統合失調症とわたし ⑫
随分と長い間、ご無沙汰しておりました。
さて、前回の続きから始めたいと思います。
そのH診療所。わざわざ予約の時間も取ってくれ、無駄な時間を減らしてくれたりとても待遇が良かったのを覚えています。
それになにより、J病院と同じ薬を処方してもらえると知って私はすぐにH診療所に乗り換えました。あの頃は今のようなセカンドオピニオンだとかそういった言葉もない時代でしたので乗り換えは簡単で、私はH診療所を信じて通うことに決めました。
けれど、今だから言えることですが何しろ薬の量が足りていないのですから良くなるわけもなく、先生は親身になって話を聴いてくださるし私はH診療所を信じ切って通ってましたが、以前にも言ったかな…。言いましたね、言ってます。
統合失調症に欠かせないのはいい医師とそして薬なのだと。
そのいい医師というのは、話を親身に聞いてくれるとかそういう浅いものではなく的確な薬をどれだけ上手に処方してくれるかにかかっていると思ってます。
この病気になって、そして言われたことがあります。「薬は一生涯、飲み続けなければならない」と。
この言葉で絶望する患者さんもいるみたいですが、私は意外と平気でした。寧ろ、何故そんなにショックを受けるのかも分かりません。
この病気は、心の病ではないんです。脳の病なんです。決して、精神的におかしくなっているわけではない。
私もいろいろ勉強して知りましたが、どうやら脳内に分泌される成分が多くても少なくても、この病気にかかるんだとか。私もその講義というかそういうもので知って驚きました。
脳が異常を起こして起こる病気が統合失調症。それも、陽性と陰性があり陽性は主に幻聴、幻影を引き起こすのに対し陰性は症状が複雑で特に調整が難しいんだそう。
私は、陰性だという判断が出ました。幻聴、幻影には一度も悩まされたことが無かったからです。陰性は、厄介だと聞いた時…ショックでしたがそこで凹んでいても誰も助けてくれません。
陽性は、比較的薬で抑えやすいそうです。だから薬を飲むのを止めない限り幻聴、幻影には悩まされない。
よく聞く話では、うつ病とかそういう病気でも統合失調症でも言えることですが薬を飲み続けると楽になります。元気になって、なんでも出来るような気にもなる時がありますが、それは薬があってのこと。薬の恩恵のおかげで元気になれているのに、患者さんの中には自分はよくなったから薬はもう飲まなくていいと勘違いされる人が多くいるのだとか。
統合失調症で言えば、私から言わせると自殺行為です。一度薬を飲むのを止めてしまうと、たちまち調子が悪くなるのは当たり前でさらに症状は悪化するのです。医師から聞いていると思うのですが、何故止めたがるのかが私には分かりません。命の綱の薬を自分から断って止めてしまうなんて。
ああ、話が逸れました。
そう、いい医師というのはそういう判断が出来て、的確にどれだけ効く薬を処方できるか、がいい医師のまず最初の条件だと思ってます。日常的な些末な問題を聴いてくれるのもまた、大切なことかもしれませんが、身を以って体験した私には日常的な話に耳を傾けるよりも今がどんな状態で、こんなことで困っているなどの情報を元にその症状に対処できる薬を処方してくれるのかというのが私の中での良い医師だと思ってます。
ハッキリ言って、話を聴いてもらうだけではこの病気はよくはならない。これは体験してきたことですのでキッパリ言い切ることが出来ます。
確かに、今の状況がこんな風で眠れないだとか、最近落ち込みが激しいだとかイライラして仕方がないとかそういった症状については聞いてはもらいたいです。それ次第で、処方される薬も違ってくるので。
そういったことをきちんと聞けて、なるべくその症状に合った薬が出せる医師こそが、本当の意味でのいい医師だと私は思ってます。
しかし、H診療所の医師はそうではなかった。親身に話は聞いてくれますがなにしろ前のこのノートに書いたように圧倒的に薬の量が足りていないのですから悪化の一途を辿ります。当然です。
しかしH診療所の医師は、患者さんの話を親身に聞くことが治る糸口になるという考えの持ち主で、そのH診療所の先生のおかげで私は回らなくていい回り道をさせられることとなります。
治療に回り道などないと思いたいですが、今の私の状態を考えてみるとやはり、無駄足にしかなってなかった数年間を送ることになりました。
そう、H診療所の先生の考えの一存の元に。
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