見出し画像

不妊治療のはなし②~不妊治療と転職~

こんにちは、ながつまさゆみです。

前回、不妊治療が必要だという事が発覚するまでについて書きましたが、
実はクリニックの初診を受けるとほぼ同時期に、私は転職するかしないかの決断を迫られていました。
今日はその時のことについてお話ししたいと思います。

前回の話はこちら↓

キャリアアドバイザーをしながら感じていた課題

私が2017年からキャリアアドバイザーとして働いていた会社は
人々に「はたらく」を自分のものにする力を
というミッション/バリューを掲げていました。

私はこのミッションに非常に共感していて、どんな人でも多様な価値観に触れる機会を平等に受け取ることが出来、自分の意思で自分のキャリアを選べる、そういう世の中を実現していきたいという思いがありました。

ただ、キャリアに関わる仕事をしていると、根本はもっと早い段階、社会に出る前から自分のキャリアを自分で選び取るための考え方や知識を持っていないと、社会人になってからではなかなか軌道修正が難しいと感じる場面が多々あります。

もちろん新しいことを始めるのに遅すぎるということはありませんし、これからは人生100年時代。一個人が働く期間の方が企業の寿命よりも長いと言われている現代では、1人1人が時代の変化に合わせて自身の働き方や身に付けるスキルをアップデートしながら変革し続ける必要があると言われていますます。

ただ、現実の転職市場においては「中途採用」=「即戦力」であり、いくら独学や職業訓練校で勉強していても、実務経験がない人、目に留まるような実績を前職にて残せていない人を積極的に採用しようという企業は多くありません。
逆に未経験の方でも積極的に採用しますよ!という企業は採用に困っている何かしらの問題がある可能性があります。(一概には言えませんが…)

また、今は学歴はあまり関係ないと言われていますが、一方で未だに学歴をある程度重視している企業があることも事実で、「高卒」というだけで応募出来る求人が大卒者の半数以下に減ってしまいます。

自分の意思で自分のキャリアをきちんと選べる世の中にするためには、社会に出るもっと前の段階に介入していかないと難しい・・・
キャリアアドバイザーの仕事は非常にやりがいがありましたが、いつかはもっと若年層のキャリア教育・キャリア支援に携わりたいということを長期的なキャリア目標に掲げていました。
今はその時にしっかり価値発揮するために、ビジネスパーソンとして経験や知識を身に付ける期間だと考えていました。

ただ、若年層のキャリア支援に携わるために部署を異動したり、職種を変えたりして自分の知識や経験の幅を広げたいと思う一方で、今いる組織の中では新人育成も任される中堅になってきて、そろそろそのままリーダーを目指してほしいという組織の思惑も伝わってくる。
だけど、そろそろ自分のライフイベントのことももちろん考えたい。

組織の思惑と、自分が仕事とプライベートで叶えたいことの狭間で悶々としていました。

思わぬタイミングで訪れたキャリア教育に関わるチャンス

そんな悶々としていた時(2020年5月)に、たまたま今の大学のキャリアセンターの求人を見つけました。必須要件は「国家資格キャリアコンサルタント」保有者。

そう、ちょうど1か月前に取得したばかりでした。

仕事の内容は、大学生の就職支援。個人面談から就活セミナーなど多岐にわたります。1対1の面談だけではなくセミナーの企画・講師などマスに対してのアプローチも出来る点に魅力を感じました。
また、一般的に大学職員は4月に一括採用されて配属部署を選べないことが多いのですが、キャリアセンターでの勤務を約束されている、という点も私にとっては好都合でした。

せっかく今の職場でリーダーを任せたいという期待をされているのに申し訳ない気持ちもありましたが、日頃自身が候補者様の転職活動スタートを後押しする際に言っているように

転職活動をすること≠実際に転職すること

つまり、とりあえず応募だけしてみて、内定もらってから転職するかどうか考えたら良いじゃない、ということで力試しも兼ねて、応募書類を送ってみることにしました。

大学職員と言えばなかなかの人気職種で、結構な倍率かと思っていましたが
・応募資格を国家資格保有者に限定していた
・雇用形態が契約社員だった
・中途半端な時期の採用だった
などの条件が重なって、7月15日、運よく内定の連絡を頂戴することが出来ました。

ここから内定承諾の返事をするまで、悩みに悩む1週間を過ごすことになります・・・

ライフイベントを取るか、キャリアを取るか

正直まさか内定がいただけるとは思っていなかったですし、応募した当初、仮に内定をいただいたとしてもお断りしようと思っていた私は、内定通知書を手に非常に悩んでいました。

面接を通じて、思った以上に今回のポジションが魅力的だと感じたからです。

多くの大学がキャリア教育をアウトソーシングしている中で、その大学では内製化していて
ゆくゆくは大学1,2年生向けのキャリア授業のコンテンツ企画や講師もお願いしていきたいという話を頂きました。

これは思ってもみなかったチャンス。正直この経験が積めるだけでも転職する価値があると思いました。

また、内定をいただくことを目的としていなかったので、面接時に私は気になることを結構思い切って話しました。
・近い将来妊娠出産を考えていて、採用頂いても職場に迷惑をおかけするかもしれない
・有期雇用の契約社員でも、正社員と同様の条件で育休取得が可能か
など・・・

自分の意思や主張をきちんと伝えていた方が双方不幸にならないと考え、これで採用されなかったらまぁそういうことだと受け止めようと思い切った話をしました。先方はちょっと面食らっていました(笑)
そんな話をした上でも採用したいと思っていただけたことはポジティブに捉えて良いのかなと思いました。

