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新しいことの強さ

ビギナーズラック

はじめてで不慣れなことって、様子や加減がわからないから、トライアンドエラーでいろいろやってみて、もちろん失敗もするけれど、いろいろやったからこそドカンとうまくいくこともあったりするよな……という印象。そういうのが「ビギナーズラック」ということなのでは、と思うのだ。

はじめて出した商業出版本『猫のいる家に帰りたい』(辰巳出版)は、全然勝手がわからずに、考えながら、悔やみながら、いろいろとやってみた結果、割とすぐに重版がかかって、(比較対象がないため)割と「そういうものかな……」と思っていた……が、全然「そういうもの」ではなかった。幸運だったのだ。

その後、出した『これから猫を飼う人に伝えたい11のこと』は『猫のいる家に帰りたい』のことを踏まえて、いろいろできたのに、あまり芳しくない。
さらに言えば、『これから猫を飼う人に伝えたい11のこと』は、自費制作した私家版『これから猫を飼う人に伝えたい10のこと』の商業出版版で、『これから猫を飼う人に伝えたい10のこと』は、計2,000部刷っていて、もう手元にもない。絶版である。
これもはじめての自費制作本だから、幸運だったのだ。

昨年、はじめて「QJWeb」で原稿を書かせていただいたのだけれど、そのときも最初に書いた保護猫えんちゃんの記事が割と多くの人に読んでいただけて、ウィークリーランキングで1位になったりして、(比較対象がないため)割と「そういうものかな……」と思っていたが、全然「そういうもの」ではなかった。幸運だったのだ。
その後、書かせていただいた記事は、最初ほど振るわなかった印象がある。

せっかくだから読んでね!
検索: 仁尾智 - QJWeb クイック・ジャパン ウェブ

はじめて作った仁尾智短歌集『三十一筆箋 −猫−』は、現在2,000部刷っている。これもはじめてで幸運だったから、だとすると、いま作っている第2弾『三十一筆箋 −猫猫−』の行く末が恐ろしい。
要するに「新しいことは、強い」ということと「前例ほど当てにならないものはない」ということなんだと思っている。

せっかくだから手にとってみてね!

コーダ(特にネタバレはないはず)

つい先日観に行った映画「コーダ あいのうた」がアカデミー賞作品賞を受賞した。
そういう前評判の高い作品だと全然知らずに観に行ったので、びっくりした。……というか、この映画については、ほとんどなんの情報も知らずに、予告とあらすじだけで気になって観に行ったのだ。
アカデミー賞を獲ったので、いろんな情報がTwitterなどで流れてきて、そのつど「ええ⁉」「おお! なるほど」と楽しめた。
まず驚いたのが、主人公の家族である両親と兄が全員実際にろう者の俳優さんだったこと。それを知ってびっくりしたんだけど、びっくりしたあとに「なんでびっくりしたんだろう?」と我に返った。それは全然びっくりするようなことじゃないよな……。
そして、それを知ったからといって、(僕の中の)作品の価値は変わらない。上にも下にも変わっちゃいけない、と思った。
もちろん、そのキャスティングにはすごく社会的に意義があることなのだと思うし、素晴らしいことだけれど、それと作品や役者さんの素晴らしさとは別の話だよな。少なくとも僕の気持ちの中では、作品の外のことと作品自体のこととを一緒にして、評価が変わるようでは嘘だよな、と思った。
あと、映画の最初って制作会社? 配給会社? よくわからないけど、なんか必ず洒落た短いムービーとともにロゴが出てくるじゃん(あれ、好き)。それが「あれ? 英語じゃないな……。これ、どこの映画? フランス映画だっけ?」となったんだけど、劇中は英語で、結局よくわかんないな……となっていたのだけれど、フランス映画「エール!」のリメイク版なのね。なるほど。

……で、この「コーダ あいのうた」はApple TVで配信されていた作品を、日本では劇場でも上映した、ということらしい。劇場で観られてよかった。Apple TVが配信元ということは、将来的にもNetflixでもアマプラでも配信されないってこと(?)だから、ぜひ劇場へ!

幸せとは

割と、こういうことだ。ここで息子さんがお気に入りと言ってくれている短歌はこれ。自作の中ではちょっと異質な感じの短歌で、チョイスも渋くて、うれしい。

《のどが鳴る楽器をなでる 一流のネコナディストになる春の夜》


そんなそんな。