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初めておかあさんと2人で観た映画『すずめの戸締り』

我が家には映画を観に行く、という風習があまりなかった。記憶があるのは、家族で年に1度行くか行かないかのドラえもんくらい。
だから、「すずめの戸締り」は母と2人きりでみた初めての映画だった。

上京してから2年。久しぶりに帰った実家で、テレビをつけるとCMが流れていた。私この映画気になってるんだよね~と伝えると、明日時間あるし、映画館行っちゃう?と、急遽2人で観に行く事になった。

以降、内容に触れていきます。

物語は、4歳のすずめが、幻想的に煌めく不思議な星空の下を、さまよっている場面から始まる。

「おかぁさん おかーさん おかあさーん、どこー?」

近所のジャスコで、母を見失った時の心寂しさを思い出す。そして、わたしの隣にはお母さん。
...なんだか、少し気恥ずかしいな。



すずめの戸締りとは、平穏に暮らしていた少女すずめが、ある青年との出会いをきっかけに災いを呼び込む扉の存在を知り、戸締まりの旅に出る冒険物語だ。

開始早々、新海誠作品の目を見張るような映像美と、繊細な音楽、テンポよく進む展開に、カラダの全てが没入していった。
散りばめられた伏線、静と動の使い分け。丁寧に切り取られた日常と、コミカルに散りばめられた非日常が交差する。

そしてなにより、主人公すずめのヒーロー性にも目を奪われた。圧倒的な行動力と、危険な判断も恐れずできる勇気。彼女はメインヒロインだが、それ以上にヒーローであったのだ。

その勇気の背景にあるのが、3.11の震災によって母を奪われた過去だった。4歳で唯一の家族である母を失った彼女は、17歳にして「生きるか死ぬかなんて、ただの運なんだ。だから死ぬのなんて怖くない」と言い放つ。その達観した死生観が、彼女の勇気の源となっているように感じた。


作中、母親に関する回想はたった1回、椅子を作ってもらうシーンだけで、沢山出てくる訳では無い。だけど、その時の温かいやり取りでいかにすずめが愛されていたかが十分に伝わってくる。

4歳のすずめの日記がお母さんとの毎日で溢れていたことや、2時間の作中に、''おかあさん''というワードが25回も出てくることからも、母親がいかに大事な存在であるかは、言うまでもないだろう。


そんな存在を、唯一の家族を、ある日突然。
しかも4歳で。

......あまりにも、辛すぎるな。
ふと、隣にいる母の顔を、目だけ動かして覗き見る。

母はいつも優しくて、常にご機嫌な人間だ。家族や周りの人間を愛していて、幸せそうに感謝を伝えて生きている。

「毎日をご機嫌そうに生きること」
これがいかにすごいことなのか、大人になって痛感している。私はまだ、母のようにはおおらかではいられない。
親ガチャ失敗とか、ヒス構文とかが騒がれる世の中で、本当に素敵な母親を持てた私は幸せだ。

...そんなお母さんが、もし、
いなくなったら。

すごく嫌だ。考えたくもない。



ううん、すずめのおかあさんだって、いなくなってなんかない。ちゃんとすずめの中で、人々の記憶の中で、心を支え、生き続けているの。

でも、やっぱり。

こうやって、隣に、触れられるお母さんがいてくれて、よかった。
改めて、うれしい。

死んでしまったら過去の思い出に縋るしかないけれど、生きている間は未来にだって思い出を作り出せる。生きていると言うのは本当に、尊くて、すごいことだ。

命はあたたかい。


私、この映画が終わったら、お母さんにありがとうって伝えよう。
涙を流しながら、そう心に決めた。




「絵、綺麗だったね〜」なんて話しながら出口へ向かう私たち。

「お母さん」
「なぁに〜?」振り向く母。
なんか、あんなに言うって決めてたはずなのに、いざとなったら照れちゃった、

「生きててくれて、ありがとうねえええ〜!」
うっうっ、と手で涙を拭うふりをしながら、おどけて言った。精一杯の照れ隠し。

そのまま腕を絡めたおかあさんはあったかくて
私のとなりで、笑っていた。





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