ただ、私には面接時には想定していなかった考えなければならないことがありました。
そう、不妊治療の件です。

面接を受けてから内定のご連絡をいただくまでに約1週間かかりました。
実はたまたまその1週間の間に不妊クリニックでの初めての検査を行っていたのです。
結果は先日もお伝えした通り、「自然妊娠は難しい可能性が高い」

こういう状況で転職をするというのは非常にリスキーです。
ご存じの方も多いと思いますが、不妊治療のためには月に3~4回程度の通院が必要になり、人工授精や体外受精をするサイクルに至っては更に頻繁に通院しなければなりません。
また、ホルモンのサイクルに合わせて通院する必要があるため、急に「明日もう一度来てください」という話になることもしばしば。
不妊治療をしている、ということはなかなか職場でオープンにしづらいですが、周囲の理解がないと働きながらの不妊治療の継続は難しいのが現実です。
NPO法人Fineが2017年に実施したアンケートでは、不妊治療経験者の約2割が治療を理由に仕事を辞めているという結果も出ています。

新しい職場ですぐに自分の都合に合わせて休みを取ることは難しいでしょうし、周りの方々や職場がどのような雰囲気なのか到底想像もつきませんから、治療に協力していただける体制を作れるのかどうかが不安でした。

更に、治療には莫大なお金がかかります。
あいにく今回のオファーは正社員ではなく5年満期の契約社員でのオファーであり、年収は100万以上ダウンするであろう条件提示でした。

今の職場に残ればフレックス制を導入しているので、通院に合わせてフレキシブルに勤務時間を変えることが出来ますし、十分な収入も得られる。
既婚女性、子持ち女性も多く働いている職場でしたし、実際に不妊治療をしながら働いている方もいらっしゃったので、女性のライフイベントとキャリアについてはかなり理解がありました。
育休復帰後も子供が小学校卒業するまで時短勤務制度が使えるなど、子育てしながら働く上でも都合の良いことが多いことは分かっていました。

大学で働くには不確定要素が多すぎる…
そう感じた私は、面接時と同様思い切って先方に自分の状況と懸念を打ち明けることにしました。

人事には、給与面への懸念があるため
・定期昇給の有無とその額
・契約社員から、正社員への登用機会の有無と登用基準
などについて改めて質問しました。

まぁここまでは普通と言えば普通なのですが
更に私は、面接時にいただいていたキャリアセンター部長の名刺に記載されている連絡先に連絡し、
「可能であれば人事を通さずに伺いたいことがあるので、電話でお話し伺えないか」とお願いしました。
幸いなことにキャリアセンター長は快諾して下さり、私の話を丁寧に聞いてくださりました。

実は本格的な不妊治療がこれから必要になりそうで、そうなると週1回程度の通院や急な通院が必要になり、採用頂いても職場の皆様に多大なるご迷惑をおかけする可能性があること

治療と両立する上で、業務スケジュールはどれくらいのスパンで埋まるもので、急な担当変更や日程変更の調整はつけやすいのかどうかが知りたいこと

現職はフレックス制度を導入しており、現職の方が働きながら治療しやすいのではないかと思っていること

このような状況で貴学でお世話になることが、大きく迷惑をおかけするようであれば辞退した方が双方にとって良いと考えていること・・・

不躾ながら、上記のようなことを正直に伝えました。

ありがたいことにセンター長は私の話を受けて、各メンバーがある程度自由にスケジュールコントロールをしているので、休暇を取りやすい職場であること、また1時間単位で時間休を取得することが出来るので早退なども比較的しやすいことなどを教えてくださりました。

そして最後に、私は是非一緒に働きたいと思っていますよ、とも。

少しでも「それはちょっと・・・」という怪訝なリアクションをされたら、内定をお断りしようと心に決めていました。
しかし、ありがたいことにセンター長は最初から最後まで、どうしたら私が不安を払しょくして気持ちよく働けるか、というスタンスで話をしてくださりました。

これが最終的な決め手となり、現職に残った方が良かっただろうと言う方もいらっしゃると思いますが、私は大学への転職を決意しました。

「はたらく」を自分のものにするために伝えた方が良いこと

組織で働く上ではついつい自分の希望や意見を押し殺して組織の意向に合わせてしまいがちです。
もちろん組織に属する以上、ある程度我慢しなければならないこともあります。全員がワガママを言っていては会社が成り立ちませんからね(笑)

しかし、私は基本的には個人の意思や希望は明確に伝えていくことが気持ちよく働く上で大切だと考えています。

今自分はどのような状況に置かれていて、今後どうしたいと思っているのか
それを叶えるために、組織には何を求めたいのか

これをきちんと伝えた上で、あとは対価としてパフォーマンスを出せているか、出せる可能性があるかどうかに応じて、会社が判断してくれます。

要望が必ずしも通るわけではありませんが、まずは伝えてみることに意味がありますので、もし今の組織や働き方に不満があったり、転職活動をしている中で応募先の企業とすり合わせたい条件があったりすれば、是非正直に自分の気持ちを、その根拠や理由を踏まえた上で伝えてみてください。
行動を起こすことで何かしらの変化がもたらされるかもしれません。

次回は、実際に転職したばかりの仕事と不妊治療をどう両立していったのかについてお話ししていきたいと思います。

今回も結構長くなってしまいました。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?