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ライフ・イン・ザ・シアター2022 観劇レポート&感想 -5-

長〜い長いオタクの観劇レポ。本編はいよいよ最終章です。


*ライフ・イン・ザ・シアター2022 
http://lifeinthetheatre.jp/

出演:勝村政信さん、高杉真宙さん 演出:千葉哲也さん
戯曲は悲劇喜劇 2022/3 No.815より
デヴィッド・マメットさん 作 小田島恒志さん 翻訳によるものを参考にしています。セリフに関しては同誌からの引用また、うろ覚えの記憶から記載しています。


第26場 公演後の舞台裏

コートを身につけ、帰宅準備の2人。
1場の会話のように「今日の階段の場面良かったよ」とロバートが語りかける。
ジョン「そうかな」「ぼくは処刑の場面が見事だと思ったな」
ロバート「まさか…」
ジョン「良かった」
きちんと気持ちを渡す様にして言う。

ジョンを信頼しているロバートにとって、こんな会話がとても拠り所になるんだろうと思いながら。
「俺の親父はずっと俺を役者にしたいと思ってたんだ…」また1人で話し始めるロバートを横目に傘を持って帰り支度をするジョンに、「雨、降ってるのか?」と声をかけると、ジョンはロバートに「タバコある?」と、すぐに出て行かず、タバコ1本分の時間を取ってロバートの話に耳を傾ける。

ジョン「マッチない?」
ロバート「ない」

自分のメイクデスクからマッチを取り出したものの、うまくマッチがつかないジョンに「おつけしましょうか」とおどけるロバート。気兼ねのない話し方の2人に、1場から通して距離感の変化を感じるとともに、それぞれの葛藤を越えた2人の関係の変化にも、穏やかなものを感じる。
「食欲がイマイチ」「腹が減らない」というロバートと、友人と出かけるジョン。
変わるもの、変わらないもの。積もるもの、見えてくるもの…。

ロバート「売店、客席…」「風の吹き抜ける廊下…」
うん、うん…と、相槌を打つジョン。
「めまぐるしい人生。瞬く間に過ぎて行く」

ロバートは幼い頃から役者をやってきたのか、自分の”舞台の人生”が、瞬く間に過ぎていくと日々感じていたのだろうか…。戯曲にないロバートの”物語”が千葉脚本として?セリフに語られていたように感じている。(ここの解釈は受取手によりさまざまありそうです)

過ぎていく日々。町から町へ。
あらゆる港町や砂漠の町で大勢の人が行き交うなか、女王さまが口にする「ここに”あれ”を持って参れ」というセリフに、幼い頃のロバートが、まるで今のジョンに自分が語りかけるように言うのだといって「あなたのお求めになったものはここにございます」と、自分がセリフを発すると、そこに居た全員が振り返り、足を止めてロバートの次のことばを待ち、その瞬間に通行人がすべて観客になったのだと語る。
うん、うんと、ゆっくりとタバコを燻らせながら聞いているジョン。

本当にあった話かもしれないし、家族の存在を感じないロバートのなかに眠っている架空の話かもしれないけれど、ロバートはその光景を思い出すようにして、父が自分を役者にしたがった様子、幼い頃のその出来事に、自分のなかの”役者の才能”を見出した瞬間の誇りのようなものを大切にしているんじゃないかと感じた。

話がひと段落するとジョンはロバートに「明日まで20ドル借りられるかな?」とお願いする。「いいよ、貸すよ」とロバート。
きっと、友人のいるジョンに手持ちの20ドルがなかったとしても問題はなかったのだろうし、本当は持ち合わせがないということもなかったのかもしれないけれど、「明日まで借りる」という約束があることが、2人の関係に大切な出来事のように思わせる場面。

ジョン「サンキュー。じゃあ。」
ロバート「たのしくやれよ。じゃあな。」

「天体暦、天体暦…」「俺にとっての役者人生…」
ジョンが去った楽屋でまた、独りごちるロバート。

誰も居ない劇場の方から観客の割れんばかりの歓声と拍手が耳に届く。
ステージに駆け出すロバートが満ち足りた笑みをたたえて大きく手を広げ、観客の声援に応える。
「ありがとうございます」
「言うまでもなくわたしは、自分だけのためでなく、ここにいる全員を代表して…」と、わたしたち"全員”を振り返り、劇中ステージの観客側に向けて”役者仲間”かのように、スタッフや身内かのようにして「"全員"を代表してこう申し上げるのですが…」と仕草して、「この瞬間にこそ、すべてが報われるのです…」

ジョンが楽屋側からやってきて、気づいたロバートが現実にかえる。

ジョン「そろそろ閉めるって」「いい加減出ていってほしいみたいなんだけど」

ロバートは本当に、いつも劇場にいるのかな?と思うほど、劇場が好き、役者が好きなんだねと、最後にほんのりクスっとなる場面。
「すぐに出る」というロバートに、「そう言っとく。お疲れ」と劇場を後にするジョン。
「お疲れ様」とロバート。
明かりがひとつ消えては、「明かりが落ちる」「みんな家に帰る」と、ロバートのセリフ。

あぁ、このお芝居に幕が降りたら、わたしたちも家に帰る…。と、寂しくなる場面。

「おつかれさまでした」「おつかれさま」「おつかれさま」…。

 − 幕 −



東京公演初日から、金沢大千穐楽まで、本当におふたりとも、おつかれさまでした。
ありがとうございました。
支えてこられたスタッフのみなさまも、演出の千葉さんも、みんなみんな、おつかれさまでした。ありがとうございます。
未だコロナ禍の制限ある製作を余儀なくされる中、素敵な作品を最後まで無事に完走して届けていただけたこと、本当に感謝し、お祝い申し上げます。


4回で終わるかと思っていたレポートも収まりきらず、5回になってしまいましたが、後少しだけ、個人的な感想などを語っちゃおうかなぁと思っております。
またどうぞ、お暇にお付き合いくだされば幸いです。
*今回のタイトルバックのお写真は、大千穐楽の金沢赤羽ホール前のあの日の桜です。

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