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【鑑賞メモ】映画「夏の鳥(Pájaros de verano)」

今回は「読書メモ」ではなく、映画の「鑑賞メモ」です。

南米コロンビアのシーロ・ゲーラ(Ciro Guerra)監督の映画「夏の鳥(Pájaros de verano、英題はBirds of Passage)」は、2018年8月にコロンビアで劇場公開されました。公開前の同年5月には、第71回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映されました。

この映画は、コロンビア北東部カリブ海に面したラ・グアヒラ(La Guajira)県の先住民族ワユー(Wayúu)をテーマとした物語です。

僕はまさに、ワユーの人びとにフィールドワークでお世話になっているので、もちろん見ました。ちょうど公開時期にコロンビアにいたこともあり、ボゴタとリオアチャ市の映画館で2回見ました。

物語の舞台は、マリファナ・ブームが起きていた1970年代のラ・グアヒラ県です。米国向けのマリファナの密貿易の富を巡り、ワユーのクラン(氏族)間の血みどろの抗争を描いたものです。民族語ワユーナイキ(wayuunaiki)では、ワユーではない人は総じてアリフナ(alijuna)と呼ばれるのですが、そうしたアリフナが外からもたらした「富」と「暴力」、それによって翻弄されるワユーの人びとが中心のテーマです。

フィクションではあるのですが、ラ・グアヒラ県でマリファナ・ブームによる暴力が生じたのは事実です。カリブ海に面し天然の港に適した地理的要因もあり、ラ・グアヒラ県は米国などの密貿易の拠点となっていました。

現地のラ・グアヒラ大学で、ワユーの学生とこの映画の話をちょこっとしたのですが、やはり一方で批判もあるみたいです。ワユーの人の役なのにアリフナが演じているとか、ワユーナイキの発音が変だとか。僕も、そのあたりの「文化盗用」に当たるのかどうかについては、非常に気になっていました。

日本では、ラテンアメリカ地域の映画を特集上映する「ラテンビート映画祭」で、2018年第15回で上映されました。

ただ、このゲーラ監督には、つい最近にスキャンダルが持ち上がっていることを、申し添えておきます。エル・ティエンポ紙(El Tiempo)の2020年6月24日付の報道によると、8人の女性から性的暴行の被害が訴えられているとのことです。

この件と新型コロナウイルスのこともあり、ゲーラ監督のAmazonのドラマシリーズが制作中止となりました。スペイン人侵略者エルナン・コルテス(Hernán Cortés)と、アステカのモクテスマ2世(Moctezuma II)を題材とした物語で、コルテスを演じるのはハビエル・バルデム(Javier Bardem)の予定でした。

ワユーを題材にした映画が話題になったこと自体は嬉しかったのですが、監督については、はっきり言って残念です。司法によって正しく裁かれることが望まれます。

前作の『彷徨える河(El abrazo de la serpiente)』についても書きました。


真心こもったサポートに感謝いたします。いただいたサポートは、ワユーの人びとのために使いたいと思います。