
誰かの幸せを奪おうとして
傷ついてゆく

競争に勝った者たちは
幸せをつかんだはずの者たちは
失うことを恐れて
孤独を彷徨う

この世界で
僕は
今日も夢を見る
毎晩
夜になると
夢を見る

誰かの夢
明日の夢
怖い夢
悲しい夢
不可解な夢
そうして
時には笑い出して
遠い記憶を探しにいく
 
 
 
 
 
 
懸命に
 

欠伸をした
瞬間に
命と闘う
人がいる

子供を抱いた
瞬間にも
火事を消そうと
ホースを向ける
人がいる

グースカ
鼾をかいている間中
難病の手術に
向き合う
人がいる


こうして
心ない言葉を
綴っている間にも
縣命に
働く
誰かの
おかげで

僕は
生きることが
できる

加速し続ける
時間の
流れの中
僕は
縣命に
生きているか
 
 
 
 
 
ゴミ出し
 
朝から
ゴミ出し
家内に
言われて
ゴミ出し

そのうち
私も……と、
怯えながら
ゴミ出し

偶には
片付けなさいと
子供たちと
一緒に
叱られるから
ゴミ出し

週二回の
ゴミ出し

朝から言った
ブツブツの
数だけ
心のゴミは
たまっていく

さて、
どこに
心のゴミを
出せばいいのか

その前に
どうやって掃除しよう

家内は
手伝ってくれるかな
 
 
 
 
素晴らしい人間
 
素晴らしい人間に
なりたいと
思っている
「よい子よい子」と
褒められて
嬉しくなかった
子供は
いないはず

でも
僕らは
間違いを
犯す

会社の為と
いって
誰かの
幸せを
かすめていないか

会社の為だと
いって
家族を
犠牲にして
いないか

家族の為と
いって
周囲の人を
困らせて
いないか

国のためと
いって
誰かを
殺めていないか

社会のためといって
秩序のためといって

素晴らしい人間になる
努力を
忘れていないか
 
 
 
 
 
人を見たら
 
人を見たら
人を見たら

いったい僕らは
どう思えば
いいんだろう

どろぼう?
友人?

今の時期なら
インフルエンザ

いつも
僕らは
自分たちを
守るために

いろんな
尺度で
警戒したり
理解したり
勝手に
こうだと
決めつけたり

でも
これだけは
決めつけても
いいだろう

あの人も
この人も

出会う人は
みんな
仕合わせを
願っている
 
 
 
 
 
 
記憶のアルバム
 
心に描く
幸せは
きっと
誰も
それほど
変わりはしない

誰かが
僕の幸せを
願ってくれたら
それが
僕のしあわせ
じゃないかな

誰かの
幸せを
願える
自分がいたら
それが
僕のしあわせじゃ
ないかな

この世界は
嫌なことの
連続
いつも
心重く
なっていく

でも
心に残る
記憶のアルバムは
なぜか
みんな
幸せのページで
今日も
綴られる
 
 
 
 
 
 
 
生まれた日
 
僕が生まれた日
この世界は
どうだったろう
僕が生まれた日
父や母は
どうしてたろう

家内が
生まれた日
この世界は
静かだったろうか
家内が
生まれた日
義父や義母は
どうしてたろう

父や母が
生まれた日
義父や義母が
生まれた日
その日の
風景は
美しかったろうか

子供の生まれた日を
一人ひとり
記憶していく

父や母に
なるとき
その日の
写真とともに
あなたたちへ
伝えよう
 
 
 
 
世界の一片
 
いじめに悩む
子供たちの世界と
複雑な
国際問題に
大きな差異はない

ちょうど
この世界中の
どの一片
どの海や山や空を
掬い上げても
科学の理論や真理が
詰まっているように
人間社会の
どんな人間関係を
掬い上げても
国際社会の
様々な問題を
はらんでいる

自ら命を
絶つ人々が
抱える問題と
人類全体が
抱える問題を
考えて
ゆけは
ゆくほど
とてつもなく
恐ろしい
 
 
 

 
泥海のような
 
祈りを
捧げるとき
真実が
どれほど
存在するだろう

惰性や義務感
よそ事を
考えている
時間
自分勝手な
願望
とりあえず
挙げる
周囲の名前

真剣に
祈りを捧げる
理由に出会った
ほんの僅かな時間
その時にしか
捧げない
真剣な祈り
果たして
真実なのだという
自信も
もてない

それでも
きっと
神様は
泥沼のような
祈りの中に
両の手
両の足を
つっこんで

ちょうど砂金を
探し出すように

僕らの真実を
掬い上げて
くだされている
 
 
 

 
 
流れゆく命の中
 
父や母の
少年時代を
僕らは
知らない

祖父や祖母の
子供の頃を
僕らは
知らない

家内の
僕と出会う前
大切な友人の
僕と出会う前

知らない世界に
おんぶされて
知らない物語に
抱っこされて

僕は生きている

今朝
口に入れた
お豆さんの一生も
小魚の一生も
鶏の一生も

知らないまま
僕は
生きている

我が子の将来を
僕は知らない

彼らの子供たちの未来も
僕は知らない

昨晩交換した
古い乾電池の行く先も
今朝出した
生ゴミの行き先も

そうして
僕が生きている間に
思ったり
話したりした
書いたり
行ったりした

点在する一瞬の
ひとつひとつが

子供やその子供たちの
未来に
どれほど大きく
関わってゆくかも

広大な宇宙の
流れゆく命の中

僕は
何も
知らない
 
 

 
詩人
 
どんな詩だったろう
子供の頃
詩人は
魔法使いに
思えた

千里眼や顕微鏡
水晶の玉に
魔法の杖を
もっている

僕には見えない
景色が見えて
僕には聞こえない
歌が聞こえる

詩人は
そんな人に
思えてみえた

ほかにも
そんな人が
存在したら
どうしよう

誰かが僕の
心の中を
覗いていたら
どうしよう

大きくなって
詩を
書き始めて

偉大な詩人たちの
想像力に
驚かされる

凜とした響きに
怯んでしまう

だけど
言葉のひとつひとつ


僕はどれだけ
信じているか

ウソや虚飾や想像が
混じっていると
感じていないか

僕の
言葉や行いに
ウソや虚飾や想像が
混じっているから

きっと
僕の
感動や幸せにも
ウソや虚飾や想像が
混じっている
 
 
 
 
いろんな道を
 
いろんな道を
散歩したいと
思うとき
僕は
幸せに
満ちている

反対に
寂しさを
紛らわそうと
歩き出してゆけば
いつのまにか
いつもの道を
辿っている

だから
無理矢理にでも
違う道を
歩こうとして
僕は
もっと
孤独に
なってゆく

幸せな
気分になって
世界中の
あちらこちらを
歩いてみたい

市場も
屋台も
雑踏も
湖畔も
滝も
名刹も
繁華街も
路地裏も

工事現場も
畑の中も
夜景も
朝焼けも
森林も
大海原も
絶壁も

世界中の
幸せな風景を
眺めながら
 
 

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